院落 P3 の使用法
本作は、f1.2~2.8という奇玉であります。基本はf2.8に合わせて撮影します。そこから求める表現や光量によって開けていきます。f1.2まで達したらソフトフォーカスで撮影できます。
基本配置のf2.8では後に、スピード・パンクロ Speed Panchro、スーパー・シックス Super-Sixを生んだ標準レンズにおいて黄金比とも言える収差配置となっており、そこから絞りを開けることでプラズマート化していきます。
キノとラピッドの比較
キノが動なら、ラピッドは静です。どちらも広角には向いていません。広角はマクロとクラインビルドがあり、穏やかな描写ですが、しかし内包している収差配置は、この4種いずれも同じです。
浅草界隈、ライカM9
以前に雷門から仲見世通りは撮影しましたので、裏通りの方を重点的に回ります。仲見世通りより東西に広がっておりますので、仲見世通りや雷門を通過することもあります。日没前後が良さそうという計画で参ります。
浅草での撮影時には、上述した「使用法」を把握しておらず、これまでの常識でまずは開放にして撮影しておりました。ソフトとなるため、たまに少し絞って撮影しておりました。こうしているうちに、徐々に設計意図が見えてくるようになりました。そのため浅草ではf2.8ではほとんど撮影しておりません。
開放f1.2で遠景はあり得ないですが、ダメを承知で確認します。本作は本来8mmムービー用の設計だったということを考えると、8mmの画がそもそも品質が低いということもあって、ユーザーがどんな使い方をするかわかりませんから、こういう撮影は実際に結構あったとしても不思議はありません。そこで見てみると、意外と被写界深度があることがわかります。ムービーは基本は静止しておらず流れているので、その時に画全体が硬いと見にくいので周辺はご覧のような収差が足してあります。しかし、キツ過ぎる。静止画はもちろん、ムービーでもこのような使い方は慎むべきです。遠いものの撮影では必ず絞るべきです。
当該物件へさらに迫ってゆきます。周辺は流れ、かなり滲んでいます。これもf1.2で、やはり絞るべきです。
そこでf2.0まで絞ります。これを見てわかるのは、遠景を撮影する時はf2.8まで絞るべき、それ以外でも基本的にはf2.8で使って下さいという仕様だったということです。考えてみれば当然で、f1.2を標準で使うわけがありません。かといって絞り過ぎると味を失うので、そういう意味でもf2.8まで、という仕様は理に適っていたのかもしれません。f2.8でも周辺収差は残ります。f2.8であっても尚、キノです。8mmはレンズが小さくなって暗くなるので、これぐらいの明るさは最低限欲しいということだったと思われます。
これは「か」ぐらいにピントを合わせています。前方にも深度があることがわかります。f1.2のソフト感は遠景では少し強すぎますが、室内のような環境で近いものを撮る場合はちょうどよくなります。
このような構図でf1.2は、意図のわからない画になりそうです。そこでf2.0に絞りたかったのですが、信号が変わったので諦めました。
f2.0です。周辺が流れるとしても、これぐらいなら動きが出て良いと思います。
白濁が出る傾向のところに、割と強い光源で、しかも白い提灯です。f2.0なので深度があります。ともかく色はしっかり出ます。ガラスの厚みのためと思います。屋外でまだ暗くなっていません。
f1.2開放です。近いものを撮るのであれば、開放でも十分使えます。
光源を受けて露出が下がり、暗くなっていますが、「伊吹いりこ」あたりは普通に明るくなっています。屋外がまだ明るいからです。暖簾の布の質感は肉眼ではもっと硬く見えます。
開放で撮ってしまい、騒がしい画になってしまいました。尚、この界隈で着物を着ている男女は99%外人です。レンタル着物で、着付けまでしてもらっています。結構安価なのでかなりの人気でした。オプションでバッグもあるようです。
1枚目がf1.2開放、2枚目はf2まで絞ったものです。この場合はテスト撮影に過ぎないので意図はありませんが、目的によってどちらが良いのか判断が変わってきそうです。
撮る位置を変えただけです。ざぶとんが4枚並んでいます。右から2枚目の角にピンがあります。1つ目ではf1.2開放でも結構奥まで深度があるのがわかりますが、前はわかりませんので、別角度で撮り直しています。映画は動くし、人物が前後に揺れることあると思うので、これぐらいの深度がなければ使えないでしょう。通常、f1.2というのはピンが非常に薄くなります。そこを収差で歪めて縦に伸ばしています。その分、横が狭くなっています。
キノは全体として人工光に対応している傾向はあるようです。映画はライティングを使うからでしょう。
屋根の上に誰かいます。ここにピンを合わせてのf2です。特に手前にかなりの深度があることがわかります。ほとんどパンフォーカスで撮影できるようになっています。
f1.2~f2.0で4段階です。
構図は悪くなかったと思うのですが、もう少し鮮明な画にするべきでした。
刷毛で撫でたような回転ボケが絵画的な柔らかさを持つのはプラズマートの特徴でしょう。
f1.2ではどうかと疑問を抱いてf2で撮り直したものです。f1.5ぐらいがちょうど良かったかもしれません。
少し暗くなってきた時間帯です。このように開放で撮るよりはもう少し絞った方が良さそうです。
人工光は古くは黄色でした。このタイプの光とは好相性です。
この状態の光は難しいのでf2.8が妥当でした。これはf1.5ですが、その前後でもはっきりしません。
f1.5とf2です。光源の強い対象は基本的にf2ぐらいが良さそうです。
蛍光灯の光は蛍光灯の光として写っていますが、少しクリームを混ぜたような違和感があります。開放で撮ったのもあるとは思います。蛍光灯下では絞る傾向の方が良さそうです。
f1.2とf2ですが、光はあるにはあるのだけど暗い、という構図はどのレンズでも捉えにくい難しさがあります。肉眼で見てもはっきりしないぐらいの環境です。
これもf1.2とf2です。f2の方は少し手ブレしています。この構図の場合、f2の時でどこにピンを置くのかで表現も変わってきます。後方より前の方が深度がありますので、室内の後の方の男性に合わせると前の方まではっきり写ります。しかし窓枠あたりにピンを置いた方が生命感のある画になる傾向です。
やはりこういう構図は、f2が意図を明確にします。
それでも、ぼかせて悪いわけでもありません。
冷暖房用の透明幕を張っている料理屋です。この幕がある意味、特殊フィルターのような効果があります。しかし鋭利に写してしまうと、この幕の実在感を強調して良くありません。どれぐらいがちょうど良いのかはケースバイケースでしょう。
気がついたら暗くなっていました。開放でこういうものを撮るとミニチュア撮影のようになって過ぎたる感があります。少し控えた方が良さそうです。
前日はスーパームーンでしたので月が綺麗に出ています。これはf2.8でしたが、ボケ玉で月を撮るのは困難です。
これだけ強い蛍光灯の光の下で開放で撮影すると、不快な白濁(ハレーションとは違うような?)が出ます。これは絞って回避したいところです。ともかく、球面収差がアンダーになるソフトフォーカスはどれも白濁が出る傾向です。白濁でボカすので結構なのですが、蛍光灯とは相性が良いとは思えません。絞れば大丈夫です。
夜になってからの開放3枚。
蛍光灯ではない白い光は大丈夫です。
背景が幻想的です。
この場合はf2の方が良さそうですが、同様の光の関係性の場合でも構図によっては、f1.2でも使えそうです。
作業場の中はかなり強い光です。そのため、滲みが出やすくなります。開放で撮れば少し抑えられます。
最後ですので開放で。
