日本を撮影するのは日本の感覚で作られたレンズが良いのですが、そうすると富士かな?というのが個人的な印象です。フィルムの製造で高い技術を持っていることは世界の人々に知られていますが、レンズの方でも54年には当時世界最速のライカレンズを発売していました。しかし評価したいのは、技術ではなくセンスです。日本を撮影するのに最も理想的と思うのです。ところがライカマウントとなると入手難です。そこで特許を調査して見つかったのが、コピーに使用するために設計された富士の言う「ダゴール Dagor」、実際にはオルソメター Orthometarタイプの設計で、72年5月12日に申請されたものでした(DE2223349)。これは画角が80度に指定されています。コピーに使えるぐらい精度の高いものなので大判用レンズとしても作られていました。旧型の方のフジノンWシリーズでした。焦点距離は125,135,150,180,210mmでした。
これをライカ判にすると焦点距離が26.6mmとなり、28mmより半画角で2度広いですが、表記は28mmとします。さらに2度広げると焦点距離は25mmとなりますが、これは無理があります。問題はガラスが小さくなり過ぎることによって味が失われることですが、ある程度の大きさと厚さがあるので大丈夫です。計算値では開放絞りで距離を4.22mに合わせたとすると、無限から2mぐらいまで深度があります。ギリギリなので合わせる距離を5mとしても、2.3mぐらいまで合います。次に2mに合わせると、1.5m~3.8m。通常のスナップであれば距離計連動は不要と思われます。前玉からフランジまで1cmほどしかないパンケーキ型であるため、f5.6と暗さを問題にしなければ使い勝手は悪くなさそうです。
そしてマクロでどれぐらい寄れるのか、かなり接近しても乱れないのですが、少しずつ湾曲は増えるので、それがどこまで許容できるかということになりそうです。湾曲は10cmぐらいまで近づけば倍ぐらいになりますが、元が少ないので使用できるのではないかと思います。グランダゴンの序文にマット氏がこれをマクロ・ポートレートで使用していることが書かれています。この種のレンズ構成がマクロに適しているので、富士がコンパクトなダゴールを採用、製造面を考えてオルソメターとしたものの、特許の記載ではこれはダゴールなのだと、分類面ではともかく、哲学は筋が通っています。
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