ズマリットはf値にして1.5という大口径のレンズです。ボケ玉と言われていますが、f2を切ると現代のもの以外の多くのレンズはボケ玉の範疇に入るとみなされるかもしれません。当時のライツ社の技術ではこのような大口径レンズを開発することができなかったのでシュナイダー社より36年以降、クセノンというレンズが供給されていました。49年にパテントが切れて以降、ベレクがガラスを新種に変えて若干の設計変更をしたものがこのズマリットで、ベレクの死後も60年まで製造されていました。
ズマリット50mmレンズの光学設計図
深圳に到着後、さらに香港に入って台北にもストップオーバーして帰国しました。深圳市内は特に何もありませんので、香港と台北をこのライツ Leitz ズマリット Summarit 50mm f1.5でご覧いただきます。(注:ズマリットの名を冠したライカのレンズは現行品のシリーズにもあります。ここでご紹介するものは49年に販売されたオールドレンズで現行のものとは違います)。
ズマリットの特徴的な写りというと、この写真の焦点より後方に見られる霞がかかったような表現です。これが出るかどうかは光の具合の影響が大きいですが、かなり発生しやすいものですので、これをどのように表現に折り込んでいけるかが1つのポイントになります。
こちらは夜の画像ながら、全体が霞んでいます。写真に写っていない範囲に強力な光源があり、その影響でこのように写っています。
f1.5なので開放ではかなりピントが浅く、絞りによってボケの深度を調節できます。コントラストが低く、ぬるい写りですが、立体感は十分にあります。
開放で遠景を写すのは好ましくありませんが、しかし暗い環境であればシャッタースピードを稼ぐために開けたいところですし、明るいレンズのメリットでもありますから、状況によっては使っていきたいところです。香港の夜は明るいので絞っても撮影は可能です。これは開放です。結構ボケますのでどう活用するかというところです。ボケが好ましくないケースでは絞れば良く、暗い環境なら開けてもボケはそれほど目立ちません。
焦点が合っていても光の具合によっては滲みが出ることがあります。この例では古いものを扱う店の暖簾なので表現意図としてはこれもある気はします。対象によっては好ましくないこともあるので、絞って消しにかかり、一方で活用したりということになりそうです。
屋外の看板ですから少し塵を被っているのは確かですが、この画に見られるフレア傾向は看板のコンディションとは無関係です。懐古趣味的な作画になっています。
夜になり光量が減少すると不明瞭さも増してきます。これ以上、不明瞭感を深めるようならソフトレンズと間違えられなくはありません。古い祭りの映像のようです。デジタルで撮影した21世紀のものには見えません。
対象にかなり接近すると光量がより少なくても明瞭さは増しますが、ベールを纏ったような雰囲気にはなります。ポートレートを撮影すると上品に表現できそうです。
光源は果物の上にありますので、少年には順光の光が当たっています。こういう光の環境では、面白みのない画になりがちで、コントラストも低いままです。
台北では夕方になると仕事を終えた人々によるバイクの群れが出現します。夏ですからまだ比較的明るく、それでも暗がりが迫りつつある時間帯です。焦点は手前の黒ヘルの人物で、背景のビルまではかなり距離があります。このような環境では円周ボケが少し出ます。
開放で撮ればどうしてもフレアは出ますが、提灯を撮影するとあまり目立ちません。
しかし少しピントを外すと滲みが大きくなります。これも雰囲気は良いものです。
少女は動いてはいるものの、f1.5による高速シャッターの効果で比較的鮮明に撮れています。それでもいかんせんレンズ自体がボケ玉ですから、フレアがかかっています。白い衣服が柔らかく写っています。