メイヤー Meyerのオプティック時代のレンズとしてはオレストン Oreston 50mm f1.8を持っていますので、これで作例をみていきたいと思います。この前にご覧頂いたメリターは3枚玉なので、オプテック時代のものとしてはドミプラン Domiplanと同じようなものとみなせ、実際ドミプランはf2.8、メリター Meritarはf2.9ですのでほとんど同じです。それに対しオレストンは4群6枚のガウス型です。f値は1.8と明るくなります。代表的なこの2種類のレンズ構成の違いを比較することになります。北京紫竹院での撮影です。
結構人が多いので、まず人物から見てみようと思います。この2枚は日陰か太陽があまり強く当たっていない場所です。人物の輪郭の縁取りが明瞭で、前後のぼかした部分との対比の仕方が秀逸です。
太陽を浴びると少し煌めきが出ます。写真は基本的に強い光は苦手ですが、このレンズでも例外ではなく、角度によってはディテールが壊れます。これは角度を調整した上で、撮影位置は日陰に入るなど、悪い影響を無難に抑えた画です。
日陰で人物との距離を離しますと、縁取りの明瞭さが無くなっていきます。風景と同化していくようになります。その度合いは光の量とも関係があります。
さらにもう少し距離を取っています。焦点はだいぶん手前ですが、後方のボケ方に特徴が見られます。とても優しげです。メリターと似ています。
鋭い太陽の光が差し込むこのような環境ではフレアが出ます。R-D1はシャッター最高速1/2000ですから、1/4000或いは1/8000はないとまともに写りません。しかしそれ以前に風景の撮影では必ず絞らないといけません。無視して開放で撮るとこういう画になります。ここから現像で白飛びを和らげると背景に絵画のような味わいが出てこれも悪くありません。
紫竹院は、その名の通り竹が有名なところです。しかし他にもいろんな植物があり、この時期のメインは蓮です。蓮祭りの開催まで残すところ後2日ですので、花はまだつぼみです。花の輪郭の浮かび上がり方は人物撮影で見たのと同じですが、これがドレスデン族レンズの最大のアドバンテージです。ライカではこのように写りません。ツァイスであればドレスデン系ですので似た方向性も持ち合わせていますが、メイヤーのような清楚さはありません。しかしメイヤーでも戦前のレンズはまた違います。それは次の頁以降見ていきます。オレストンは接写も可能ですが、接写専用で使っても良いと思うぐらいのクォリティがあります。
こういう小さな入り江は光の廻り方が独特です。複雑な乱反射で柔らかい光が降りてきます。レンズも柔らかい写りですからよく合います。
竹の群生は細かい描写が求められますが、開放で撮ってもうまく写っています。詳細に写っても硬くならないので、雰囲気も捉えられます。
オレストンは対象を引きつけて使うと持ち味が出ます。マクロが最良ですが、このように2,3mぐらいの距離でも十分に魅力を堪能できます。これぐらいの距離の描写は戦前メイヤーの個性に通じるものがあります。伝統は受け継がれていると考えて良さそうです。
戦後のメイヤーはレンズ構成による描写の違いが明確ではありません。違うと言えば微妙に違いますが、考え方が明確に決まっているのか、どのレンズ構成を採用しても同じ特徴を有したものを作ろうとしているようです。もちろん、大抵のメーカーも同じだろうと思いますが、ここまで差を近づけているのは昔のメーカーでは日本製以外では少ないと思います。ちょっと暗いレンズの方が扱いやすい感じはありますが、明るさも捨て難い要素です。