ツァイスのパウル・ルドルフは、プラズマートの設計を同時に3種発表しています(天下の宝玉 キノ・プラズマート「院落」P1 50mm f1.9参照)。実際に製造されたものはこのうちの1つで、f2のものですが、少し設計に余裕があったのでガラスの直径を少し大きくしてf1.9で復刻いたしました。(すべて写真をクリックしたら拡大します)。
完成して受け取ってすぐの2021.7.27に少し撮影いたしました。撮影場所は、銀座〜有楽町〜丸の内界隈です。ライカM9です。
開放です。ピントが来ている位置の描写はプラズマート独特のものです。しかし光が付帯しているあたりでは柔らかくなっています。光源がそこにあるか、或いは外光が当たっているかで描写は異なります。
開放からf4あたりまでは中央のみに焦点が合います。周辺が流れると特撮風になってしまいますが、そこまでいかない、この辺りが本設計が評価される一因ではないかと思います。
前ボケが美しい玉はほとんどないですがこれも同様で、左に歩いている人物の白いバッグはフレアで包まれています。反射しやすいものはこうなる傾向です。一方、後ボケは品がありますが、これも名玉はほとんど同じ、個性は異なりますが。
後ボケを奥に突き放した例です。儚い表現です。
撮影できる至近距離でf2です。ボケの汚れ方がプラズマート独特のものがあります。
古い建築は耐久性のあるものが多いし、建坪率に関する新しい法律もあり、建て替えずに改装で使い続ける建物が多いと考えられます。そのためか、なんとなく収まりの悪い箇所というのがあちこちにあります。
映画用の玉なので中央の主題を如何に引き立たせるかということに主眼を置いています。そこでこれですが、上からf1.9、f2、f2.8です。やはりf2が業務仕様というのはわかる気がします。f1.9とf2では表現に差があります。
マシュマロのように溶けるボケなので白は難しい気がします。デジタルだから、というのもあると思います。
ある携帯店の置物ですが、上がf1.9、次はf2.8です。ここでは描写の違いを比較していますが、どちらが良いのかは何を撮るかによりそうです。多くの場合、少し絞って抑えた方が良さそうです。
これも同じく上がf1.9、次がf2.8ですが、開放はあまりボケがはっきりしません。しかし夜なら良い筈です。
硬くて騒がしい物質の撮影では、不思議な落ち着きを与える傾向です。
室内のような太陽光の少ない環境では美しくボケが活かされそうです。
使いにくい前ボケもこういう人工光の暗い環境では活かされます。太陽光も間接的な光であれば良いですが、直接光は難しそうです。もっともどのレンズもこういう傾向はありますが。それでもプラズマートの出図は独特です。
屋外ですが夕方ということもありますし、光源が多くても弱いので、溶けるようなボケが表出しました。
光源は輪郭が不明確、それがはっきり不明確となると収まりが悪い、ある程度まとまりがある、この辺りは収差配置というよりは、レンズ構成ではないかと思います。
ショッピングセンターのエントランスなので光は柔らかくとも光量は十分です。絵画調で撮れそうだと思ったので開放で。
対象を独特の柔らかさで捉えるのでガラスも肉眼で見るよりも柔らかい膜のように写ります。
周辺が流れることを利用して、ノブが動いているような感じを試してみました。
映画用レンズは主題を引き立たせますが、しかし背景の人物を無にしてはいけません。やはり必要な素材であることには代わり有りません。主役を喰ってはいけないが、背景もまた語る必要があります。そこでこういうボケ方になったのでしょう。アール・デコの影響を感じさせます。
ドイツで設計されたドイツの玉には違いない。それでも布の質感は柔らかく捉えます。絹はシルクロードを通じて欧州にも運ばれていたので、布の表現の仕方に対する概念に違いはないのでしょう。
水もガラスと同様ですが、ここでの水は動きがあるので輪郭が少し溶けた感じになっています。
プラズマートというと一般に知られているのはこういう周辺が回転を感じさせる流れた画です。特殊効果を狙う以外の作画では好ましくないものです。こういう画ならもっと絞るべきでしょう。動画なら幻想的に映りそうですが。
これは若干絞っていますが、これぐらいなら許容されそうです。
もっと絞って。ここから帰ります。