ライツ Leitz ズマール Summar 50mm f2は歴代ライカレンズの中で最も評判の悪いもので、安値で買えるレンズの1つです。よく指摘されるトラブルは前玉が柔らかすぎるガラスを採用していることで傷がつきやすいというものです。これはベレクが存命中から言われてきたことで、ベレク自身も失敗だったと認識していたようですが、その一方で非常によく売れたレンズでもありました。製造個数が多いというのも現在安価な理由ですが、それほど売れたということは一定の評価は得ていたことになります。事実、前玉に柔らかい材を使ったことにはそれなりの設計上の理由がある筈ですが、新品の状態だったら良くても古くなってくると曇りが出てきて悪くなってくるから現代では人気がないということかもしれません。
ズマール50mmレンズの光学設計図
最初に買ったライカのレンズはこのズマールでしたが、とても曇りが激しいものでした。ぼやけて画像がはっきりしていませんでした。それで山崎光学で研磨、コーティングしてもらいました。それがまだありますので、これを三江・侗族自治県に持ち込み撮影いたしました。
前回の鳳凰古鎮もアクセスのしにくい所でしたが、ここはもっと難しく、旅行の計画には入っていませんでした。しかし拙サイトで使っております Photo-China.Net の初代設立者(?こういうのは何て言うのでしょうか。要するに最初にドメインを取った人です。この方からドメインを頂き、有効利用できていなかったので無一居で使ったものです)の方から「桂林市内はつまらないので、滞在しないように」とご助言を受け、しかもメインイベントの「漓江下りをやらないように」という驚くべき助言まで受けたので、どういうことか説明を求め話をしっかり聞きますと、なるほど、納得できたので旅行計画を変更し、その影響で予定外の三江・程陽古鎮に行くことになったものです。
鳳凰古鎮も山奥にあるので、ここからバスで3時間、懐化という大きな町に出て一泊し、翌日は柳州へ行く切符をすでに北京で買ってあったのでそれに乗り、三江県駅で途中下車しました。駅前は平屋の民家が少しあるだけの過疎地です。そこにワゴンが数台停まっていて客引しています。怪しいにも構わず、駅から出てきた人たちは皆平然と乗り込みます。それで一緒に乗ることにします。すると10分ぐらいで大きな町が見えてきます。三江・古宜鎮です。まずここで宿を取り、翌日に(つまり今日)乗り合いバスで30分程山奥にある程陽古鎮に入域しました。午後には古宜鎮に戻りました。
明日はどうしたらいいのでしょうか。心配ありません。中国は人口が多いので交通機関は豊富にあります。どこかには確実に行けます。宿のすぐ近くにはバスターミナルがあってそこから桂林行きのバスが出ていることが判明しましたので、とりあえず切符を購入しますと座席番号は1番でした。ということは地元の人は当日に買うのでしょう。
古宜鎮の遠景です。古い街ですが歴史的建造物はありません。しかしこうして見ると街全体が歴史的な感じがします。遠景に霞がかかっていますが、これはズマールで撮るからこのように写るのであって本来はありません。このトーンがモノクロで撮った時にすごく美しいのです。ズマールを使う大きな理由の1つはこれですが、残念ながらカラーでは十分ではありません。これはデジタルですからモノクロにも換えられます。皆さんもこの写真を抜き出してソフトでモノクロに換えることができます。やってみてください。ぜんぜん駄目です。これがつまりライカ社がモノクロ専用機を出す理由だろうと思います。
同じレンズを15年前に台湾・九份にてライカIIIaで撮影したものです。現在このライカはスクラップ状態です。1939年戦争前夜に作られた粗い作りのものなので直せないようです。モノクロネガに替えただけでズマール特有のモヤがすべて良い方向に作用されます。
前ボケは良くない、これはズマールを使ったらだいたい思うことです。後ボケもそれほど良いとは思えないのですが、そもそもこういう構図はあまり得意でないように思います。
見た感じラーメンでもうどんでもそばでも何でもない、しかし麺です。温かいスープに入っています。この地方独特の麺に見えます。「これは何?」と聞くと「香港人!よそ者!」と言われ「それはどうでもいいから。これはどんな麺?」と聞いたら「普通の麺!」と言います。食べてみました。うどんです。てんかすのようなものまで入っています。これが日本に来てうどんに変わったのかもしれないと思いました。中国では既製品の麺はほとんどなく、すべて手打ちです。まさか南方でこんなにうまい麺にありつけるとは思っていませんでした。
こういう光と影の落差がある構図は避けたいものです。しかしトーンはズマール独特のものです。
程陽古鎮に着きますと、まずこの橋を渡ります。町の入り口に架っている古い橋です。かつては交易である程度、裕福だったと思われます。全体的に重たいズマールのトーンが見られます。
不明瞭感があるものの、合焦点の街灯はくっきりと写っています。これもモノクロでなければ魅力は出ません。このレンズは完全にモノクロ向けでしょうね。カラーだと駄目です。
これも同じく台湾で同時期に撮影したものですが、対象と前後のボケとの調和が申し分なく、対象もはっきり出ています。
もしズマールのトーンをカラーでも活かすなら、こういう構図に制限しないといけません。
このトーンも問題ない範囲です。もし現代レンズに慣れた人がこの画像を見たら、どんなエフェクトを掛けているのかと思うかもしれません。合焦点ははっきりしているのに、それ以外は滲んでいます。座布団があるのは珍しいです。日本に文化が近いことを感じさせます。
少数民族の衣装というのは制服のように感じられます。おそらく藍染です。輝きがあって様々な色が使える絹が高価だったのはわかるような気がします。
侗族(tong-zu)は独特の文字を持っていると言います。しかしどこにも見かけません。これでしょうか。古代の漢字に見えますがそれが侗文字なのかもしれません。ズマールのボケはソフトフォーカスに近いように見えます。
人が来ると一生懸命に吹き鳴らす子供です。西洋の誕生日の曲、よく知られているものを朗々と吹きます。学校で習った曲で稼ごうという意図が明確なのは明らかです。狙いは明確、しかし違和感があるのです。歓迎して我々の来村を祝っているのはわかるのですが、誕生日? 曲が違うのでは?と思うわけです。子供に言ってもしょうがないので、観光客らは苦笑を禁じえません。本人は真剣です。
生地の質感の出し方は、トーンを大事にしている玉ならではです。
白いものは質感が出しにくいように見えます。
銀色だと大丈夫です。描写は甘いです。
開放での撮影ですが、奥へはあまり急激にボケてはおらず、なだらかです。
殆どの玉は奥へのボケは使いやすいですが、これも同様で前ボケはあまり良くありません。
ライカM9にて六本木界隈での撮影です。最後の1枚のみ開放では撮れずf5.6程まで絞っています。