次にフランスの光学会社としては最も有名なアンジェニュー Angenieuxのレンズを見てみたいと思います。15年ぐらい前に大阪・心斎橋にあった小さな中古カメラ屋で売っていたレトロフォーカスR型(アンジェニューの型号の分類)の28mmレンズを買って、その後、梅田でマウントアダプターを入手してライカM3で撮影しましたが、どうも気に入らず、少しして50mmレンズを入手してはルミエールでマウント改造をして、やっぱり気に入らずヤフオクで売り払ったりとやっていましたが、28mmはこの間、全く価格が上がっていないことから、そのまま放置しておりましたので都合よく1本あるということで、ここで久しぶりに使ってみたいと思います。アンジェニュー Angenieux Type R11 28mm f3.5ブラックのゼブラ型、M42マウントのものです。これで撮影して参りたいと思います。(しかし最近eBayを見ますと本レンズは、価格が倍以上に上がっていました。アンジェニューは根強い人気があるようです。)
まずは広角レンズということですから、北京でも特に大きな物件を選定して撮影してみます。天安門と徳勝門です。シャープにしっかり写り、特に特徴があるわけではありません。色彩がぬるいということとボケがキラキラした感じがあります。
この後、王府井、新南倉、鬼街などを散策してみます。
日陰に入ると割と色合いもしっかり写ってきますが、それでも結構ぬるいことには変わりありません。ベルチオにはない類いの発色です。
こういう近いものを撮るとフランスレンズらしい個性が出てきます。フレアの柔らかい感じが秀逸です。
この2枚もかなり近いところを撮っていますが、非常にシャープです。なぜでしょうか? 思うに偶然ピントがジャストだったのだろうと思います。28mm広角、そしてF3.5ということで距離計連動にはなっていませんから、適当な目測で全部撮っていて、それで特に問題は感じないのですが、フレア気味にした方が上品な感じがして良いように思います。そのためには前ボケを活用する必要があるようです。無限遠でもボケるように改造しようかなという気になってきました。アダプタを削ればいいわけですから。
これもいくぶん前ボケが活用されているようで、雰囲気が良くなりました。
太陽がしっかり当たると、変な煌めきが出て良くありません。これはたぶん入り口の取っ手あたりより奥にピントが来ていますので、これも前ボケが活用されていますが、こういう場面ではピンを前に持ってきてボケが出ないように留意した方が良さそうです。一枚目の天安門の写真で母と子供が写っており、やはりこれも煌めいていますがピントをもっと引きつけて、こういう効果が出ないようにした方が良かったようです。
喫茶店の中という暗い環境を写していますが、こういうところを撮ると雰囲気が出てくるようです。それだったらf2ぐらいは欲しい感じはします。これも前ボケをかなり使っています。
アンジェニューは赤いものの華やぎが美しく撮れます。前ボケの有効活用を念頭に置いた祭りの撮影などでポテンシャルを発揮しそうです。
色彩感のゆるさが夜になると良い方向に作用するようです。
夜に什刹海に行ったのであれば、北京のジャズの聖地・東岸に行かなければなりません。このゆるさと発色は見事です。50mmを売り払ったのは深い過ちだったかもしれないという自責の念が芽生えてきました。レンズの評価というのはとても難しいものです。
ピントが偶然任せなのは相変わらずですが、しっかり合ってきますと相当にシャープな画が得られるのは昼間と同じです。
ライブは10時に始まると決まっていますので、お客さんが待っています。肉眼では暗すぎてどれぐらい人がいるのかよくわかりませんが、写真で見るとよくわかります。
実際の明るさにだいぶん近い画です。とても狭いところですので、演奏に臨場感があります。
バーカウンターの中を撮ります。しっかりピントが来るとベルチオ的です。だけど何となく雰囲気は違います。ベルチオはがっちりきますが、アンジェニューはユルいです。昼はベルチオ、夜はアンジェニューでしょう。
ライブは無料です。飲み物は最低40元ですが、これだけ一杯注文するだけで聴けます。以前は25元だったので安すぎると思い、演奏者のギャラが低すぎないかと心配したものです。40元になって演奏の質が上がりましたので良い傾向と思います。発色に見られるハスキートーンが美しくこれ以上は望みえないのではないかと思う程です。
角度の取り方によっては赤が出過ぎてしまいます。これも使いようかもしれませんが、この会場では上の方のノーマルで撮れた方が良さそうです。
非常に硬く絞まった画になってしまいました。しかし写真というのは本来こういうものと思います。それでもアンジェニューが表現する味わいは焦点以外のところにあると言ってもいいと思います。外したところが美しいと。アンジェニューは社長のピエール氏が光学設計を行いますが、昼間は寝ていて夜ばかりうろうろしていたのかもしれないと思わせる程、夜と夜の光に相性が良いようです。これで100歳近くまで存命していたということで世の中、わからないことが多いものです。夜の輝きにこれほどまでに魅了された人は他にいなかったかもしれません。
アンジェニューは青いコートを多用し、色彩が青くなる傾向があります。ピエール大先生は青がお好きなようですので、青っぽく仕上げてみました。
2021.4.2、恵比寿界隈です。最近はISO感度を上げても荒れなくなってきたので、しっかり調整しておればあまりブレなかったでしょう。このあたりの飲食街は他より暗いような気がします。R-D1よりライカの方がしっかり写るのかもしれません。