ルドルフの遺作 ラピッド・プラズマート Rapid Plasmat
「院落」P3 60mm f1.2
2024.11.27
パウル・ルドルフ最後の遺作
写真レンズは19世紀に、肖像用と風景用の2つに大別されていました。高価なものだったので商業用途でした。現代ではこのように特化したものは、どちらかというと特殊と思います。風景に関しては絞れば撮れるので専用のレンズは必要とせず、拘るなら中大判があります。味を求める感覚も希薄です。肖像用は映画用にも使われるようになっていきましたが、映画レンズも必ずしも肖像を強く意識するようなものではなくなりました。デジタルでエフェクトも可能なので、むしろ手堅く撮れている方が重視されそうです。パウル・ルドルフ Paul Rudolphがキノ・プラズマート Kino Plasmatを設計した時期の映画用レンズは、まず人物に特化しておき、後はそこから絞れば撮れるという感覚だったと思われます。初期の映画を見ると感じられるのは描写がとにかく固いということなので、そこを克服しようという考えは自然です。そこでソフトフォーカスが必要となったのですが、やり方が幾つかあります。色収差を増やして色彩の滲みを利用するのはその1つで、肖像用のニコラ・ペルシャイド Nicola Perscheidから映画用のスピード・パンクロ Speed Panchroが出ました。しかし色収差だけで表現しているものではありませんので複雑です。非点収差を使ってボケを作るのはキノ・プラズマートで、いずれもかなり踏み込んだ強い効果を使っていますが、このようなものは現代では作られていません。さらに球面収差をオーバーかアンダーとするのはそれぞれまた違う印象となりますがこれもソフト効果が得られ、現代でソフトフォーカスとしてイメージされるのはアンダーとしているものです。有名なものではベス単などがありますが、こういうものはもう求められなくなってきているのか、ソフトフォーカスレンズはあまり販売されていないと思います。一種の飛び道具的なネガティブな印象もあります。
ガラス・コーティング無しをご希望の場合は選択して下さい。コーティング有は+11,000円で、最低20以上の予約が必要です。
専用フード付き。フィルター径62mm。至近距離0.5m。絞羽12枚。直進ヘリコイド。重量は計算値で567g
製造個数で金額が変わり、25個以上で製造決定と致します。予約は全額入金にて確定、価格が下がりましたら都度差額を返金いたします。春ごろで予約を締め切りますと、製造には4ヶ月かかりますので、夏から秋ぐらいに完成します。小店は消費税を納めていないため、年間売上を制限しています。そのため場合によっては後半に予約された方々は来年の受け取りとなります。消費税を払うと赤字となるため厳密に施行の必要があります。ご協力をお願いいたします。
25 314,000円
30 277,000円
35 244,000円
40 225,000円
45 206,000円
50 194,000円
1月末時点でご予約は13、その内コーティング有が4です。 - 2025.1.31
そこでルドルフ最期の遺作となった、そして当時は製造に至らなかった
ラピッド・プラズマート Rapid Plasmat(米特許
US1833593)はどのようなものだったのでしょうか。まず球面収差をアンダーとしています。そこへかなり多い非点収差に大きな湾曲まであります。アンダーだけなら普通にソフトになるのですが、それも確かにありそうなのですが、様々なバイアスがかかっているので、単純に我々がイメージする感じではなさそうです。キノ・プラズマートから少し変化しているのですが、最終的に大筋では変わらないもののように見えます。さらに大口径となったキノ・プラズマートではあるが、表現も更なる前進、試作も重ねて研究している筈なので、自信をもっての特許申請、ルドルフが考える最終的な映画肖像用であったということになりそうです。
口径はf1と指定されていますが計算上の設計値でもそんなにありません。f1.2が限界でした。焦点距離は57mmで、画角は39度です。もし50mmだったら像面が歪んでいるため、画角は42度で大丈夫です(通常45度ほど必要)。そのため隅が1.5度ぐらい狭くなる計算です。焦点距離はわかりやすく60mmと表記します。44x33は覆いません。後玉がほぼフランジ付近で6cm以上出ている寸胴の巨砲です。フィルター径が62mmで(ズマレックスですら58mm)、ライカのレンジファインダーは使用できますが、ファインダーの右下は多くケラれます。
キノ・プラズマートは、f2,f1.5,それからラピッドのf1.2、さらにf2の特許に記載されているf2.5はおそらくオールドライカのような柔らかさ、もう一つのf1.7はラピッドのアンダーに対してこちらはオーバーで5種類があります。キノ・プラズマートが陽であれば、ラピッドは陰かなという印象ですので現代に残されていれば、これも高評価を得ていた筈です。過激な
スーパー・シックスです。究極を追求するとどうしてもそういうところに行くのでしょう。スーパー・シックスが使っているガラスの屈折率はすべてあまり変わりませんが、ラピッド・プラズマート使用ガラスの屈折率は全て同じです。どちらの設計も、分散だけが違う2種のガラスしか使っていません。率直に透き通った感じです。
絞りが入りきらないことがわかります。レンズは接触しています。特許の説明では、途中までしか絞りは入らないので現代のタイプの回転型の絞りを使う必要があると書かれています。ガラスは圧着させてはならないとも注意があります。f2.8まで可能です。f1.2~2.8というとんでもない玉です。ですが、この玉に関してはf2.8でかなり普通になってしまいます(一般的な基準での普通ではなさそうですが)。だからそれで良しという判断だったものと思われます。
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