無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




ベレクの50mmレンズ
エルマー・ヘクトール・ズマール・ズミタール
・ズマリットを比較する5

オールドライカ50mmレンズの描写について考察します - 2012.08.05


ライツ ズミタール 50mm f2
Leitz Summitar 50mm f2

 ライカレンズの完成形はエルマーとズミクロンですが、ベレクレンズの完成形は何でしょうか。エルマーはベレクが設計したものです。ズミクロンは弟子が設計したものです。エルマーはベレクの代表的なレンズですが、彼はこのレンズを設計した後、明るさとの戦いを始めました。そうであればエルマーは完成形であると同時に始まりでもあったということができます。一方、ベレクの研究が彼の死後に成熟したズミクロンも大きな流れでみれば、ベレク派の作品です。

ズミタール50mmレンズの光学設計図 ズミタール50mmレンズの光学設計図

 そのように言える背景には、このライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2の存在があります。ズミタールがあるゆえにズミクロンはズミタールの改良型に過ぎないという見方も可能です。ベレクにとってズミタールがf値2のレンズの完成形だったかどうかはわかりませんが、完成形として推しても良いと思わせるぐらいのクォリティを備えているのは間違いありません。事実ベレクレンズとしてこれを集大成的なものとみなすのは、ベレクがこれ以降、f2のレンズの設計を行わなかったことから考えても妥当だろうと思います。

 続いて桂林界隈をズミタールレンズに交換して撮影しました。3日に三江・古宜鎮からバスに乗り桂林(gui-lin)へ出、そこからすぐに別のバスに乗り継いで、阳朔(yang-shuo)へ向かいました。ここは漓江(li-jinag)下りの終着点です。都会の桂林よりも阳朔の方が風情があるので多くの旅行者がここで滞在します。沈没地として有名なところです。しかしすぐにここも出て、桂林方面へ少し戻ります。行き先は兴坪(xing-ping)という田舎町です。

 兴坪は漓江沿いにあります。漓江下りの船が毎日ここを通過していきます。この漓江下りのハイライトが兴坪付近です。桂林で最も美しい場所で、紹介される写真もここのものです。20元紙幣の図柄もここです。川下りはしなくてもここには竹の船があります。その後、阳朔に戻って1泊し、夜行バスで深圳(shen-zhen)に入ります。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 桂林の風景 ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 桂林の夜景 ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 朝日が射す桂林の山々  雨が少し降るなど天気が悪く、かなり霧が出ていましたので、山ははっきり見れませんでしたがこれもまた雰囲気が出て良いのかもしれません。昼間の2枚はとても開放では撮れず、かなり絞り込まないと撮影できませんでした。最高速1/2000ですが、1/8000は必要な状況でした。それでこの写真はレンズ評価の参考になりませんが、とりあえずこういう風に撮ることができるということと、山の写真がないとおかしいので、とりあえず貼り付けておきます。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 筏船  このような観光用筏船を使って遊覧します。焦点はタイヤあたりです。ベレクのレンズでボケが美しいのはこの玉かエルマーでしょう。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 漁師の筏船  開放ですが、船と漁師、背景の霞がかかった森との対比が良い感じです。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 門と篭  前ボケは柔らかく、後ボケが硬いのは他の玉と同じです。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 古い浮き彫り  外からの光を受けた彫刻です。本来はもう少し絞らないといけませんが、開放で撮っているために前後のボケの特徴の違いが出ています。右の方が前ボケ、中央に焦点が来ており、左が後ボケです。前ボケは使わない方が良さそうです。ライツのレンズですから、こういう画でのコントラストの出方は秀逸です。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 椅子に座る老人  服の質感など柔らかく捉えていますから、このレンズをそのままポートレート用に使ってもかなり良さそうです。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 桂林のガイド  一般的な状況ではこの写真のように対象物に対して、それより前に何かあるということはありません。しかし何かがあれば、それがどのようにボケるか気を遣います。後ボケには配慮は必要ありません。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 兴坪旧市街と夕日  夕方に遠くを撮った画ですが、このような場合は当然、絞る必要があるものの、本稿では開放が原則ですから、どこにピントを持ってくるのか、考えないといけません。もし無限であれば手前の人物がソフト効果がかかったようになってしまい、非常に見づらくなります。それで必ず手前からピントを合わせて遠景をも撮影することになります。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 阳朔の町と山  兴坪を出て比較的大きな町・阳朔に戻ります。この町は四方を奇岩に囲まれています。退けられないので人類の方が岩を避けるように生活しています。これがまたおもしろいということで、今では暗くなるとこの奇岩群にスポットライトを当てています。桂林も同じで街の中に奇岩がそそり立っています。これもピントは手前です。右手の白い建物の壁です。ですから、それより手前はボケています。しかし後ろはボケを感じません。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 操り人形  着物の質感とトーンが良い感じです。これはオールド・ライカの特徴でしょう。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 ビール屋の人形  前ボケを活用した画です。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 レストランのメニュー  1mに合わせたピントから遠くを大きくぼかした画です。ここまで極端に持っていくと収差が確認されます。とはいえ、夜景であればこれも良いものです。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 アクセサリーを選ぶ少女  一方でそんなに距離に開きがないならば、後ボケも安定します。手前はやはりソフト効果がかかったようなボケが出ています。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 書道を嗜む年配者  光の濃淡の激しい難しい画ですが、うまくトーンを捉えています。この辺はライツのお家芸です。

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