無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




フランス映画鏡の原典 ステラー Stellor
「醉墨」F2 50mm f3.5

2015.11.20

 フランス映画というとカンヌ映画祭もあるし、割とさかんな印象があります。フランスはフランスで独自の個性がありますので、フランス映画を撮るのにドイツや英国のレンズでは彼らの感性に合わないということはあると思います。光学の最初期のフランスは先進国でしたが、やがて英国、次いでドイツの後塵を拝しツァイスのライセンス供与を受けて作ったりと先進性の面では低迷していました。それでもフランス人独自の感性を失うことなく、またベルチオ Berthiotなど大小様々なメーカーが命脈を保っていました。ベルチオが自前の設計で映画用レンズを出したのは1913年のことだったようです。その2種はどちらも「ステラー Stellor」と命名されていました。Goo辞書を参照しますとステラーとは「星のような、星形の、(映画・スポーツなどの)スターの、花形の、一流の、主要な」といった意味があります。まさにシネマ・スターを撮影するためのレンズだったのでしょう。フランス映画用レンズというとアンジェニュー Angénieuxとかキノプテック Kinoptikなど有名なものもありますが、ベルチオの設計師 チャーレ・アンリ・フロリアン Charles Henri Florianによる歴史的な2種はその原典的価値があります。見つかっても映画用ですからイメージサークルが小さ過ぎるとか難しい要素があるので復刻を考えるわけですが、特に検討したいのはスピーディック型 (米特許 US1168873)です。スピーディック型レンズ自体の発明はこれより10年ぐらい後なのでちょっと違うのでしょうけれども、より前の古典設計になると思います。

ステラー ガラス配置図 ステラー 縦収差図  画角は42度指定なので標準画角に僅かに及びませんがそこを45度で出しています。f3.5と当時としては明るいです。

 収差配置に関しては、このステラーは、キノ・プラズマートやパン・タッカー(いずれも独)と同種と言えますが、パリはツァイスに追いつこうとしていた時代があったのでその影響かもしれません。映画用としてはスピード・パンクロ(英)のようなものもあります。アンジェニューはどちらのタイプも作っていますが、どちらかというと英寄りです。この辺りがベルチオとアンジェニューに違いを感じさせる一因なのかもしれません。

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