無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




ミュンヘンの2巨頭
シュタインハイルとローデンシュトック

ミュンヘン製レンズのリストと年代対照表 - 2012.07.09


 ドイツには重要な光学会社が幾つもあり、それらの重要性が光学会社の数によって埋没しなかった理由はそれぞれが特有の個性を持っていたからでした。ミュンヘンには特に多くの光学会社があってそれらを支えていたのは大企業だったシュタインハイルとローデンシュトックでした。小さな光学会社の思想を製品にして具体化したのは主にこういう大きな会社でした。彼らは後にシュナイダーとも提携して前進し、欧州レンズ芸術の結論と言えるものを提示しました。この3家にツァイスとライツを加えた5家はそれぞれ影響を与えながら発展しました。その後、日本製が勢力を増したので衰退しましたが、価格で後塵を拝したのは確かであるものの、それでもかつて最も栄光に満ちた時代のドイツレンズの芸術性が後代のレンズよりも劣っているということはありません。むしろ、これほど味わい深いものはもはや作られなくなってしまったと言っても良いと思います。ミュンヘン派の多くのレンズはコーティングがあってもせいぜい単層で、レンズ構成も簡潔なものですが、いずれも妖艶な色彩感覚を持っており、特に夜になると毒が染み出たような妖しげな表現を見せるあたりは他に変え難い強い求心力があります。美の極致の1つだと言っても過言ではありません。そのミュンヘン派のレンズを探すために必要なリストを以下に列挙します。


シュタインハイル・レンズリスト

 シュタインハイルのレンズ・ラインナップの特徴は、ライカマウント(L39)のリストが特殊だということです。これについてはすでに欧米ライカマウント・ノンライツレンズリストで扱っていますので、ここではそのライカシリーズも含めて、ラインナップの全体を見渡したいと思います。

type 0: クローム、手動絞り
type I: クローム或ブラック、ヘリコイドリングに突起
type I auto: クロームとブラック、ヘリコイドリングに突起
type preII: ゼブラ、ヘリコイドリングに突起、自動絞り
type II: ゼブラ、自動絞り、一部Edixa銘有り
type IIb: IIと同じ、ヘリコイドリングが平坦

M42マウント
35/4.5 Culmigon (I クローム、手動)
35/3.5 Auto-Culmigon (IIb)
35/2.8 Auto-Quinaron (II)
Quinaron Quinaron
40/3.5 Cassaron (0)
50/2.8 Auto-Cassaron (preII,IIb)
50/2.8 Cassarit (I クローム, II, 手動自動変更可)
Cassarit Cassarit
50/2.8 Cassar S (0 I クローム)
50/2.8 Culminar (0 I クローム)
55/1.9 Quinon (I クローム、セミオート)
55/1.9 Auto-Quinon (II)
75/1.5 Culminon (0)
85/2.8 Culminar (0)
Culminar 85mm f2.8 Culminar 85mm f2.8
100/3.5 Auto-Quinar (II)
100/3.5 Cassarit (IIb)
105/3.8 Cassar (0)
Cassar Cassar
105/4.5 Cassar
135/2.8 Quinar (I)
Quinar 135mm f2.8 Quinar 135mm f2.8
135/2.8 Auto-TeleQuinar (II)
135/3.5 Auto-TeleQuinar (II)
135/4.5 Culminar (0)
Culminar 135mm f4.5 Culminar 135mm f4.5
135/4.5 Cassarit (I black)、ヘッドを外すとM39マウント
200/4.5 TeleQuinar (I クローム)
TeleQuinar 200,300mm f4.5 TeleQuinar 200,300mm f4.5
300/4.5 TeleQuinar (I black)

EXAマウント
35/2.8 Auto-Quinar (I auto)
40/3.5 Cassaron (0)
55/1.9 Auto-Quinon (I auto)
100/3.5 Auto-Quinar (I auto)
135/3.5 Auto-TeleQuinar (I auto)
135/2.8 Auto-TeleQuinar (II)
200/4.5 TeleQuinar (I black)
300/4.5 TeleQuinar (I black)

マクロ(ゼブラのみ、EXAとM42マウント)
35/2.8 Auto-MacroQuinaron
55/1.9 Auto-MacroQuinon
100/2.8 Auto-MacroQuinar
MacroQuinar 100mm f2.8 MacroQuinar 100mm f2.8
135/2.8 Auto-MacroTeleQuinar

DKLマウント(クロームのみ)
35/4.5 Culmigon
50/2.8 Culminar
50/1.9 Quinon EDIXA/BRAUN/ILOCA銘有

L39マウント(クロームのみ)
35/4.5 Orthostigmat, 距離調節摘みが2つ,外観から別名「ミッキーマウス」
Orthostigmat 35mm f4.5 Orthostigmat 35mm f4.5
45/2.8 Cassarit プロトタイプ
50/2 Quinon, 3群6枚 ゾナー型
Quinar 50mm f2 L39 Quinon 50mm f2 L39
50/2 Noctar プロトタイプ
50/2.8 Triplar プロトタイプ
75/1.5 Selenar 恐らく製造は10本のみ
85/2.8 Culminar
85/3.5 Quinar
Quinar 85,100mm f3.5 Quinar 85,100mm f3.5
135/4.5 Culminar
135/4.5 Triplar
Triplar Triplar

M39マウント(クロームのみ)
35/4.5 Orthostigmat
35/2.8 Culminar
45/2.8 Cassarit
50/2.8 Cassarit
50/2.8 Culminar
50/2 Quinon
85/2.8 Culminar
85/3.5 Quinar
135/4.5 Culminar
135/3.5 TeleQuinar
TeleQuinar 135mm f3.5 TeleQuinar 135mm f3.5
Culminar 135/4.5
シュタインハイルのカタログとレンズ構成図

 シュタインハイルのシリアルナンバーは非常に不明確で研究者のよって調査された2種類のリストがあります。

シリアルナンバー
1930 50,000
1931 100,000
1935 300,000 300,000
1939 480,000
1940 500,000
1950 650,000 700,000
1955 1,000,000 1,500,000
1957 2,000,000
1960 2,000,000
1963 2,260,000
1967 2,400,000


ローデンシュトック・レンズリスト

 ローデンシュトックに比べてシュタインハイルの方が幾分収差が大きく採られている傾向があるので、レンズ特有の独特の味わいを楽しみたい場合はシュタインハイルの方がおもしろい筈ですが、どうしてか、ローデンシュトックの魅力にも抗し難いものがあります。ローデンシュトックは大判用レンズも作っており(シュタインハイルにも大判レンズはありますけれど)技術が高いので小さいレンズを作っても非常に優秀で現代でも十分に通用しますが、だからといって没個性ということは全くありません。本当に洗練されたものの美しさとはこういうものなのか、と気付かされます。

  • Rapid Aplanat ラピッド・レクチリニア型
      Hemi-Anastigmat
      Perigon


  • Heligonal Rapid Aplanatを引き継いで後に2+4に変更。やがて名称をHelogonalに変更

  • Heligonal ラピッド・レクチリニア型 Heligonal ラピッド・レクチリニア型

    Helogonal Helogonal

    Pantogonal
    Pantogonal Pantogonal

  • Eikonar ダゴール型
      Eustigmat ダイアーリト型
      Eurynar ダイアーリト型
      Terogonal Anastigmat
      Sironar


  • Eurygonal コリニア型

  • Heligonal Eurygonal

  • Eurynar 1909年シリアル50,000番から発売され、大戦の始まる1914年までの同社のメジャーレンズで4群4枚のダイアーリト型か4枚ガウス
      Eustigmat (ダイアーリト型)

  • Eurynar ダイアーリト型 Eurynar ダイアーリト型

    Eurynar 4枚ガウス型 Eurynar 4枚ガウス型

  • Eurygon トリプレット型 ポートレートレンズ

  • Eurygon Eurygon

      Euron トリプレット型 シネ用
      Erinar トリプレット型 シネ用


  • Trinar トリプレット型

  • Trinar Trinar

      Trinarex おそらく新しいガラスで改良したもの
      Geronar
      Graflar

  • Extra Rapid Portrait ペッツバール型


  • Ysar テッサー型
      Ysaron

  • Ysaron Ysaron

      Ysarex
      Robra Anastigmat
      Zeconar

  • Heligon ダブルガウス型
      Lumar
      Long Heligon

  • Long Heligon Long Heligon

  • Grandagon アンギュロン型

  • Grandagon Grandagon

      ApoGraphagon オルソメター型

  • Perigon ペリスコープ型
      Periscop 安価版
      Bistigmat

  • Ronar 恐らく1920年代以降に色んな構成で使われた銘
      Ronar cine 4群4枚 エルノスター型
      Yronar ダイアーリト型

  • Yronar Yronar

      ApoRonar ダイアーリト型
      Rodagon オルソメター型
      Rogonar トリプレット型
      Rogonar S テッサー型
      Rotelar テレフォト型
    Rotelar Rotelar

      Reomar: シュナイダーと共同開発のトリプレット

  • Imagon レンコン状のフィルターを前面に搭載し、それによってソフト効果を得る

  • Imagon Imagon

  • プロジェクター用
      Motar   ペッツバール型
      Splendon  ペッツバール型
      Epitritar  トリプレット型
      Splendar  トリプレット型
      Kinemar  エルノスター型

  •  ローデンシュトックの大雑把なシリアルリストです。

    シリアルナンバー
    1910 50,000
    1920 200,000
    1930 400,000
    1935 700,000
    1938 900,000
    1940 950,000
    1945 2,000,000
    1952 2,500,000
    1954 3,000,000
    1957 4,000,000
    1961 5,000,000
    1966 6,000,000
    1971 7,000,000
    1973 8,000,000
    1974 9,000,000
    1977 9,500,000
    1979 10,000,000
    1984 10,500,000
    1991 11,000,000
    1993 11,500,000
    1994 11,231,713
    1995 11,294,073
    1996 11,358,165
    1997 11,407,513
    1998 11,468,541
    1999 11,521,123
    2000 11,588,264
    2001 11,649,679
    2002 11,678,274
    2003 11,724,136
    2004 11,767,376
    2005 11,805,455
    2006 11,860,241
    2007 11,926,199
    2008 11,944,338

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