ゲルツ Goerzの設計師 ルバート・リヒター Robert Richter(トポゴンの設計で有名)は、エミール・フォン・フーフ Emil von Hörgh、フランツ・アーバン Franz Urbanと引き継がれてきた伝統とは異なる設計を1925年2月13日に2つの特許として出願しました。1つはキノ・ハイパーでした。
フーフはダゴールで基礎を据え、それをアーバンはセロール、ドグマーという形で発展させました(ダゴールの貼合を剥がして製造を容易にした)。これらは長年ゲルツの主力でした。対してリヒターはトリプレットとエルノスターの2つの選択肢を用意しました。キノ・ハイパー、もう1つはシネゴール Cinegor(独特許 DE428825)でした。翌1926年にゲルツは改組されツァイス・イコンとなりますが、リヒターはツァイスにそのまま在職してシネゴールから貼り合わせを無くした設計で特許を取っています(独特許 DE724605)。
シネゴール Cinegorは、vademecumによると25mmのキノとプロジェクター用レンズで、f1.2とf1.5が見つかっている他、50~100mm f2.0~2.5が存在するとあります。50mmはf2です。ということは21年に設計されたドグマーの後継ということになります。ドグマーの構成は、パン・タッカーによってf2.3とされ、明るさに限界が見えたのでそこを手厚くするための新設計だったと思われます。米ハリウッドへの販売のためシネ(シネマ)と英語にしたのでしょう。キノ・ダゴールを短縮して英語化したものです。その後、1940年にゲルツ・アメリカが改良型のアポゴール Apogor(米特許 US2260368)を設計しました。アポ、つまりアポクロマート(色収差補正)仕様に進化したシネゴールです。ゲルツはこの後も色消しに拘り、ダゴール型の最終形アーター Artarもアポを示すドットが入れられていました。対してキノ・ハイパーはドイツ語のままであることから、ハリウッドには訴求しないと判断されたものと思います。
シネゴール Cinegor(独特許 DE428825)。50mm f1.9。特許の記載ではf2ではありません。しかしf1.9では製造できそうにありませんので、これをf2で製造したものと思います。記載されている推奨の画角が40度なのですが、焦点距離50mmで44度で出しています。
ゲルツ・アメリカのアポゴール Apogor(米特許 US2260368)は、2つ載せられていてf2.2とf1.8があり、レンズ構成はほぼ同じです。f2.2の方ですが製造困難、これをf2.3で生産していたのではないでしょうか。
次にf1.8です。ゲルツはスチール用のダゴールで最終的にアポクロマートのアーター、キノでは同様にアポゴールで完成し、そしてシュナイダーに買収されて消えていきました。アポゴールは用途はキノなのですが、しかしこれもダゴール的です。画角を絞ったらほとんど無収差なのでキノというより普通の玉、均整の取れた描写です。シネゴール以上にガラスを厚くしています。
戻る
