次にドレスデンの無名のメーカー、フェインメス Feinmessブランドのボノター Bonotar 105mm f4.5を見ていきます。フェインメスはこのレンズ以外は販売しなかったようです。1つ作って倒産したのか、何らかの必要があって外注したのか、どちらかだろうと思います。それが50mmだったらまだわかるのですが、105mmというのはどうしてなのでしょうか。拘りがあった可能性があります。105mm f4.5というとすぐに「中判のレンズか」と思います。でも描写が中判用の転用には見えません。コーティングはメイヤーVコートであって、レンズ前面に表記が有ります。メイヤー製と考えるのが自然です。レンズ構成は安価なモデルに使われる3枚玉でf値は暗く4.5です。アルミ鏡胴で軽いという以外に特に優れた点はなさそうなレンズなのですが、肝心なのは写りです。それでは今から見ていきたいと思います。撮影地は北京動物園です。
まだ一枚目ですので、この後もう少し見ていけば段々と明確になって来ますが、このレンズもやはりこの描写を見る限りメイヤー製であると言えると思います。柔らかく繊細な描写、ノンコートのような発色と戦後のメイヤーレンズが持っている特徴をこのレンズも持っています。それに加えてフェインメスのこのレンズは温かい雰囲気があります。人間の肌が健康的に写ります。
陰影の捉え方の基準はいろいろあると思いますが、このレンズは人の肌を使って基準を設定したような気がします。肉眼で見るよりも奇麗に見えるのは偶然とは思えません。焦点距離から考えて、そしてトリプレットを採用していることからもポートレート専用に作ったものだろうと思います。
機嫌の悪い子供が多いですが、動物園に行くと言って興奮し、夜寝られなくて朝になってぐずるから「今日はやめとこうか」と言ったらパニックになって「行く」と絶叫するというような手に負えない状況で連れてきたと想像される家族によく出くわします。死んだ目で動物鑑賞です。将に荒唐無稽です。この後、むりやり昼ご飯食べて帰って昼寝して起きたらまた夜で寝れないから「外で遊ぶ」と言い出すなど、とことんややこしいのです。しかし興奮できるものがあるというのは良いことです。とはいえ、毎晩興奮も困りますが。日陰に入っていますので感じは異なりますが、これも良い感じです。光量が落ちると発色が強まる傾向が顕著です。コントラストも上がります。
手あかの付いたガラス越しなので不鮮明ですが、太陽の当たった毛の描写が柔らかくも繊細に捉えられているのがわかります。
屋外ですから明るいのですが、露出がアンダー気味になったためか発色が強く出たかもしれません。露出補正はポイントの1つになりそうです。
こちらは淡い色彩です。光の状態で発色に影響がありそうです。
これは色濃く発色した例です。しかし奥の方のコントラストは低くなっています。
こちらは中間調です。もしこのレンズがポートレート用を念頭に置いていたのであれば、発色の変化は興味深い点です。ライティングによって最良の効果が得られるような視点で作っているのかもしれません。
室内蛍光灯ではこんな感じです。
比較的遠いところを撮ると戦後メイヤーの雰囲気がかなり出てきます。
何となく感じられる点ですが、このレンズはメイヤー製であるとしても幾らかはフェインメス社の意向も反映しているようです。カラーバランスが違うような気がします。フェインメスのレンズの方がより温かみがあります。そこがポートレート用なのかなと思わせるところでもあります。この焦点距離であればそこは念頭に置いていても不思議はありませんが、それと同時に汎用レンズとしても使えるように考えたのかもしれません。独特の個性がありますので、これもまた貴重なものだろうと思います。