写真・映画レンズの歴史的名玉の再生産
当初は中国で作ることで進めていたのですが、最終的に東京で製造しております。
注記がないものはライカL39マウント距離計連動です。
特許など数値がはっきり残っているものは特に忠実にコピーします。古い設計の問題点を見つけて修正などはしていません。しかし1つだけ変えているところがあります。ガラスに鉛を使っていないことです。
鉛は安価で安い材料だったので大量に使われていました。そして今のデジタルには合わないと思っています。鉛フリントガラスを多用したレンズは陰気な描写になります。おそらくこの理由でアンジェニューはクラウンガラス中心で設計していたのでしょう。淡い表現になっていました。現代のレアアースは艶やかなで高級な画になります。ですが、そうであれば昔の本物とは違うということになります。厳密なコピーではなくなります。それでも多数の作例を比較してみて下さい。多くの人が現代の方が良いと言うでしょう。
小店制作のレンズは基本的に、神奈川県相模原市のオハラを使用しています。オハラで製造していないものは秋田県湯沢市にありますニコンの光ガラスを使ったこともあります。
ウル・ライカに装着されたと言われ、オールド・ライカに最も影響を与えたパウル・ルドルフの傑作 キノ・プラズマートのf1.5は光学設計が残されていません。そこで最初期型をトレースして作ることになったものです。
f2(製造はf1.9)が非常に良かったので、続いてf1.5もとなり、それでは75mmと考えたのですが、ちょっと長い玉は用途が限られますし、大きくなって価格も上がりますので、比較の意味もあって再度50mmでどうかとなりました。
Kino Plasmat f1.5分解図
100年以上長期に改良されながら今でも本家の英クックが製造している名作です。古くは戦前のハリウッドで圧倒的なシェアを持っていたキノ(映画)玉ですが、傑作とされているリーによる31年設計はモノクロ時代のものです。オリジナルは映画用の画角に絞っているので、ガラスの直径を大きくしているところのみ変更しています。光学設計は変えていません。
ボケ玉と言ってもいろいろありますが、英国人がボケ玉を規定するとこうなるという見本のような玉です。大英帝国時代に世界のセンスを取り入れ、さらに洗練してきた伝統がありますので独特の絶妙なバランス感覚があります。全くの普通、普遍美の究極というのは英国人ならではです。ボケ玉を絶妙なバランスで普通に落とし込んでいます。口径はf1.9ぐらいまで余裕はあるのですが、変更してしまうとパンクロにとって重要なバランスが変わってしまうのではないかと考え、f2のままで製造いたしました。
無一居 院落P1で香箋G1をライカM9にて撮影
ライカ・タンバールと同じような特性のレンズを60mm(厳密には58mm)に変えて作りたいと思ったのですが、これだけ短くすると無理だったので中止を検討。しかし本物よりこちらの方が良いのではないかということで生産することにしたものです。タンバールの上品なボケ味とペッツバール的収差、艶やかな発色、これほどのソフト・フォーカスはないと確信してのことです。光学の歴史上、最もゴージャスで貴族的な玉です。
ゴールド(Nr.70-99)は真鍮剥出しのもので酸化が進むと色が濃くなってきます(既に濃い黄色になっております)。ブラック焼き付け(Nr.20-69)は弱く、角が剥がれやすい仕様でオーダーしていますので、角を磨いて真鍮地を出すなどして使うこともできます。ブラックのみガラスコーティング無しのモデル(Nr.01-19)もあります(モノクロ撮影はコート無しが良いと思います)売切。重量は360gです。