無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




ルドルフによるガウスの結論 アリストス プラズマート Aristos Plasmat
「院落」P7 50mm f3.3

2024.12.02

 パウル・ルドルフ Paul Rudolphのガウス型は、ツァイス時代のプラナー Planarが有名で、改良されながら100年以上経っても生産されています。ツァイスの進歩とは別に、ルドルフ自身がフーゴ・メイヤー Hugo Meyer移籍後に設計したものは、既にメイヤー社が製造していたアリストスチグマート Aristostigmatの改良でした。改良は数度に及び、幾度か特許申請されています。その中で最も明るいものは1924年のf3、製造困難で実際はf3.3というものです(独特許 DE420223)。画角45度を超えると急に破綻します。
Aristostigmat f3.3 ガラス配置図 Aristostigmat f3.3 縦収差図
 ダブルガウスは傑作が多く、ツァイス Zeiss・プラナー Planar、シュナイダー Schneider・クセノン Xenonなどがあります。これらのキノ版も優秀な特性で、その同類としてクック Cooke・スピード・パンクロ Speed Panchroなどがあります。これらは明確にわかる収差の乱れはありません。ですが、内部にはキノの収差が隠されている「隠伏キノ」です。このf3のアリストスチグマートは、その種のキノとして設計されたと思われます。非常に抑えたPlasmatの収差が含められていることが、以下の横収差図に現れています。
Aristostigmat f3.3 横収差図
 ルドルフがKino Plasmatを設計した同時期の設計で、これが世に出ていたら、隠伏キノで最高の評価を得ていた可能性があります。Aristostigmatの改良生産は、すべて4枚玉とコストダウンされたもので、6枚は出ていないようです。そのため、これを「Aristos Plasmat」として区別しました。ルドルフがガウスに関してはf3ぐらいでちょうど良いと考えていた、f2はプラズマートだという結論を持っていたのは意味深長です。強烈なキノなら明るくできたのだと思いますが、自然なところで「隠伏キノ」としての美意識を高めようとした場合、これぐらいがちょうど良いということなのかもしれません。50mmでf2はある意味で限界値なので、そこから少し抑えた方が良いという考えだったと思われます。無理がない(これが重要)自然な古典ガラスのみを使った場合、f2ならキノまで行ってしまい、バランスの良い限界値はf3付近だったのだと思います。これがどういうことなのか、実際に製造すると明らかになってきそうです。



 ルドルフ協力以前にあった1900年の設計(独特許 DE125560)は口径の記載がありませんが、販売されていたものはf6.3で、画角は100度です。焦点距離は50mmで出図しています。描写がダゴールのような玉です。
Aristostigmat f6.3 ガラス配置図 Aristostigmat f6.3 縦収差図
 遠景は被写界深度があるので比較的大丈夫ですが、距離が近くなると周辺が良くありません。70度かそれ以下が限界のように思います。
Aristostigmat f6.3 画角70度
 ルドルフは1918年に最初のアリストスチグマートの改良と思われる設計を申請しています(独特許 DE322506)。貼り合わせを増やしてガウス型になっており、f4.8です。f6.3より収差配置をあまり変えずに明るくしています。焦点距離は25mmで出しています。ガラスが小さくなり過ぎるので広角での製造は現実的ではありません。
Aristostigmatの改良 f4.8 ガラス配置図 Aristostigmatの改良 f4.8 縦収差図
 同じ特許に広角も載せられています。f6.8なのですが画角は上と同じでした。焦点距離は25mmです。
Aristostigmatの改良 広角 ガラス配置図 Aristostigmatの改良 広角 縦収差図

 ルドルフは1924年の上掲のf3より22日後に貼り合わせを無くしたf4のアリストスチグマートの改良を申請しています(独特許 DE420825)。特許にはf4とありますが実際にはもう少し暗く、f4.4の製品もあるようなので、これがその改良である可能性があります。画角は56度のようで、焦点距離は40mmです。かなり良さそうなのですが、50mmにしても絞りが入りそうにないぐらい小さい玉で少し長くしないと味も出そうにありません。
Aristostigmatの改良 f4.4 ガラス配置図 Aristostigmatの改良 f4.4 縦収差図
 Meyerで従来より作られていたものは以下の広告のものでした。
古いAristostigmat

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