無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




ダゴールの最終進化形 アヴィアー Aviar
「香箋」G13 50mm f2.5

2021.03.05

 テイラー・ボブソンのウェブサイトにアヴィアー Aviarについての説明があります。

 第一次世界大戦で空中偵察、航空写真撮影用レンズはツァイス製が使われていました。敵国の製品だったため英政府が民間から買い上げていました。しかしクックがアヴィアーの設計に成功し、王立写真協会より最高品質との評価を受けました。アヴィアーの技術は1924年に一般のカメラ用レンズに応用され、1962年まで愛用されました。

 クックは、設計師のウォーミシャムの名義でアヴィアー型とその派生をかなり多数公開しています。それらはすべて大判中判用なので我々が転用するとなるとガラスが薄くなりすぎて活用できるものではありませんが、英特許 GB537237に掲載の最後の設計、以下のリストでは一番下のもののみ使用可能です。これは1939年末に申請されたものですので、戦前から開発が続けられてきたものと思われます。そしてその後は特許申請が途絶えています。以下に発展の流れを順に示していますが、この経緯を見るに、39年の最後の設計がライカ判カメラに転用されたものの最初ではないかと思います。収差配置は明確に決まっているようで、どれも大きな差はありません。f2.5と指定されていてそれで出図していますが、実際はもう少し暗いです。
アヴィアーからエルノスターへ39年 50mm f2.5 ガラス配置図 アヴィアーからエルノスターへ39年 50mm f2.5 縦収差図


 第一次大戦時に設計されたもの、王立写真協会から評価を受けたものは、英特許 GB113590です。2種掲載されており、どちらも指定通りf4.5で、焦点距離は50mmにしてあります。いずれもガラスの厚みがないので大判用です。横収差図は掲載していませんが、ほぼ無収差、確かに航空写真で使えそうです。
アヴィアー17年の1 f4.5 ガラス配置図 アヴィアー17年の1 f4.5 縦収差図
アヴィアー17年の2 f4.5 ガラス配置図 アヴィアー17年の2 f4.5 縦収差図

 10年後の1928年に出願されたのは、英特許 GB312536でライカ判換算で40mm f4.5でした。画角は52度あります。比較のため焦点距離は50mmにしてあります。これがおそらく一般カメラに応用された24年のものだと思います。しかし40mmではなく中判用としてもう少し長くしていたと思われます。優秀ではありますが、航空写真用のような無収差ではありません。
アヴィアー28年 f4.5 ガラス配置図 アヴィアー28年 f4.5 縦収差図

 そしてまた大戦が始まると開発の必要性があったのか、2つの特許を出願しています。1つ目は1941年、英特許 GB549690です。ここに2つのデータがあり、これも40mmの想定で出しています。図は50mmです。f3.5と明るくなっています。航空写真で使うものと思われます。
アヴィアー41年の1 f3.5 ガラス配置図 アヴィアー41年の1 f3.5 縦収差図
アヴィアー41年の2 f3.5 ガラス配置図 アヴィアー41年の2 f3.5 縦収差図

 2つ目は1942年、英特許 GB561943です。ここにも2つのデータがあり、同じように40mmの想定、1つ目はf2.5、次がf3.5です。
アヴィアー42年の1 f2.5 ガラス配置図 アヴィアー42年の1 f2.5 縦収差図
アヴィアー42年の2 f3.5 ガラス配置図 アヴィアー42年の2 f3.5 縦収差図

 この2つの特許以外にそれに先立って趣向の異なるデータが39年12月に出願されています(英特許 GB537237)。5つの設計が記載されています。収差の比較のために全て50mmで出していますが、画角と口径は変化しています。 アヴィアーからエルノスター型に進化している過程を示したもののようです。

 f3.5 画角45度
アヴィアーからエルノスターへ39年 f3.5 画角45度 ガラス配置図 アヴィアーからエルノスターへ39年 f3.5 画角45度 縦収差図
 f3.5 画角52度
アヴィアーからエルノスターへ39年 f3.5 画角52度 ガラス配置図 アヴィアーからエルノスターへ39年 f3.5 画角52度 縦収差図
 f2.5 画角60度
アヴィアーからエルノスターへ39年 f2.5 画角60度1 ガラス配置図 アヴィアーからエルノスターへ39年 f2.5 画角60度1 縦収差図
 f2.5 画角60度で絞りを後ろに
アヴィアーからエルノスターへ39年 f2.5 画角60度2 ガラス配置図 アヴィアーからエルノスターへ39年 f2.5 画角60度2 縦収差図
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