無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




香箋G1専用カラーグレーディングLut「霜枝」UG1

2025.12.01

 シリーズ IのSpeed Panchroをライカ判で復刻した「香箋」 G1 50mm F2をLog規格で撮影、カラーグレーディングするための専用Lut(Look up Table)です。

 画像編集アプリ「Affinity」、動画編集アプリ「DaVinci Resolve」の無料化に伴い、パソコンさえあれば誰でもLutが当てられるようになりました。
 また、カメラの機体によってはLutを内蔵することもできるようになってきました。

香箋 G1 50mm f2




Log撮影の必要性

 モノクロ時代のSpeed Panchroは、カラーフィルムに対応していなかったので、Series IIが新たに設計されました。

 ですが我々が欲しいのは、Series Iの空気感でした。オリジナルは映画用のフォーマットでイメージサークルが小さいため、そのままガラスの直径を増して、オリジナル設計を変更せずに製造しました。それをカラーで使うのですから問題はあるとしても、それでもSeries IIにはしたくありませんでした。

 Series IとIIの球面収差図を比較しますと、色収差の量自体はともかく、枠で囲った部分で色滲みが出る傾向です。しかし英Cookeは、この形を崩したくなかったようで、Series IIでは色収差を減らしてカラー対応しています。描写が少し硬くなりますが、カラーフィルムに対しては画が引き締まって良かった筈です。しかしデジタルではSeries Iの方を求めたいところです。ですが、かなりパープルフリンジが出ていました。Leica M9ではかなり逆光でないと出ませんので大丈夫でしたが、SONY α7を使用しますとかなり問題がありました。機種によって差がありそうです。
Speed Panchroの色収差比較
 カラー撮影では、Log以外のピクチャー・プロファイルでかなりの紫が出ていました。そのため、Speed Panchro Series Iは、基本的にはモノクロ専用という原点に戻るのが正しいと言えます。そしてまた、アナログ専用とも言えます。カラーフィルムにパープルフリンジは無いからです。

 デジタル画像処理は米コダックが開発しました。その時に、色再現において理想的なのはアナログフィルムのプロセスであることが再確認され、これをデジタルでモデリング、Cineonと命名されました。特定のガンマ・カーブを適用して記録します。音の記録であるアナログレコードも似た方式で、再生時にイコライザで周波数バランスを戻しますが、Cineonは現像パッチを当てて色を復元していました。しかし静止画撮影においてはこの方式は使われず、光の情報をそのまま記録するRAWが使用されています。業務映画撮影の多くでは、Cineonを改良したLogが採用されています。

 そのためアナログのモデリングであるLogで撮影すれば、理想的な色の再現性が得られやすくなります。ピクチャー・プロファイルは、映画撮影機材に搭載されていたものを民生機に移したもので、映画動画を撮影するためのものですから、キノを本来の用途で使用することにもなります。LogはSONYのプロファイルでは、PP7~9に割り当てられています。ガンマカーブによって変調して画面全体がグレーで霞んだ、不明瞭な映像を記録してゆきます。PP8を使用しました。
G1にてLog撮影
 同じ場所を、jpegパッと出しで記録しますと、夕方の強い光を浴びて盛大な紫が出ています。各写真はクリック拡大して確認できます。
G1にてjpeg撮影
 PP8に「霜枝」UG1を当てて色を戻します。これでもまだ紫は出ているのですが、かなり正常になっています。
Logをカラーグレーディング
 Logの撮影に関しては露出が難しいとか様々なことが言われていますが、最近のファームウェアではデフォルト設定で問題ないと思います。Logのカラーグレーディングも難しいとされていますが、「霜枝」UG1を当てれば、後は明るさの微調整ぐらいで大丈夫です。




Log撮影できない場合

 Leica M9ではLog撮影はできませんが、jpegで撮影できているので、Logは必須ではありません。

 しかしLeica M9の場合、ブルー系の配色でパステル調となります。他機体でも同様の傾向と思われます。Angenieuxも少し青くなりますが、より控えめです。どうして青の方に振るのか、それは曇りの多いロンドンやパリの気候と関係がありそうです。灯りが仄かに灯る印象が出やすくなります。モノクロでも同じです。

 そのため、淡い青を活かしたいのですが、光の状況によっては出過ぎることもあります。その時に使えるLutがダウンロードできます。

 Ver.は機体ファームウェアのバージョンとなりますのでご参照下さい。

Leica M9「霜枝」UG1-M9 jpeg Ver.1.216 2025.12.02

 このような画像があったとします。これは青が強く出てしまった例です。
Leica M9にてjpeg撮影
 「霜枝」UG1-M9を適用します。黄色になり過ぎてエフェクト感が出ました。
「霜枝」UG1-M9を適用
 不透明度を50%に調整しました。ちょうど良いのかもしれませんが、これで魅力があるのかはわかりません。
不透明度を50%に調整
 20%に変更しました。この画の場合は、0~30%ぐらいが良いように思います。対象によって変わってきそうです。こういう画を見ると、Speed Panchroは映画用だから評価されていて、必ずしも静止画向けではないと思えます。
不透明度を20%に調整

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