無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




ズミタール50mmをモノクロフィルムで試してみる

ズミタール50mmをモノクロフィルムで確認する - 2013.05.13

 ズミタールはベレクにとって戦前の最終深化形と言ってもいいのかもしれません。少なくともご本人はそう思っていた可能性は高いと思います。しかし鑑賞姿勢としては、ズミタール以前の標準レンズはいずれもそれぞれ個性があって完成されてもいるので、ズミタールはズミタールで単体のものとして見るのが正しいように思います。ズマリットも加えると全5種ですが、ベレクの幾つかの結論の中の1つとしてズミタールを鑑賞することに十分意義はあると思います。それでモノクロフィルムで撮影してみますと、デジタルで撮影した時と同様、その他の4種とは違った描写を確認できました。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 钟楼  北京の中心には(その他の古都と同じく)かつて時刻を知らせるために使われていた塔が建っています。太鼓と鐘の組み合わせで時刻を知らせますが、それぞれ塔1棟ずつ建てられており、鼓楼,钟楼と言います。鼓楼は外観が整備されていますが、钟楼は古い状態が維持されていますので、通し券を買うと比較して見ることができそうです。まだ入ったことはありませんが、今回は入域せず周辺を散策することにします。写真は钟楼の方です。手前の瓦に焦点が合っていますので、本体の方はもっとボケるかと思っていましたが、この距離にしては意外とはっきりしています。ボケの描写は趣があると思います。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 象棋  天気の良い日でしたので、f2を維持するのは難しく、これだけf4で撮影してみました。それでもシャッターは最高速の1/1000でした。f2では周辺画像が劣化しますが、f4まで絞ると明らかに安定感を増しています。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 三輪車に乗る子供  こういう広い場所は太陽光がいっぱい当たっているので、露出の超過が顕著です。そうすると白に冴えがなくなります。今1つ立体感にも欠けるような気がします。おばあさんが孫の三輪車に紐を付けて引っ張っています。紐は結構長いので、この写真で見た感じよりも距離は離れています。そういう遠近感も失っているように思います。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 古典中華風の一般家屋  下に車のバンパーが写り込んで、ボケが酷く見苦しかったのでこれはトリミングした上でご覧いただきます。玄関あたりが実際には中央になります。周辺が流れているのが確認できると思います。ツァイスレンズではこういうことはほとんどの場合ありませんが、それでもライツのレンズを選択する人の意図はこの画から読み取れるでしょうか。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 通知を読む通行人  窓がない長い壁があって地域の掲示板として使われています。停電や断水の連絡はこういうところを確認しておかないと突然直面することになります。災害義援金についてや、家庭菜園を教える教室の開講など何でも張り出されます。この通知は紳士にとって重要度の高いものであったらしく、杖でペーパーを押えつつ、しばらく眺めています。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 石造りの重厚な入口  石組は中華風というよりも西洋の様式に見えますが、ミスマッチな提灯がいろんな想像をかき立てます。かつて租界があった海沿いの都市ではこういう風景は珍しくありませんが、北京ではどうでしょうか。石の質感と苔の描写が調和を以て表現されています。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 住宅街の回廊  住宅街の中でこのような細いまっすぐな道はなかなか見つけられません。もっと複雑に入り組んで路地裏の雰囲気があるのが普通です。両側の建物を見ると年式は新しいもののようです。突き当たりには椅子と机を出して何かやっている近所のおじさんたちがいます。画一的な場所からも生活臭が感じられるのはそのためでしょう。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 干した洗濯物  これも新しい建物です。まだ建ったばかりというぐらいの新築と言っても良いぐらいのものですが、使っているレンガはすでにお馴染です。景観保護のために指定されているものと思います。干してあるものは景観とは関係ありませんが、上海あたりに行くと絶対必要で、高いところに洗濯がたくさん干してあると上海の雰囲気がします。北京の古い住宅は中庭を設けるので人目につくところに洗濯を干す習慣はあまりありません。それでも時々見受けられます。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 翰古軒  书法(書道)の店です。周囲は保護されている地域とは言え、それでも修復を繰り返しながら新しくなっていきます。その中で頑固に朽ちつつある看板を掲げています。こういうものは急速に失われていっています。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 火鼎  これは火のところが赤で、鼎の部分が白です。火鍋の店だろうと思います。興味深いデザインだと思います。しかしモノクロで撮影するとあまり冴えません。撮影に当たっては極力色を省いて物事を見る必要があります。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 cafesambal  これは夜になると中に電気が点くのだと思います。sambaiとは何でしょうか。wikiで調べますとチリソースの一種のようです。だけど料理屋ではなくカフェのようです。実態については近所ですので、今度確認しておきたいと思います。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 カフェの中庭  これは門口が暗かったので、適正露出と思われる程よい感じです。植木より奥のボケの雰囲気が上品で良いと思います。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 ライオンの意匠 ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 ブリキ作りの大きな入口  完全に真っ正面ではありませんが、比較的奥行きのないものを撮影してみました。どちらも色は真っ赤だったと思います。拡大して見ますとやはり周辺は画像が劣化しています。しかしこの雰囲気はポートレートには使えると思います。ライオンの意匠や小さな錠を中央に置いて引き立てている1つの要素に周辺画質の影響が良い方向に作用していることはあると思います。とはいえ、このような撮影では絞るのが必須だろうと思います。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 イタリアレストランの看板  以下はすべて適正絞りだったようなので、白が抜けて画像全体も締まっています。これはスクラップをうまく利用したイタリアレストランの看板です。19:00閉店はいささか早過ぎるように思いますがどうなのでしょうか。劇場のような雰囲気だと思っていたら、中を見ると本当に舞台が併設されていました。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 中華風の明かり  これは逆光でした。フードは付けていたもののかなり太陽の正面に近かったので効果はあまりなかったと思います。駄目だろうと思っていたのですが、意外と問題はなかったようです。それにオールドライカらしい表現が撮れたと思います。トーンの表現の仕方がいかにもライカです。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 昼寝する人力車の人夫  フィルムもなくなってきたようなので、疲れてきたし、そろそろ引き上げようかと思っていたら、もっと疲れた人がいました。これは一回運転させてもらったことがあるのですが、結構体力が要ります。見た目より何倍も重労働なのは間違いありません。トークも必要です。夕方昼寝して夜も眠れるのでしょう。まるでトリプレットのような感じもあります。

ライツ Leitz ズミタール Summitar 50mm f2 閑散とした食堂  ワンタン麺の店です。こういう閑散とした時間に来るのは、昼や夕方は混んで食べられないからです。鼓楼脇にある非常に有名な店です。窓から差し込んだ光がほんのりした雰囲気で良い感じです。

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