パウル・ルドルフ Paul Rudolphのガウス型は、ツァイス時代のプラナー Planarが有名で、改良されながら100年以上経っても生産されています。ツァイスの進歩とは別に、ルドルフ自身がフーゴ・メイヤー Hugo Meyer移籍後に設計したものは、既にメイヤー社が製造していたアリストスチグマート Aristostigmatの改良でした。改良は数度に及び、幾度か特許申請されています。その中で最も明るいものは1924年のf3、製造困難で実際はf3.3というものです(独特許 DE420223)。画角45度を超えると急に破綻します。
ダブルガウスは傑作が多く、ツァイス Zeiss・プラナー Planar、シュナイダー Schneider・クセノン Xenonなどがあります。これらのキノ版も優秀な特性で、その同類としてクック Cooke・スピード・パンクロ Speed Panchroなどがあります。これらは明確にわかる収差の乱れはありません。ですが、内部にはキノの収差が隠されている「隠伏キノ」です。このf3のアリストスチグマートは、その種のキノとして設計されたと思われます。非常に抑えたPlasmatの収差が含められていることが、以下の横収差図に現れています。
ルドルフがKino Plasmatを設計した同時期の設計で、これが世に出ていたら、隠伏キノで最高の評価を得ていた可能性があります。Aristostigmatの改良生産は、すべて4枚玉とコストダウンされたもので、6枚は出ていないようです。そのため、これを「Aristos Plasmat」として区別しました。ルドルフがガウスに関してはf3ぐらいでちょうど良いと考えていた、f2はプラズマートだという結論を持っていたのは意味深長です。強烈なキノなら明るくできたのだと思いますが、自然なところで「隠伏キノ」としての美意識を高めようとした場合、これぐらいがちょうど良いということなのかもしれません。50mmでf2はある意味で限界値なので、そこから少し抑えた方が良いという考えだったと思われます。無理がない(これが重要)自然な古典ガラスのみを使った場合、f2ならキノまで行ってしまい、バランスの良い限界値はf3付近だったのだと思います。これがどういうことなのか、実際に製造すると明らかになってきそうです。
