無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




30年代ドイツを代表するキノ プリモプラン Primoplan
「院落」P8 50mm f1.65

2026.03.13

 20年代までフランスやドイツで様々な映画用のレンズが設計されましたが、ハリウッドでは31年から製造された英クック Cooke スピード・パンクロ Speed Panchroが評価され、業務映画のための収差配置が確定されてきていました。これはハリウッドの撮影家たちから意見を聞いて設計したとされていますが、それではどうして撮影家たちは統一した意見を持つほど知見を蓄積していたのでしょうか。過去の設計を見るとゲルツ・シネゴールの影響があった可能性があります。高く評価された面とそうでない部分があったのではないかと推察され、大きな変更点は直立型の球面収差、色収差の過剰な反転と湾曲を逆にしたことです。Kino(映画)のレンズ参照

 ゲルツは実質的にドレスデン郊外のフーゴ・メイヤー Hugo Meyerが引き継ぎ、Speed Panchroが出てまもなくステファン・ロシュライン Stephan Roescheinによってシネゴールが改良されたプリモプラン Primoplanが設計されました。スピード・パンクロの逆を行っているように見えますが、実際にはそうではなく、単にマイナス方向に流れるのではなく少しプラスに振ってからマイナスへ向かっていますので、基本的には同じです。しかし顕在化している部分では逆に見えます。

 歴史的にはこのゲルツ=メイヤーの主張は通らず、スピード・パンクロに近い収差配置に集約されていきました。しかし、球面収差は大陸では左巻き、島(英圏)では直立型という区別は21世紀になっても残っています。ここだけは変わっていません。その前の真に大陸的なKinoとなると、このプリモプランが最後のものだったということになります。プリモプラン自体も戦後は設計変更され、違うものになってゆきました。

院落 P8 50mm f1.65 0円

フィルター径?mm。至近距離?m。絞羽?枚。重量は計算値で?g

 特許はf1.5で、36年に申請されています(独特許 DE1387593)。まずArriへ100個程、その後ライカ用に20個程を製造しています。市場調査のためのプロトだったのかもしれません。これは記載されている通りのf1.5はなく、f1.65が限界で製造面を考えるとそれも不可能かもしれません。図はf1.65です。
Primoplan戦前 ガラス配置図 Primoplan戦前 縦収差図 Primoplan戦前 横収差図
 これをf1.5として製造したものと思います。ですが、何らかの理由で満足せず、製品化されたものはf1.9でした。そこでこれをf1.9として収差を確認します。
Primoplan戦前f1.9 縦収差図 Primoplan戦前f1.9 横収差図
 これだと、球面収差がシネゴール、キノ・ハイパーと同じとなり、十分にゲルツの設計を引き継いでいると言えます。またスチル35mmでも角があまり破綻しません。量産にも適しています。ですからこれが戦前のf1.9だったのではないかと思えます。当時の個体差が激しいので正確にはわかりませんが、f1.5から絞ったf1.9と製品化された開放には大きな差はありません。復刻にあたっては、せっかくなのでなるべくf1.65に近づけるようにします。


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