静謐な世界観を持つ クラインビルド・プラズマート
デジタルではガラスは厚い方が良いので、マクロ・プラズマート Makro Plasmatとその亜種として残っている設計の中でも厚みのある方が好ましいのですが、ルドルフ博士が晩年に最終回答を出したものがまさにそういうものでした。キノ・プラズマートが特許の参照によると、ソフトフォーカスの発展系だったのに対し、マクロ・プラズマートは近接で、主要目的が異なってはいても、いずれも本来の目的外で使用しても素晴らしいものでした。クラインビルド・プラズマートはいわゆるボケ玉ではないので誰でも使用でき、落ち着きや品格が醸し出されているところが得難く、復刻することとなりました。
パウル・ルドルフ Paul Rudolphはツァイス Zeissで成功して退職した後、第一次世界大戦のハイパーインフレで財産を失ったことで復職しました。しかしまもなくツァイスを出、ドレスデンのフーゴ・メイヤー社に協力するようになりました。ドッペル・プラズマート Duppel Plasmatは成功してメイヤー社の経営を助けましたが、突然販売終了したため、どのような経緯があったのか謎とされています。とにかくダゴール Dagor系は人間が本質的に好む描写なので、良いものを作れば愛されやすいと思います。それからキノ・プラズマート Kino Plasmat、そしてマクロ・プラズマート Makro Plasmatを販売しました。キノは特許を見ると映画用のソフト・フォーカスの最終回答を示したものだったようなので、その激しい歪みなども考え合わせると、ある意味、飛び道具的なものとも言えますが、あまりに魅力的なボケ味から隅に置けない感が強くあります。それに対してマクロの方は静かな落ち着いた描写です。魅力はマクロで撮影してこそ、とは言え、育ちの良さのようなもので広く捉える描写も素晴らしく、最終的にこういう表現に落ち着くのではないかと思える説得力があります。マクロの方は、独特許 DE456912にて4種が公開され、そのうちの2つが後にクラインビルド・プラズマート Kleinbild Plasmat(独特許 DE572222)として結実します。これは元々、ミニチュア・プラズマート Miniature Plasmatという名称だったので、マクロ・プラズマートと同類と言えます。異なるのはガラスの厚みで、ミニチュアを撮るなら厚みのあるガラスの方が良かったのだと思います。デジタルは描写が硬いので、厚みのあるガラスが良いことから、現代ではマクロの方よりクラインビルドの設計の方が魅力あるのではないかと思います。ダゴール系から離れたのは、これに自信があったためなのかもしれません。ダゴールもガラスの厚み、この柔らかい魅力は否定できません。
クラインビルド・プラズマートは、ルドルフ最晩年の設計で彼の最終回答とも言えます。4つの設計が残されていて、最後のものが製品化されました。口径はf2.7で焦点距離50mmで出図ですが(ライカ判は緑線)、ラージフォーマット44x33の光線(青)も載せました。
価格:??,000円
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専用フード付き。フィルター径?mm。至近距離も不明。絞羽?枚。ガラスコーティング無。重量は計算値で?gです。
マクロに寄る場合、レンズの先端から20cmぐらいが限界と思われます。
パウル・ルドルフにとってこれが標準レンズなのだという確信があったようで、現代ライカが最高のレンズを追求した結果も同じところに行きつきました。アポ・ズミクロン 50mm f2はこのようなレンズ構成です。