無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




メイヤーの2つの時代

戦前と戦後の違い - 2012.06.09


 メイヤー Meyerは、1896年創業の非常に長い歴史を持った光学会社で、過渡期を含めますと時代毎に3期に分類されます。

1,戦前のMEYER(メイヤー) - HUGO MEYER(フーゴ・メイヤー)と記載されているものもありますが、ほとんど同じものです。戦前のノンコートのメイヤーは単に「メイヤー」としかクレジットされていなくても、フーゴ・メイヤーと同じガラスが使われており品質も同様です。質は極めて優れています。戦前の新ドイツ派のレンズとしてツァイスに並ぶ存在です。
2,過渡期のMEYER - HUGOのガラスを使っており、単層コートがされています。OPTIKの記載がないものです。
3,後期のMEYER - 改良されたガラスに代わり、基本的にOPTIKの文字が入っています。古典ドイツ派の味わいを継承するドレスデン派を代表するものであって、同じメイヤーでも戦前のものとは違うものです。

 戦前メイヤーの最大の特徴は、ツァイスを退職したパウル・ルドルフ Paul Rudolphを招いてプラズマート Plasmatシリーズを発売したことです。フーゴ・メイヤーと書かれたプラズマートは極めて貴重品ですが、フーゴともプラズマートとも書かれていなくても、この時代のメイヤーはたいへん優れたものです。戦後、ペンタコン公社に吸収されてからのレンズは品質が落ち、現在でも非常に安価で購入できます。

 例えば3枚玉のトリオプラン Trioplanに関しては安価に製造しようと思えばできますので、コストの制約の厳しい製品に、さらに製品のバラつきもあったので、戦後においては特にこれが評判を貶める原因だったようです。対して戦前のトリオプランは性能面でたいへん素晴らしいもので、全く別の製品と言っても良いぐらいです。戦後の製品がコストとのバランスを考えたものであったとはいえ、個性は失うことなく、後期のトリオプランとは、すなわちメリター Meritarとほぼ同じものです。戦前のトリオプランはもっとはるかに高性能のレンズではありますが、個性が違うだけという見方もできます。メリターが持っている特質は戦前のレンズにはありません。戦前と戦後では取り巻く環境が全く違います。その中で戦前にあれだけ素晴らしいものを作ったというのは驚きですし、それと比較してもっと厳しい環境であれだけの美しい描写のレンズを作ったという戦後のレンズも別の意味で驚嘆すべきものです。戦前の玉は映画用レンズが中心です。プロ仕様で作ってあります。映画用のレンズはどの会社のものも高額の費用がかけられています。テレビがなかった時代だったので映画は高収益、顧客から価格より品質が求められていました。スチール用のレンズも写真館が使うので同じようなことが言えます。しかし戦後では一般の人が普通に買えて十分な作画が得られるものが求められました。

 メイヤー社でパウル・ルドルフが関わった設計です。

Euryplan

Doppel Plasmat
4群6枚 オルソメター型
ダゴール Dagorから貼り合わせを剥がしたオイリプラン Euryplanは販売が低迷していたため、ルドルフが設計変更したのがドッペル・プラズマート Doppel Plasmatでした
オルソメター型
Kino Plasmat

Rapid Plasmat
4群6枚

4群5枚
ソフトフォーカス
晩年に異なるタイプのラピッド・プラズマート Rapid Plasmatを設計するも製造されず
キノ・プラズマート型
Macro Plasmat

Kleinbild Plasmat
5群6枚

4群6枚
マクロ
ほとんどはマクロレンズとして販売されなかったが撮影可能。さらにミニチュア・プラズマート Miniature Plasmatも設計し、名称変更されクラインビルド・プラズマート Kleinbild Plasmatとなった
マクロ・プラズマート型
Aristostigmat 4群4枚 ガウス4枚型
1900年に生産開始され、後にルドルフが同じ構成で特許を取っていますが、変更されたのかどうかは不明
ガウス4枚型


 その他のメイヤー社のレンズです。

Aristoplan
Aristoplanat
Aristoskop
2群4枚
3群3枚
ラピッド・レクチリニア型(前期)
トリプレット型(後期)
ラピッド・レクチリニア型
Anastigmat 2群6枚 ダゴール型 ダゴール型
Atelier Schnell Arbeiter 3群4枚 ペッツバール型 ペッツバール型
Helioplan
Veraplan
4群4枚 ダイアーリト型 ダイアーリト型
Trioplan 3群3枚 トリプレット型 トリプレット型
Megon
Telemegor
4群6枚
2群4枚
ダブルガウス型
テレフォト型
テレフォト型
Optimat 4群4枚 エルノスター型 エルノスター型
Primoplan 4群5枚 エルノスター型 エルノスター型
Primotar 3群4枚 テッサー型 テッサー型
Primagon 4群4枚 レトロフォーカス型 レトロフォーカス型
Lydith 5群5枚 レトロフォーカス型 レトロフォーカス型
Domiplan 3群3枚 Trioplanの改良 50mmのみ トリプレット型
Domiron
Orestor
Oreston
Orestegon
4群6枚
4群5枚
4群6枚
7群7枚
ダブルガウス型

ダブルガウス型
レトロフォーカス型
レトロフォーカス型
Orestegor 4群5枚
4群4枚
テレフォト型 テレフォト型
テレフォト型


シリアルナンバー
1930 500,000
1935 675,000
1938 900,000
1940 998,000
1947 1,051,000
1951 1,200,000
1954 1,500,000
1955 1,600,000
1957 2,000,000
1960 2,500,000
1965 3,500,000
1971 5,000,000

コラム

Creative Commons License
 Since 2012 写真レンズの復刻「無一居」 is licensed under a Creative Commons 表示 4.0 日本 License.