2021.8.12 六本木界隈
風が吹き続けていたので、暖簾はボケではなくブレています。両端のライティングはボケです。不思議な対照です。
噴水から霧を放出しているので水面はモヤに覆われています。実際にはすでにかなり暗かったのでモヤはライティングの当たっているところのみ記録されています。
写真家の使うライティングは限定されたエリアを照らす場合が多いですが、撮影対象にのみ光を当てて背景には当てないということもあります。背景のこのボケ方であれば、印象としてはモナリザの背景のような感じがあります。明るさに落差があるのでもう少し詰めた構図であればより自然かもしれません。
光学設計は数学的に結果が出るので理論上の性能は製造前からわかる筈ですが、微妙な味ともなるとなかなか難しいことで、フランスのアンジェニューが試作を複数作って調べていたのが、背景のボケ方でした。全く自然にボケているところから、硬質のボケ方に変わってゆくところで、どれぐらいがちょうど良いのか、これは好みもあるので容易に結論が出せるものではありません。そこでアンジェニューはおおまかに2種類で出していました。プラズマートはその中間、というのも適当な言い方ですが、収差を残してどれぐらい絵画調にするのかというところで、1920年代頃の芸術的感覚が反映されていると感じられます。
f4です。周辺は流れるのですが、中央は非常に深度が深くなっています。古いキノでは結構よくある収差配置です。動画の撮影では動くのでどのような深度でも中央の主題に注意を向けようとすればこれが良いのでしょう。
主題が中央にある時に、そこへフォーカスする傾向です。それも決して硬く捉えようとしていません。
石のようなタイルを使って伝統の恒久性を、淡い色合いを使うことで伝統の優しさを表現していますが、そこへ温かな柔らかさが加わりました。
光源の後ボケが美しいのでこれは活かしたいところです。
構図自体が中央に注目しやすいもので、この場合割と自然な印象です。
色彩感は現代ではコーティングで操作も可能なのですが、本作はコートを入れていないのでそういうことはできません。それでこの色彩になるというのはガラスの組み合わせに依存するものです。それとボケ方、さらにレンズ構成、これらの条件でプラズマートの個性が決まっていることになります。どれかを変えると違ったものになっていきます。