無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




パリのエスプリを表現する アンジェニュー Angénieux S1
「湖楼」A1 50mm f1.8

2024.11.14

フランス人から見たガウス型の結論 アンジェニュー S1

 アルパに採用されたラグジュアリーな玉ですが、なぜか名玉というのは売れていない、個体数が少ないということと戦中から作っているような玉なので劣化が進んでいる個体が多くなっています。光学設計が残されていませんので最初期型をトレースして作ることになりました。

 ガウス型の標準レンズは傑作が多く、その中でもアンジェニュー AngénieuxのS型は特に評価されているものです。様々なマウントで供給されていますが、発売当時より「特別な写り」だからという理由で高価だったとのこと、個体数があまり残っていません。

アンジェニュー S1 広告

価格:??,000円 
まだ見積していません

専用フード付き。フィルター径?mm。至近距離恐らく1m。絞羽?枚。ガラスコーティング無。重量は計算値で?gです。


 アンジェニュー Angénieuxは、古いフランス映画のレンズというイメージですが、以下はスチール撮影用に提供していた初期のカタログです。
アンジェニュー ラインナップ
 広角はレトロフォキュ Retrofocus型を採用しており、レフレックスのためバックフォーカスを稼ぐのに決定的な結論だと書かれています。図解まで付けて解説しています。望遠は一貫してエルノスター・ゾナー型を採用しています。長くて重いので軽量型と夜間でも撮影できる肖像にも使える巨砲の二段構成です。これらのレンズ構成は戦前のかなり初期よりあったものですが、ほとんど省みられなくなっていたものを再評価しています。

 標準レンズはガウス型でこれも古いものですが、現代まで使われているスタンダードな構成です。当時の評価に関わりなく、古典構成を見直して高評価しています。

 標準ガウスは2種類あります。説明文を読むと、S1は書類の複写にも使える優秀なもので、S21はミニチュアの撮影に適しているとあります(映画のミニチュア模型を作っての撮影とは違う筈です)。ミニチュアとは具体的に何を指しているのかわかりませんが、イメージそのままで理解すると幅広い需要があるとは思えずホビー用途ではなかった筈です。おそらく商品撮影で絵画的な演出も意図したものだったと考えるのが妥当なように思います。小さいものまで撮影できる、実際に40cmまで寄れたとのことで、現代ではマクロで撮影するような感覚のものだったようです。肖像写真まではとても良いですが、普通にスナップに使うのであれば、S1の方が遥かに魅力的です。

アンジェニュー スチール用の機材構成
 映画用には、S2,S3も供給されています。収差がかなり多く採られています。S3はS1,S2の中間で、S2は踏み込んだ収差量です。S21はS2を明るくしたものと思われます。



 アンジェニュー Angénieuxが設計したガウスの特許はM1のみ申請されてデータが残っています (仏特許 FR1077189、米特許 US2701982)。口径はf1.0で画角は記載されていませんが、40度が限界です。実際に製造されたのは50mmで35mmキノ(映画用)です。f1.0とf0.95は結構差があります。噂によると、放射能ガラスを使うなどで若干の変更を行い、f0.95に変えて製造されたとも言われています。

 M1は世界で最初にF1.0に到達したレンズと言われています。NASAのアポロ計画に提供されたものでした。宇宙でとにかく明るさが欲しかったということなのだと思います。しかし収差が残っているのでかなり丁寧に性能を高めたのがM2だったようです。宇宙で背景のボケが汚れるのは資料として撮影する以上は困るでしょうから、我々地上でやっているのとは要求が違う筈です。M2は50mm f0.95のままで、物理的長さが結構伸び、外見からも望遠レンズになっています。エルノスター型だったようです。そして画角は狭くなりハーフサイズになっています。

 焦点距離は60mmですが、図は50mmスケールで出しています。f0.95はギリギリで絞りも入りません。この収差配置はズミクロン系と同じ考え方と思います。
アンジェニュー M1 ガラス配置図 アンジェニュー M1 縦収差図
アンジェニュー M1 切断図

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