モノクロ写真というのは、カラーと比べて色がないだけでしょうか。自分で現像までしたことがないという場合でも、ある程度アナログでモノクロを撮影した経験があれば「全く別物」という印象があると思います。カラーでもアナログとデジタルは違いますが、違うなりにそれぞれ受け入れて楽しめます。しかしことモノクロとなるとそういうわけにいかず、アナログで味わえる深みをデジタルで楽しむのは難しさを感じます。凄い圧倒的な差が感じられるのです。
この苦情?はかなり前からあったようで、先頃ライカがモノクロ専用機を出しました。カラーの場合は色の感知のため4つ一組でセンサーを使いますが、モノクロは必要ないので4倍に性能が上がるということのようです。
そしてこのライカのモノクロ専用機ですが、アプリが2つ付いています。Adobe Lightroomと今から見ていきますSILVER Efex Proです。
これもモノクロからデジタル臭を除くという目的はあると思います。ハードではなくソフトの方面からアプローチしたものです。かなり良くできており、デジタルで撮ったモノクロだけでなく、アナログをデジタル化したものも一回このソフトを通した方が良い感じがします。通すというのは、ソフトに読み込ませて何もせずにそのまま保存するということです。読み込ませた時点でニュートラルな状態に整えますので、簡潔に済ませる場合はこれだけで十分と思うこともある程です。
プリセットは、露出別に幾つも細かく用意されています。露出は普通であれば、スライダ1つ用意すれば調整できると思いますので、幾つも別に用意されているのは一見不自然ですが、これはおそらくフィルムをデジタル化した場合の問題点を対策するものと思います。デジタルであればすでに露出計が内蔵されており、自動で合わせますので大きく狂うことはありません。しかしモノクロのアナログフィルムは露出の許容範囲が広く、結構狂っても現像で何とかなりますから露出を目測するカメラの場合、適当に撮る事があります。もっとも、露出は正確に合わせるに越した事はありませんし、画もその方が奇麗ですが、撮影のテンポを重視してだいたいで撮っていくことも有りえます。その場合、かなりの誤差で記録されていることがあります。差が大きいのでスライダー1つで解決は難しいようです。
露出用以外には特殊効果用のプリセットが幾らかあります。順番に幾つか見ていこうと思いますが、同じ写真では飽きますので、全部変えて見てみたいと思います。
モノクロということでフランスのパリから幾つか使ってみたいと思います。レンズはこれまた同じくライカ・ズミタール50mm f2開放です。フィルムはフジ・ネオパン100でフィルムからデジタル変換したものです。以降パリの写真は同じ条件です。
2つある「クールトーン」というプリセットの1つ目のものです。こういう効果はもっと違う対象を撮影して包装紙とか、そういうところで使うものに適用できそうです。
今度はエッフェル塔に2つ目のプリセットを適用してみます。
確かに "クール" な仕上がりです。
「ダークセピア」です。元画像が薄かったので、セピアという感じになりませんが、かといって適性露出の画であれば強くなりすぎます。
その場合は「ソフトセピア」の方が良さそうです。少し色が着く程度です。
「フィルムノワール」というのが3つあります。これは1つ目です。かなり荒れた印象になります。
2つ目はさらに潰されます。
3つ目はもっとです。モノクロのプリセットは、用途がかなり特殊なように思います。一般には使わないでしょうね。カラーとはやはり違うようです。
「古色」というプリセットは2つです。1つ目は効果が強めのように思います。
2つ目ですが、普通のセピアに見えなくはありません。セピアに枠を入れただけかもしれません。
「アンティークプレート」というのも2つあり「古色」と同じ方向性のようですが、少し違います。基本はセピアのバリエーションです。
周辺が露出不足になります。古いレンズの場合、これぐらい性能が悪いものもあります。
これは「ピンホール」レンズの再現です。針穴写真です。ガラスのレンズではなく、小さな穴です。露出に非常に時間がかかります。昼間外に出て撮影すると三脚を立てて数分間、数十分間シャッター開いたまま放置します。動くものはほとんど撮影できません。それを簡単にプリセットで完成させようというものです。
今度はこのカラー写真を使って部分色付けというのをやってみます。レンズはロス エクスプレス 75mm f3.5開放です。
ソフトを起動すると表示される写真はモノクロに変わっています。ここで保存すると色情報を失うので、保存せずそのまま続行します。
右に「コントロールポイント」というのがありますので、これをクリックし写真上に任意にポイントします。これは部分的にバランスを整えたりコントラストを変えたりするもので、一番上は適用範囲を決めるものです。一番下に色を付けるスライダーがありますのでこれを高めると、カラー写真にあった元の色が復元されます。
3箇所程ポイントしてみました。どうもはっきりしません。こういう作画の場合は、それ用にもっと対象が明確になった撮影を行うべきのようです。
ということで、もっと派手な材料を使ってみます。戦前メイヤー トリオプラン 25mm f2.8を使っています。
ぼけているし、光が滲むように拡散し過ぎていますので、COLOR Efex Proでコントラストを調整します。
続いて、SILVER Efex Proで色を取っていきます。
完成しました。色が薄過ぎるように思います。
そこでさらにCOLOR Efex Proに戻って、コントラストを高めますが、コントラスト用のフィルタは複数ありますので2重に、さらにブリーチも掛けました。デフォルメ感が強いので、観光地の広告みたいです。
理想としてはこういう感じでしょうか。全体をセピア基調として、ビールの黄色だけでなく白い泡もカラーを復元しています。カラー復元部については、さらにビビッドにパンチを利かせている感じでしょうか。