イタリアは職人の国なので、工業製品の多い国です。デザインにも優れていますので、その多くはファッション関係です。自国以外の工業製造を行う会社からデザインの受注を受けることも多く、携帯電話のデザインの多くはイタリア人が手がけていることが多いと聞きます。フェラーリという車でも有名ですが、車のような普通はオートメーション化された現場で作られるものでもハンドメイドに拘っています。カメラはどうでしょうか。現在はおそらく作っていないと思いますが、かつては戦前から製造していたようです。目立つのはやはりデザインの豊富さで、一方、個体差の大きさでも知られています。レンズのように精度の求められるものであれば結構バラバラのようで、そうであれば「イタリアレンズとは?」というテーマを検証する時に本当のことがわかるのか疑問があります。しかし個性のようなものは感じ取れると思いますので、そのあたりを中心に見ていきたいと思います。
上記の地図はイタリアの一部分ですが、クリックして拡大しますと詳細をご覧いただけます。イタリアの国土で一番大きな平原で、ミラノからベネチアに至るまでの広大な地域です。イタリアの工業というと多くはこのあたりで生産されるようです。古い工業製品としてはクレモナのバイオリンが挙げられますが、平原のほぼ中央に位置しています。光学製品もこの平原で作られていました。
20世紀初頭はベルリンのゲルツのガラスを購入してレンズを製造し、1926年ツァイスに改組された後はイエナのガラスを購入していたようです。ツァイスからテッサーのライセンスも購入し製造したりしていました。しかし、この頃のイタリアレンズというと極端に数が少ないのでよくわかっていません。戦後はパリのソン・ベルチオからガラスを購入し、カメラ本体と一緒に製造していました。戦後ドイツは供給が追いつかなかったと言われていますので、イタリアに廻す余裕はなかったのかもしれません。これら戦後のイタリア物も個体数が少ないですが、こちらは市場で時々見かけられます。戦後イタリアのレンズはテッサー型のスペックの低いものが多いですが、その中でオフィチーネ・ガリレオ Officine Galileo社は、意欲的な挑戦をしてテッサー型以外の構成も採用していました。
イタリア光学界の盟主とも言えるオフィチーネ・ガリレオのレンズから、安価なコンパクトカメラ フェラーニア Ferania社のコンドレッタ Condorettaに付けられていたテロギ Terog 40mm f4を外してライカマウントとしましたので、今から見ていきたいと思います。これは3群3枚のトリプレット型ですからテッサーが多いイタリアレンズとしては珍しいかもしれません。トリプレットのような残存収差が鍵になってくるレンズであれば、イタリア人の光学に対する考え方が明確になりやすいのではないかということでしっかり見ていきたいと思います。
本レンズは被写界深度が結構深いということと、前玉繰り出しによる距離合わせを活かす方向で距離計連動にはしてありません。この前玉の繰り出しですがデフォルトで40cmぐらいまで寄れます。最大限近づいて中国楽器を撮影しました。蛇皮の方を撮った2枚目はトリミングしていますが、上の棹を撮った方はしていません。周辺光量の減少が大きいことがわかります。収差も周辺は大きくなっていますが、そのことによって対象物が蕩けるような柔らかさで浮かび上がっています。古いトリプレット型には白濁が出やすいものがありますが、これもそうで、上記の2枚の例はアドビ Adobe フォトショップ Photoshopの自動コントラスト機能を使っています。以下は一切調整していないものを載せます。
近所の公園を見ますとピンクのベンチがあります。遊具がない公園なので子供用ではありません。使用目的を限定させていくかのような積極性が感じられます。何か暗くなってしまうような、やはりそこはトリプレットだということを思わせます。
ピントは確かに合っているのですが不明瞭です。特に周辺の特性は良いとは言えません。
本日新装開店した回転寿司・スシローで105円の大トロ狙いです。高司店、ついに2階建てになりました。混むので15:30頃にお邪魔します。元々スシローにはトロはありませんでした。当然です。100円の店なので。もう10年以上前ですが、できたばかりのスシローに近所のおじさんと来た時ですが、彼が「トロが食べたいのだが、あるかどうかきいてくれたまえ」と言いました。驚きました。「あるわけないやろ」と言ったら、彼は「問い合わせてもいないのにわからない」と言います。「いや、雰囲気でわかるやろ」と言いましたが、彼は紳士的且つ穏やかな口調で「あなたならだいじょうぶ」とも言います。どういう意味なんでしょう? 当時は旧式でインターホンを押して口頭で注文する形式でした。そこでボタンを押して「えー、トロあります?」と言いました。従業員は「は? もう一度お願いします」と言いました。着席エリアも当時は旧式の両面長いカウンターで、話していると周囲によく聞こえました。しかも夜10時ぐらいで人はそれほど多くなく、我々の会話の音声を聞いて店内は静まり返ってしまい、経緯をかたずを呑んで見守る人々で物音一つしなくなりました。「ほら、トロって言うのがあるでしょ」従業員がインターホン越しに確信に満ちて「ありません!」と言ったのが響き渡りました。「200円でもいい」と言いました。ないものはないので何を言っても無駄ですが、更に「では500円払わせて下さい」と言いました。それでもありませんが、お隣は「なかなか調子が良いね、幾らでも払うと言いなさい」と言いましたので、それも丸聞こえだった筈ですが、それでもインターホンで「幾らでも払う」と言いました。そうしたら支配人が来ました。それから、一ヶ月も経っていなかったと思います。またスシローに行ったら、突然200円のトロ一貫物が出ていたのです。(最初は100円一貫だったかもしれません。消費税もまだなかった筈です。)長いスシロー人生で一番驚いたのはこれでしょうね。長いおつき合いなので、新装開店には顔を出さないといけません。イタリアのレンズというので、明るいのかと思ったら陰気な描写ですが、スシローは今日開店したばかりなので、肉眼での確認ではピカピカです。
一番奥の席に着席します。すぐに大トロ5貫発注します。今日はキャンペーンなので普段210円の一貫物も105円です。しかも普段は中トロが210円なのです。
一番奥の座席ということで、厨房入り口が傍らにあります。のれんを見ると「吟味」とあります。自信の程が窺えます。このレンズはイタリア物というよりも、日本製と言った方が近いような感じはしないでもありません。淡い描写が幽玄な感じを醸し出しています。
こういうものを見てうっかり注文すると、大トロ狙いという本来の目的を見失いますので冷静さが求められます。もっとも、このような子供用の食品に惑わされることは決してないのです。しっかり見ますと写真右下隅にターゲットの掲載がきちんとあります。
食品ですので、このような暗い感じで写ってしまうレンズは不適当だったようです。
このレンズで撮るとミニチュアみたいに見えます。チープなのだろうと思いますが、品と独特の味はあると思います。
うどんもディスプレイ用のフィギュアに見えます。
玄関を出ると正面にこれが見えます。入る時ではなく、出る時に見えるのです。顧客の心理を代弁する意図でしょうか。大胆です。実に大胆です。
さて、ご招待いただいたので夜はフグに行きます。座敷には日本画が掲げられています。60年ぐらいの歴史があるということで、そういう店らしい雰囲気があります。
上品で暖かみのあるランプが点灯します。興味深いのは、入るとすぐに点灯しますが、出ると数十秒消えずに点灯したままというところです。人が通路で重ならないようにという配慮と思います。まず、日本にしかないだろうと思うようなさりげないサービスです。トリプレットで撮るとほのかな感じがして素材の持ち味が活きるように思います。
全部最短距離の40cmぐらいで撮ったものです。
別の居酒屋にいって、もう少し距離を開けて撮影したものです。素材の肌触りが綿のように変わってしまいます。
本コラム欄では他にも10以上のトリプレットをご覧いただいていますが、これは中でも特に性能の悪いもののように感じられます。それでも求心力は感じられます。周辺の光量落ちなどもありますが、真ん中の大事な部分は大切にしているような雰囲気があります。広角レンズのようにパースペクティブが広いので目測でも撮りやすいですし、作画意図に適っていれば非常に有用なレンズだろうと思います。