デルフトの彫りの深い表現で広角を捉える
デルフトの設計師 ヨハネス・ベッカー Johannes Beckerが公開している広角の特許です (米特許 US3357774)。ビオメター型の後ろにダブレットを取り付けた特殊な組み合わせですが、特許の記載を見ると「5つの空気間隔の部材を持つ大きな口径比の広角写真レンズ」という、もうちょっと意訳すると「5群大口径広角レンズ」ということになります。
デルフトで一般に見られるのは35mm,38mm共にf3.5で、トリプレットかテッサーです。しかし例えば、夜の祭りとか、そういうものの撮影では明るい広角の方が有利です。デルフトはレンブラント的な光の捉え方をします。ともかく広角のテッサーはどうでしょう? あまり良いものがありません。アルパがデルフトを選んでいるので最良の選択だったようですが、それでもちょっと微妙なのではないかと思います。一方でデルフトとしてはコスト高になることが明らかな大口径広角は積極的に売り込まなかったのかもしれません。おそらく製造されていません。ライカの35mmでもエルマーよりズマロンの方がはっきり良い。しかもズマロンはデルフトとよく似ています。だけどf3.5です。ここに掲載している設計はどちらもフランジから2~3cmのパンケーキ型、スチール写真用の設計ですし、もし製造されていたら傑作とされていたのではないかと思います。
画角は65度で、焦点距離は35mm、f値は1.7です。ライカであればフランジから前玉まで2cmぐらいしかない、小型、広角、大口径です。
この設計はマクロ・プラズマートによく似ています。考え方は少し違うようですが、マクロでも撮れる設計になっているかもしれませんので一応確認しますとレンズ先端から18cmぐらいまで寄っても問題ないような気がします。ですが湾曲が非常に強い、対象を中央に置いての近接マクロと割り切れば使えないことはなさそうという感じです。
画角は60度、焦点距離はデルフトですので38mm、f値は1.6です。5度画角を変えても収差配置はほぼ同じです。特徴は、球面収差の出し方にあります。ここでデルフトの個性を出しているようです。
こちらは22cmぐらいが限界のようです。
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