次も同じくフィラーニア Ferania社によって販売されていたコンドル Condor IIから、オフィチーネ・ガリレオ Officine Galileo エサオギ Esaog 50mm f2を外してマウント改造を経て撮影して参ります。50年代ぐらいのレンズだろうと思いますが、この時代の標準レンズでf2というのは、決して高度なものではなかったものの、イタリアの光学会社にとってはかなりの挑戦だったと思われます。このような明るい玉はイタリアではおそらくこのレンズのみしか製造されていないと思います。ガウス型のレンズですが、意欲作であるなら結構クセも出そうなので、そのあたりを見ていきたいと思います。
うちから近いところにある目立つ建造物というと徳勝門です。周囲は取り囲むようにバスターミナルになっていて、ここから万里の長城、明十三陵などへ行く市バスに乗ることができます。この門は現在、貨幣博物館として利用されているということですが、興味がないということでこれまで行ったことがありませんでした。しかし門の方は登っても良いのではないかと思い、一応入って見に行ってみることにしました。
夜間のライトアップはとても綺麗なのですが、それを支えているのがこの照明群です。城壁の基部を照らします。1つ1つは中華風の柵で保護してありますが、そもそもこのエリアには進入できず、大きく柵で囲まれていますので城壁や照明には近づけません。この撮影も柵越しです。おそらく照明1つ1つの柵はデザインだろうと思います。洒落た趣向です。
描写は、本などの用紙でマット紙というのがありますが、その質感に似ているような気がします。布のような質感になるように思います。
入り口には「北京市古代銭币展覧館」と表記されていますが、これが徳勝門入り口です。写りは優しげで落ち着きがあり、ラテン的な雰囲気は感じられません。ガラスはフランスのソン・ベルチオ SOM Berthiotが供給していたようですので、光学設計もソン・ベルチオが手がけたのであればこの写りは納得できます。
景点(観光スポット)は必ず管理局のエリアがあります。一般客は入らないように表示してあります。
徳勝門の城内側にはかつて兵舎があったと思われ、そこが古銭の展示スペースになっています。正面入って左右に2つの展示棟がありますが、正面には土産屋と鑑定屋があります。20元で古銭を鑑定してくれます。中国はとにかく柵の多いところですが、域内に設置してある柵には「太平天国」と銘打たれた小銭が貼り付けてあります。
少し強めの太陽光が射しているので描写は少し眠い感じです。
ここから上へ登っていきます。リアリティがありながらも繊細なタッチでレンガの1つ1つを克明に描き分けています。
瓦が階段の方に出っ張っている部分は柵で保護してあります。兵器を運び込むこともあるこういう通路に瓦が飛び出しているのは不自然ですが、ともかくこういう構造になっています。そのお陰で古代の瓦をよく観察できます。しかし徳勝門は全部が復刻とも言われていますので、実際には古いものではなく、近代のものだろうと思います。柵に焦点が合っていますので、後方へのボケの様子がよくわかります。
ボケをさらに見ていきますと、ボケ始めは柔らかいのですが、どんどん奥に行くに従って硬質になっています。二線ボケが距離によって拡大され明確になっているからだと思われます。
箭楼と呼ばれる天守閣部分に到達します。西洋風外灯に違和感を感じないのは不思議な気がします。この描写は言われなければソン・ベルチオだと思ってしまいそうです。しかしソン・ベルチオの50mm f2は爆濃型の筈なので、こういう描写ではない筈です。そうであればこのガリレオの50mmもある意味貴重なものかもしれません。イタリア的な何かが感じられにくいのは残念です。性能の良いレンズは幾らでもあるので、多少悪くてもイタリア的な要素に拘って欲しかったと思います。この当時はこれで精一杯だったのだろうと思います。
屋内に入るとここは古代の戦争関係の展示がしてあることが案内されています。この門は明清代のものですから、その当時の攻防についてパネルで解説しています。門の名称を示す古代のプレートがありますが、現代の表記とは違い繁体字です。
こういう展示ではよくある模型です。ガラス越しの撮影なので幾分不明瞭です。距離は50cmぐらいです。
館内の電灯も中華風です。肉眼で見た印象では、こんなに古ぼけてはいません。
下に降りて寒波のためにまだ咲かない梅を撮影します。上の赤い花は1mぐらいで下の白い花は3mぐらいは離れていたと思います。この距離の違いが後方のボケ方に影響を与えています。少し離した方がナチュラルです。
このレンズに関しては、一旦イタリアというところから離れて考えた方が良さそうです。かといってソン・ベルチオについても論じたくはありませんが、この古典的美意識を見ればやはりパリの光学の伝統を引き継いだものと考えるしかないように思えます。ともかく上品なレンズであることは間違い有りません。