無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




文化の磁力は交わって艶やかな色彩を生み出す5

ミュンヘン製のレンズで濃厚な色彩を味わう - 2013.03.05


ローデンシュトック ヘリゴン 50mm f1.9
Rodenstock Heligon 50mm f1.9

 ローデンシュトック Rodenstockは一時期4,000人もの従業員がいたと言われ、非常に良く売れたコダックのレチナにもレンズを供給していたので結構数があってもおかしくないのですが、安価で購入するのは難しいと思います。本稿でご覧いただくヘリゴン Heligonはそのレチナに付けられていたものですが、これが一番手に入れやすいのではないかと思います。とはいえ、これをレチナ以外のカメラで使うのはDKLマウントアダプターを買う必要があります。そうでないと絞りの調整ができませんので、適当な延長パイプでごまかす改造は難しいのです。本稿のものはDKL-M42アダプター、そしてM42-M39と繋いで距離計に連動させる方法で使用できるようにしました。この時代の人気のあったレンズとしては高い(安くても3万ぐらいか?)上にアダプターまで買わされるのでたいへん遺憾ですが、数がある筈なのに値崩れしないあたりはやはり評価が高いのだろうと思います。現代でもプロ使用に十分要求を満たせると思いますし、実際雑誌などでローデンシュトックを使っていると思われる写真家も寄稿しているのが確認できます。(私は今、飛行機に搭乗しており、先ほどANA機内誌「翼の王国」を確認したばかりです。)いずれの焦点距離のものでも現代レンズと同列に評価できますし、独自の味もありますから、日本製の一眼レンズの中に混ぜてオプションの一つとして扱っても違和感がないように思います。

 ローデンシュトックというと眼鏡が有名ですが、そのイメージと写真用レンズとは切り離して考えた方がいいかもしれません。尚、写真用レンズとしては大判のレンズはまだ作っています。この中でイマゴン Imagonというレンズがあってかなり古い設計ですが、これもまだ作っているようです。レンコン状の穴が開いたフィルター付属のソフト・フォーカスレンズです。レンコン・フィルターも穴のバリエーションで各種付属してあって楽しいセットです。いやいや、プロが使う機材ですから、かなり切実な要求があって作っているものでしょうから、楽しいなんていうと失礼かもしれません。大判とレンコン・フィルターは、マッチングが良いのだろうと思います。

 ライカ判、現代で言うところのフルサイズ用のローデンシュトックレンズは、日本に淘汰されていく前のドイツレンズの最高の結実であり、一見、高性能とレンズの味は相容れないように思えますが、そのバランスが絶妙な感じがして完美なものに思えます。ローデンシュトックの過去のラインナップは史上最高のものの1つと言っても言い過ぎではないような気がします。ローデンシュトック Rodenstockのレンズとしてはとりあえず1本のみあり、マストアイテムのヘリゴン Heligon 50mm f1.9ですがこれを大柵欄に最近できてまだ工事中の部分もある観光街?あたりに繰り出して撮影したいと思います。

ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 鉄道博物館 ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 前門  地下鉄環状2号線に乗って「前門」で降ります。天安門の南に天安門広場があって、そのさらに南端にある門です。前門駅の北が天安門広場です。今回はその方向ではなくさらに南下します。駅から地上に出ますと、左に鉄道博物館、右に前門が見えます。とりあえず撮っておきます。昼間に開放f1.9は明る過ぎるのか、白らみがかっています。散景をf1.9で撮影するのは厳しく、描写が鮮明ではありませんが、結構良い雰囲気ではあります。鉄道博物館は美しい建物です。その方向に行ってみます。

ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 チケットオフィス  清末から民国期にかけての西洋建築と思われます。中国の街にも意外と溶け込んでいるのは不思議な感じがします。建築当時の趣が維持されるような努力が感じられますが、何でも新しくしてしまう中国では珍しく、特に北京では文化財の保護は丁寧です。古くて朽ちたものは保守交換しないといけませんので、こういう標識は古い物ではないと思いますが、そういうことを感じさせない程ぴったり合っています。

ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 レトロな柵  博物館は数段高いところにありますので階段が周囲に巡らしてあり、ところどころに柵があります。この柵も見事です。描写に夢と儚さが感じられますので、故きを温ねるようなこのような対象では歴史まで写っているようで、単なる記録の枠を越えているような気がします。

ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 外灯と円柱  鉄道博物館はこの場所にありますが、鉄道がここにあったわけではないと思います。この道をずっとまっすぐ行ったところに北京駅があります。写真の中に人物や赤い中国国旗も見えますが、それらを省くと中国には見えないかもしれません。遠景のボケの美しさは秀逸です。

ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 外食密集地  鉄道博物館の同じ建物には、こういう場所もあります。店内もレトロなのでしょうか。ここを通った時は考えなかったので、うっかり入るのを忘れました。中国人に人気のある軽食を一応並べておいたという感じがします。手前の紺色の看板は宿ですが、どんな宿なのか気になります。ケンタッキーに入って階段を3階まで上がるとあるようです。

ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 扇子を持つ中国人  この辺りの旧市街を保護してある場所は古い風俗を示す銅像が結構立っていますが、カラー彩色は珍しく、普通は銅剥き出しです。老(旧)北京の昔の生活がわかるようなものがいろんなところにあります。さすがに最近は扇子を持った親父は稀ですが、私の以前の京劇の老師はまだ50代ぐらいなのにいつも持って煽いでいました。もちろん冬の氷点下であろうが欠かすことができないのは言うまでもありません。文化人であることを示す重要なアイテムのようです。

ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 台湾淘宝館  大柵欄付近には広大な「台湾文化街」だったと思いますが、そういうものが出来ています。北京のこの辺りに観光に来る人というのは、北京を見に来るのであって台湾文化は関係ないと思っていると思います。こういうものがここにあるのは強い違和感がありますし、これがまた台湾の雰囲気をうまく醸し出していたら余計に居心地の悪さを感じます。しかし中国人からすれば、台湾の文化が上質というイメージがあるなら観光客からも喜ばれるのかもしれません。商品も台湾から輸入しているようです。

ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 妮可的店  「妮可的店」(ニコルの店)という喫茶店です。台湾街全体は閑散としていて、北京の伝統的界隈は人が多いので客が少ないわけではないのですが、台湾の方は工事中も多いということもあって、とても静かで喫茶店も閉まっているところがあります。テーマパークは日本人に設計工事させた方が良かったような気がします。半分作ってしまったものはしょうがないのでこのまま行くしかありません。このドアにしても、どの文化圏のものか判別できません。こういうおざなり的な仕事があらゆるところに見受けられます。頑張っていただくしかないと思います。

ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 台湾食堂街  一方、地下にあります台湾食堂街は結構徹底しています。そのまま台湾と言っても通用するかなと思います。服務も台湾的なので海の向こうから人材を呼んだのかもしれません。色彩の使い方と提灯と繁体字の組み合わせがいかにも台湾です。

ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 台湾料理の店  大陸にはない風格です。繁体字は文化の匂いがします。書くのが面倒くさいですが、香港台湾の人たちが繁体字を捨てないのはわかるような気がします。本を読んでも繁体字の方がざっと見回して意味が掴みやすいですが、簡体字はよく見ないとわかりません。日本語はその中間ですが、中国語はひらがながなく、漢字がぎっしり詰まっているので一気に意味が掴みやすいのです。

ローデンシュトック Rodenstock ヘリゴン Heligon 50mm f1.9 街路標識  ヘリゴンは全体的に描写が甘かったですが、これは結構しっかり写っています。光の具合だろうと思います。せめてf2.8ぐらいで使えばかなり優秀なレンズになるし、このレンズ特有の味も十分楽しめると思います。しかし開放の味も捨て難いものがあります。御伽の国のような写り方をします。今回一部台湾テーマパークを撮りましたが、東京ディズニーランドに行くならファーストチョイスはこのレンズかなという気はしました。

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