古典的広角を復刻する
「花影」S3 28mm f5.6
2025.03.15
商標権が取得されている名称は使用できませんので引用元の「**DE401630**」ような形で表記することに致しました。ご迷惑をお掛けします。 - 2025.3.17
古典レンズで理想的な広角はほとんど見つかりません。過去の様々な広角レンズを観ますと、以下の古典広角設計の特徴で明らかになりました通りのものが理想的であることがわかりました。この収差配置は今では主に大判レンズで採用されています。古典広角の特徴の中で選択肢が幾つかありますが、設計において考えたい部分が2つあります。
1つは口径で、f4にすることもできます。28mmでこれだけの明るさで性能を高く保とうとするなら設計に相当な手厚さが必要で、ビオゴン型やレトロフォーカス型の場合でも、多くの枚数のガラスが必要になります。アンジェニュー Angénieuxがたったの6枚でf3.5まで到達しましたが、貼り合わせは無いのでコーティングが必要になります。28mmでのf4は基本的にはネガティブな意味でのボケ玉になります。28mmの自然の摂理に基づいた最適解はf5.6になりそうです。
もう1つは、湾曲をプラスにするかマイナスにするかということです。中判以下のマイナスに振ったいわゆるきちんとした画が魅力を減少させる要因ではないかと思えます。そこをライカがプラスにしたので、現代に至るまで深い印象を残しているのではないかと思います。
そうしますと条件が整ってきます。結果、以下のようになりました。28mmでの出図です。収差はかなり多いのですが、それらが複合的に相殺されてセンサー面ではほぼ無収差となっています。余程、光の環境が悪くない限りビネットは出ないと思います。絞りの位置はフランジより中に潜ります。1cm程、中に入ります。表面に出るのは7.5mm以下です。そのため、鏡胴と一体化したフードとなります。
花影 Hanakage S3 28mm f5.6 0円
フィルター径?mm。至近距離?m。絞羽?枚。重量は計算値で?g
現在、製造予定はありません。
マクロはレンズ先端より150mmだと解放絞りのままでf6.8ぐらい、100mmまで寄るとf7.8ぐらいとなりますが、収差は僅かに増えるだけなので使えると思います。このような用途はないと思いますので500mm(同f6.0)まで寄れれば十分と考えています。Rayqual 接写リング+3mmを使うと、280~235mmとなります(本設計は収差が多いのでRayqualサイトの記載とズレがかなりあります)。
開放でも5mぐらいに合わせれば無限遠から2.5m付近まで深度があります。人間の身長より少し先ぐらいまでです。大抵のものは距離を合わせる必要がありません。3mに合わせると2~8mです。2mは1.4~3.5mです。これは計算値で、本作は収差が多いことから被写界深度も実際にはもう少しあります。そのため距離計連動は非対応とします。広角の撮影が楽なのはこの点でしょう。
紫外線透過率:380nm 50.04% 370nm 37.31% 360nm 14.93%。色収差は微小です。
全てのガラスについて耐候性が非常に高いものを選んでいます。鏡胴デザインは、これまで凹凸の少ない寸胴のシンプルなものでしたが、その方が飽きないことから、このモデルに関しても継承するつもりです。つまりフードに該当するところが広角でよくあるラッパ型に開くようなものにしないということです。ラッパ型は撮影で周囲から目立つ可能性があります。詳細は工場と相談になりますが、例えるならローマの壊れていないコロッセウムのような形にしようかと考えています。要するに直立しているだけのようなものです。無理かもしれません、ちょっと開く必要があるのかもしれません。いずれにしても最低限、必要なものだけがある、というのが一番良いのではないかと思っています。
古典広角設計の特徴
かつては撮影機が大型だったことや、シャッタースピードが遅かったなどの制約から、写真の用途というとおおまかに肖像か風景に限られていました。そのためペッツバール Petzvalが設計して規定したのはこの2種でした。これらの設計が現代ほとんど省みられていないのは、撮影対象を限定する専用設計だからです。肖像用は映画用として戦後も残っていました。風景用も主に広角レンズで残っていました。このようにペッツバールの理論は時代を超越する優秀さを備えていたことがわかります。広角レンズは初期には風景や建築を撮るものという、そうでなければ何に使うのかという感覚だったと思われ、明るい広角が作れるようになってから肖像に使ったりするようになって見方が変わっていきました。どのような画角であっても何でも撮るという汎用性に変わっていき、AFへの対応でますますその傾向を増してゆきました。その代償として、かつてはあった大広角ならではの美しさは消えていきました。
自然の摂理に従えば、焦点距離50mmにおいては
f2が限界点、自然に収まるのがここだというのは100年以上前から明らかになっていました。中望遠ぐらいだとf1.5で美しいものがあります。ということは望遠はもっと明るいものが魅力あるのでしょうか。わかりませんが、そうなると天体望遠鏡になると思うのですが、望遠で口径大だと被写界深度が薄いので、一般的用途には使いにくいものです。そのため、自然の物理法則の中では中望遠が理想的です。広角はどうでしょうか。
28mmであれば限界点はおそらくf5.6で、50mmでのf1.9に相当するのがf4.5という印象です。いわゆる”きちんとした”広角を得ようと思えば、f5.6が”常識的”なスペックとなりそうです。現代ではより明るく隅まで明瞭に写る広角がたくさんありますが、こと”飽きない”玉を指向するのであれば、自然界の限界点を意識せずにはいられません。
使用ガラスも
19世紀末ぐらいまでにアッベ Abbeらによって作られた古典的なガラスに止めた方が恣意的な感じを避けやすい印象があります。
レンズ構成で理想に近いものは、
ダゴール Dagorです。ダゴールは絞りを挟んで前後に3枚重ねのレンズを配置していました。しかしこのままでは広角は得られないので貼り合わせを剥がし、様々な亜種を生みました。自然なのは、オルソメター Orthometar型で、ライカ・ズマロン 28mm f5.6にも採用されています。この構成は大判レンズにも多用されており、富士フィルムは
特許の記載で
オルソメターはダゴールとほぼ同じとの趣旨のことを言っています。実際、空気間隔を1つ開けただけの違いしかありません。
ガラスの選択の仕方も、ダゴールのように
なだらかに屈折率が変化する方が美しい描写になります。古典ガラスに無理がないのは屈折率の落差が一定の範囲に抑えられているという面もありそうです。下降して上昇する澱みない流れが率直な描写を生みます。
古典的広角レンズの収差配置はほとんど同じ傾向です。比較するだけで十分です。そこからレンズ構成などの要素がバイアスをかけていました。以下は焦点距離50mmに統一します。
ペッツバールが設計したものは、トラオレ Turriereの本のNo.77に記載されています。f8.1で広角と言いましてもライカ判では焦点距離50mmです。かなり収差は多いようですが、相殺されて平面を得ています。しかし完全ではありません。キングスレークによると、販売当初は急速に高評価を得ましたが、残留収差が指摘されるようになり、成功の勢いと同じ速さで消えていったとされています。駄作だったのでしょうか? そのようなことはありませんでした。以下の設計では横収差図は掲載していませんが、それはこのペッツバールとほぼ同じ傾向だからです。確かに批判もあるのでしょう。ダゴールは平面だったし、60年代以降の広角もほとんど平面になりました。キングスレークのようなツァイス系(米コダック光学部長)の人には評価できないのもわかります。しかし古典広角の王道はペッツバールから、だったのは明確です。
ベルチオ SOM Berthiotの
ペリグラフ Perigrapheです。f6.3です。
ライカ・
ヘクトール Hectorは広角の設計が含まれ、40mm f8です。40mmで出図しています。ここから改良して28mm f6.3に至ったものと思います。
Globe **DE456912**と思われる設計は、f6で画角は90度です。湾曲がマイナス寄りとなっています。大判時代はプラスにしていましたが、中判より以下になるとマイナスの方が良いようでそのように変わっていっています。僅かですがマイナスの方が画が平面に近くなることが関係しそうです。大判は大きいので平面に対してシビアに出ませんから少し攻めた配置の方が魅力あり、中判以下ではおとなしくした方が性能感が出やすいのではないかと思います。ですが非常に僅かです。どちらを取るかというところで、他の
**DE456912**や古いライカがプラスに寄っているのはそのためと思います。
ハッセルブラッド Hasselbrad用に設計された
エクター Ektar 55mm f6.3です。
Makro **DE456912**は風景用の収差を小さく収めています。縦収差図はマクロに寄った時のものです。
パウル・ルドルフ Paul Rudolphは、ツァイス Zeiss在籍時に
プラナー Planarを設計しましたが、それは後代のプラナーとは異なるもので近距離撮影用でした。せいぜい集合写真からで、近接はコピーに使えました。遠景は使えないとされていましたが、しかしこの収差配置は風景用です。精密なコピーのために風景の収差を利用したものと思われますが、肖像も結構使えるのではないかと考えて販売していたようです。
Kino **DE401630**に行き着いたのはここからのように感じられます。
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