南ドイツ・ミュンヘンというところは結構、光学会社の多いところです。どうしてでしょうか。しかも個人が趣味的に開業したようなところが幾つかあります。興味がそそられるレンズもいろいろありますが、やはり土地の文化というものに逆らえないのか、全体的に統一した特徴が見受けられます。それは、こってり艶やかな色彩を持っているということです。どうしてミュンヘンで作られたレンズはこうなるのか、いろんな方向から考えましたがはっきりしたことは結局わかりませんでした。しかし手がかりになる情報はありますので、推測してみたいと思います。
ミュンヘンというところは、固有の文化というものが感じられにくいところです。もちろん、バイエルン地方独特の風土というものはあります。しかしロンドンやパリ、ウィーンのように強烈な個性があるわけではありません。文化的なイノベーションが欧州の他の地域で発生すれば、その都度影響を吸収してきたようなところがあります。かといって田舎でもなく、それどころか、ドイツ最大の経済都市とされています。豊かになると想像力が失われるのでしょうか。でもそうであれば、他の大都市も条件に大差はありません。経済力があれば、多くのものを引付けますので新しいものも集まってきますが、ミュンヘンにはそういうものを寛容に受容してきたようなところがあります。
バイエルン地方はかつて神聖ローマ帝国の中心地があったところです。同帝国は独立した諸侯の集まりで、選帝侯と言われる6人の高位の貴族が皇帝を選出しますが、その時の皇帝の所在地が首都になるので、明確な中心地は時によって変わることになります。しかし規定により皇帝選出の会議と戴冠は必ずニュルンベルクで行うということに決まっていました。ミュンヘン北方の都市です。こういう政治的にあいまいな位置づけやオーストリア帝国の影響下にあったこと、文化的にはパリの影響が強かったことなどから、独自の文化が保ちにくかったのではないかと想像されます。しかしこうしていろんなものが交じり合うことと写真の色彩には関連性があるのでしょうか。
ドイツ国内におけるミュンヘンという都市の位置づけは、中国では上海に相当します。互いに北方のベルリンや北京と似たような関係性があります。どちらも首都ではありませんが、国内最大の経済都市として勢いがあります。周囲には文化レベルの高い地域もあります。どちらも政治運動の発源地として知られています。ここでは詳しく政治の話はしませんが、ドイツ労働党、中国共産党はどちらもこの両都市から旗揚げしています。文化の発信力はなくても政治的影響力は強大です。上海は昔はハイカラな都市と言われていましたが今でも群を抜いて洒落た街です。ミュンヘンはどうでしょうか。行ったことがないのでわかりませんが、欧州経済の中心地なので華やかな繁栄に満ちた都市という側面はあると思います。こういう特徴の場所で制作される紙の上のものというのは、派手で艶やかになる傾向があるのではないかと思うのです。
理由はともかく結果的に色彩感の豊かなレンズが多いということで、まずはキルフィット Kilfittの有名マクロレンズ、しかしながら通常撮影もOKというマクロキラー Macro-Kilar 40mm f3.5Eを使って撮影していきます。発色を活かす方向なので相応しいところはないかと考え、自宅から自転車で5~10分のところにある南锣鼓巷(nan-luo-gu-xiang)に乗りつけることに致しました。以前通っていた学校がここにあって、北京に来て初日に見たところですから、それ以来よく知っている場所です。レンズの個性にちょうど合うような気がします。
このレンズはマクロでしか使う気がなかったということと、40mmのライカ用ヘリコイドの入手が面倒なので距離計非連動でのマウント変更です。エキザクタマウントをライカL39マウントに変更するアダプターを作って貰っています。ファインダーは使っていますが、距離はすべて目測、すべて開放f3.5の撮影です。レンズ構成はテッサー型です。
北京は都会なので世界のいろんな料理がありますが、朝鮮(北朝鮮と韓国、それぞれある)の焼肉に次いで日本食も結構あります。たこ焼きは珍しいですが、毎日お祭りのような場所ですのでちょうどぴったりです。ピントは目測なのでどこに行くかわかりませんが、この場合は女性の腕でした。もう少し奥の方が良かったと思います。しかし合焦点は非常に艶やかに撮れています。もう少しわかりやすい画も挙げてみます。
テッサー系レンズの特徴がよく出ています。非常に魅力的な写りです。マクロは性能がより求められるので、遠距離を撮った場合にもかなり優秀です。
ランプのある画です。中庸を得た実に自然な写りです。マクロよりも普通に撮影した方が良いような気さえします。
ピントがズレ過ぎてしまった図です。手前の暗い部分にピントが入ったようです。とはいえ、ボケも見事です。
これは結構近かったので、何回やり直してもピントが合わず諦めましたが(後で考えるとブレていたのかもしれません)幻想的な雰囲気に撮れました。
行き交う人々を何枚も撮った内の一枚ですが、どうしてもピントが合わないと思ったら、暗い中で動いている人を撮影していたからでした。ピントは運任せとはいえ、大勢をまとめて撮る趣向なのであまりシビアではありません。この画ではなぜか中央の白い方にぴったり合っています。シャッターの遅さと人物の動きと手ブレが一体化した時のみ可能な画です。まぐれですが、これもまたおもしろい画です。
ピントはあいまいに彷徨っていますが、ショーウィンドウに向けて外側から撮っています。雑貨店の類いはとてもたくさんの人で、中に入ると撮影できません。しかも女性がとにかく多いので、自分とはスペースを空けないといけませんから、まともに撮影の位置取りができません。(中国でも男性はこういうものには興味がないようです。)それで入り口に入ってすぐに出て、以降は外から撮っていました。しかしこの方が雰囲気が出て良いと思います。
酒場がとても多く、ライブ演奏しているところも見受けられます。(こういう店は「酒場」でいいのでしょうか。とにかく酒を飲むところですね。)静かなところもありますが、ある一軒の酒場に白人の中年夫婦が窓際に座って話しています。映画のよう、といいたいところですが、残念ながらピントは手前の白い花瓶に外しています。とはいえ、全体的にいい感じではあります。