バロック風の描写が得られるデルフト
市場ですごく見つかりにくいデルフトのレンズですが、標準画角帯で見つかるといずれもテッサーなのでどうしてもデルフトというとテッサーという認識があります。市場にはガウスもありますが、これはすべてレントゲン用でバックフォーカスが1mm以下であったりします。デルフトの設計師 ヨハネス・ベッカー Johannes Beckerが公開している特許はいずれもガウスに限られ、それにはもちろんレントゲン用のものもありますが、明らかにフォトグラフィー用のものも含まれていますので未製造の設計なのかもしれません。標準と広角があります。これらが作られていたとしても少数だったのは残念です。デルフトの考えではガウスは大口径であるべき、そうでなければテッサーで良しという規準があったように思えます。この大口径ガウスは高価になりますから、供給するチャンスを得られなかったのかもしれません。とりあえずまずはガウス標準レンズのデータを確認することに致します (米特許 US2985071)。図を見た印象では大型のように見えますが、実際にはライカであればフランジから前玉まで約3.6cmしかありません。50mm f1.3で、です。作れるのかな? だから市場に無いのかもしれません。理論上は作れますが。
デルフトの一般的収差配置は左巻き、左巻き、右巻きというもので、医療用を作らせてもここは長らく変えませんでした(収差が少ないのでわかりにくいですが)。だからレントゲン用レンズでもデルフトの個性は感じられる程です。球面収差を多めに、といってもズマリットの半分ぐらいですが、これは開放での撮影に配慮したものと思います。明るさも申し分ないし、これだけのレンズが製造されなかったのは残念です。かなりの傑作だと思います。