ライツ Leitz ヘクトール Hektor 135mm f4.5です。望遠を使ってスナップを撮るというのはこれまで考えたことがなかったのですが、まずは下の写真をご覧いただきます。
手前の女性が電話をしており、それよりもっと遠くに4人の男女がこちらを観察しています。135mmレンズでの撮影ですからかなりの距離です。これだけの人数の人が一斉に見ていると歩いていても気がつきます。それでこれを撮ってやろうという気になり距離を無限に合わせれば撮れますので、手前の女性とかその右に他にも人がいたのですが、その人らをダミーとして使い、これを狙ったふりをして一瞬で遠くの男女を撮っています。彼らは自分たちが射程に入っていることに気がついていません。30~50mの距離があるので、まさかはっきり写るとは思っていないのです。
この画の意味するところは、対象に対してこれだけ距離を空けられるなら自然に撮りたい場面でもスナップしやすいのではないかということです。それがこの目的でしたが、挑戦してみるもかなり難しい印象です。画面が小さ過ぎます。やはり135mmは人物撮影か静物撮影に限ります。ともかく幾らかは撮りましたので少しご覧いただこうと思います。
北京には雅宝路というロシア人街があります。ロシアと毛皮の交易を行う場所です。この表示もかなり距離を取らねばならず、これが意外とたいへんです。
屋外で撮っている分には普通で特に際立った特徴はありません。EPSON R-D1が出た時にパンフレットの広告写真は全部このレンズで撮ったというのはよく知られています。古いレンズですが非常に優秀です。
国貿にも行って撮影しましたが、遠くを撮ってもぜんぜん面白みがありません。記録写真みたいです。遠くでも野鳥の撮影のような使い方であれば良いと思います。
対象の的を絞ってわかりやすい画にするのが、このレンズの持ち味の活かし方になりそうです。しかし望遠レンズに関してはどれも同じことが言えると思います。ヘクトール135mmは、変なクセがなく、安心して使えるレンズということがわかりました。少なくとも他の焦点距離のヘクトールレンズのように妙なクセがあって撮影者を困らせることはなさそうです。
ここで比較しておりますヘクトールレンズの中でこの135mmが唯一のコーティングレンズです。そのため全体的に割と明瞭な画が得られています。色彩も独特の魅力を放つノンコートとは違い、より自然な感じがします。シリアルを見ますと47年製造の古いレンズではありますが、色彩感覚は60,70年代にまで至るライカレンズの独自の個性をすでに有しています。淡い色彩からパステル調に転じることもあり、地下鉄の車内など、このような環境で撮影するとパステル的な発色のノンコートレンズよりもよく写ります。1mちょっとの最短距離から走行中、息継ぎをほとんどせずにずっとしゃべっているこの人を椅子に座って撮りましたが、さすがに暗いし動きもあるのでブレてはいるものの、光の扱いを吟味すればポートレートでかなり使えるだろうと思わせるポテンシャルが感じられます。
テッサーはトリプレットの内、後玉を貼り合わせにして優れた設計となりましたが、ヘクトールの望遠系は中間貼り合わせになっています。貼り合わせ一箇所4枚玉というのは優秀なレンズの基本条件なのかもしれません。