無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




大陸キノの最高傑作 キノ・プラズマート Kino Plasmat
「院落」P2 50mm f1.5

2024.11末完成予定

品格ある"マシュマロ・フェード"を堪能する

 Kino Plasmatは、f2のデータが残されています(独特許 DE401630)。これは業務仕様でつまりハリウッドでの映画撮影用、現在市場に残されている数からするとあまり売れなかったようで、その後f1.5が設計されています。

 写真レンズが設計できなかったエルンスト・ライツ社は、ドクター・ルドルフに援助を求めたようで、最初期のライカ試作品にはf2、さらにキノ・テッサーが装着されていたと言われています。しかしライカに最初からキノ(映画)用レンズでは難しいと思われ、マックス・ベレクがキノ・テッサーを改良したエルマーを設計したようです。Kino Plasmatは、f2から後にf1.5に変えて販売されていました。市場にはf1.5の方が多く残されています。

 ライカの儚い描写の原点は? それはKino Plasmatだったようで、ベレクの設計を解説する本にもKino Plasmat f2が詳しく解説されています。

 Kino Plasmat f1.5は光学設計が時代によって変遷しているのですが、最初期型をトレース致しました。使用ガラス、収差など既に明らかになっており、コンピューター上では確認できております。50mmはラージフォーマットでは使えるかもしれません。若干隅は暗めになりそうです。この設計は42mmまで迫れるので、おそらく大丈夫かと。

Kino Plasmat f1.5分解図1
院落 P2 50mm f1.5 310,000円

専用フード付き。フィルター径49mm。至近距離0.65mm。絞羽8枚。ガラスコーティング無
大口径のためP1より大型です。重量は計算値で213gです。


残り個数が1つなので在庫確認をしてからお振込でお願いいたします。予定では11月末完成です。いつも進捗の連絡はなく突然できあがります。 - 2024.10.08

Kino Plasmat f1.5レンズ構成図
 一般に世間で多数出回っているのはf1.5です。下がHugo Meyerのカタログに載っているf1.5の図で、f2とはガラスの形状が少し違うのがわかります。VadeMecumを参照するとf2は映画用しか作られておらずレア、これを写真用に転用した例はLunar Cameraというほとんど木の箱という代物ですが、おそらく最初中判が出てこれにはPlasmat 90mm f2(キノは付きませんがレンズ構成はキノ)、その後ライカ判に変わった時にPlasmat 50mm f2(これもキノ、つまりパテントデータのもの)に変えられたようです。レンズ交換は基本できないと思われ、にもかかわらず標準レンズにキノという、ぶっ飛んだ構想でした(本稿をご覧いただいているようなボケ玉使いのテクニシャンには何ら問題ないかとは思いますが)。尚この頃、ライカはまだ出ていなかった模様です。ライカの一番最初の試作にはこのf2が付けられた可能性があります。しかしf2のスチールへの転用は量産品ではおそらくルナー・カメラだけです。

Kino Plasmat f1.5広告
Kino Plasmat f1.5分解図2
 Kino Plasmat 50mm F2と比較してどれぐらい違うのでしょうか。f1.5はトレース、f2はパテントでしたので、由来が別なのですが、収差図を見た感じではほぼ同じものです。ですから撮影した結果を見ると大きな違いはない筈です。そこから収差を詳細に見るとf1.5の方が多いとか傾きが違うなどの相違はあるので、その微細な違いが両玉の違いであって、そこに目が行ってしまうと、かなり違うという印象を持つ可能性もあるかもしれないと思います。本物との比較であれば、本物はガラスが劣化しているのでコピーではもう少し明瞭に写るかもしれず、この傾向はf2と同じです。しかし小店ではf2をf1.9に広げて製造しました。f1.9とf1.5の違い、やはり違うかな?という印象です。収差量の違いはありますが、それより傾きが違うのが大きいかと。

 小店は以前より一貫して50mmはf1.9あるいはf2だと申し上げておりますが、オリジナルの標準Kino Plasmat f2は極めてレアで作例数も不十分、謎に包まれている一方、f1.5はある程度作られているので良く知られており、Kino Plasmatはf1.5なんだと、f2は要らないのだという見解が主流です。ですがKino Plasmatが評価されるようになったのは中国経済発展以降で、それまでは安価な玉でした。なぜでしょう? f1.5だったからではないですか? f2ならもっと評価されていたはずです。f2がどんな玉なのか復刻したものの作例が多数あるので見て下さい。これほど高貴なマシュマロ・ソフトは他に無し。ここまで言っているのに、それでも「f1.5をお願いします」と言ってくる方々が多い。だったら同じ50mmでf1.5を出して比較したら良いと、そのような話になりました。すると真面目に考えたのか「f2は、もしかしたら傑作かもしれない」という人まで出る有様(実際の製造はf1.9)。ですが75mm肖像用ではf1.5の方が良いのです。しかし現代的用途では少し長過ぎるので、また大きくなりコストもかかりますので50mmとなりました。

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