無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




ベレクの35mmレンズ
エルマー、ズマロンを比較する1

オールドライカ35mmレンズの描写について考察 - 2012.05.21


ライツ ズマロン 35mm f3.5
Leitz Summaron 35mm f3.5

 昔、コンピューターはおろか電卓すらなかった時代に幾何光学の設計をするのはたいへんなことだったようです。特に広角は難しく、マックス・ベレクの設計したオールドライカレンズには広角レンズは3本しかありません(35mm2本、28mm1本)。50mmレンズはF3.5から始まってf1.5まで開発しましたが、35mmレンズは改良型でもf3.5のままでした。ベレク設計による35mmレンズ2種は、テッサー型(エルマー)、ガウス型(ズマロン)と違いますので描写の味わいが異なります。

 この2種のレンズについて前提としてまず確認しておきたいことは「モノクロ撮影用のレンズ」ということです。モノクロでも色収差を補正しなければ滲みが出るので、全くカラーフィルムを念頭においたものでなくても、そのままカラーで撮ることも可能ですが、設計の基準はモノクロの描写です。モノクロではカラー以上に階調表現が重要です。この2つのレンズを比較するに当たり、階調表現について特に留意したいと思います。

ズマロン35mmレンズの光学設計図 ズマロン35mmレンズの光学設計図


 最初に、ライツ Leitz ズマロン Summaron 35mm f3.5で撮影します。撮影場所は上海です。

ライツ leitz ズマロン Summaron 35mm f3.5 上海テレビ塔 ライツ leitz ズマロン Summaron 35mm f3.5 上海市内  晴れと曇りの状態を比較していますが、特に際立った特徴はありません。敢えて言うならば、繊細な描写ということはできます。普通にしっかり写るので安心して使えるレンズです。今度は近いものを撮ってみます。

ライツ leitz ズマロン Summaron 35mm f3.5 上海西洋建築の窓 ライツ leitz ズマロン Summaron 35mm f3.5 中国の古い自転車  近い対象は瑞々しく写る傾向があります。遠くのものは繊細な印象がありましたが、近いものはライカのレンズとしては幾分しっかりと線を描こうという指向が感じられます。階調を細やかに維持する傾向だからなのか、カラー写真としてはコントラストが不足しているように感じられなくはありません。ライカのレンズによく見られる特徴です。デジタルのモノクロは良くない上、今後もモノクロ専用デジカメとしては高価なライカM-Monocrom以外に市場に出ないと思われるので、デジタルでオールドライカレンズの描写を楽しむのは敷居が高い状態が続くかもしれません。もっともモノクロはデジタルよりフィルムがベストですが。次に天然光と人工光の扱いを見ます。先に人工光(間接光も)から。

ライツ leitz ズマロン Summaron 35mm f3.5 上海西洋建築 ライツ leitz ズマロン Summaron 35mm f3.5 古琴研究会1 ライツ leitz ズマロン Summaron 35mm f3.5 古琴研究会2  いずれも反射した光を撮っています。1枚目は中央の緑がかった部分が向いのビルの反射を受けている様子です。2枚目はライトアップ、3枚目は幾分複雑な光を受けた欄干です。繊細さと瑞々しさが調和を保って美しく捉えられています。

ライツ leitz ズマロン Summaron 35mm f3.5 上海ガニ専門店  今度は強い太陽の光を受けている画ですが、それでも決して硬くはならず、柔らかさを維持しています。これがズマロンの最大の特徴だろうと思います。

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