次はライカの標準50mmレンズ、第三のメジャーリリースだったズマールです。これは戦前にはかなり評判の良かったレンズでしたが、エルマーやズミタールといった成功したレンズが他にもある上、ベレクの後を引き継いだ設計師の仕事も素晴らしく、ライカの系譜の中でそれほど重要なレンズとは見なされていません。とはいえ、現代では安価でなかなか良いレンズですので、ライカを使うのに最初にエルマーを選ばないのであれば、これを代わりに使うのは良い選択です。
主な特徴としては、線が太いということです。これはフィルムの有効期限が切れて相当経っているものなので、新しいものであればもう少し繊細なトーンが出たと思います。確かに線は太いですが、階調の豊かさも持ち合わせています。太っちょだけど以外と小回りが効く感じがします。
暗い部分と明るい部分が混在した撮影には好ましくない構図で、全体の構成としてはすでに崩壊していると見なしてよい画ですが、中央の看板の繊細なタッチが本レンズのポテンシャルを明らかにしていると思えます。
これは全体的にバランスの取れた画なので、グレーゾーンの表現を確認できます。特に言うことはありませんが、描写が甘い感じがあります。f2ということで被写界深度もあまりありませんから、その為もありますが、それにしても少し泳いだ感じはあります。
奥の方へ至るボケを確認してみようということで撮ってみた一枚ですが、特に問題はありません。綺麗にボケていると思います。しかしボケまで線が太い感じがあります。
これだけ距離を離しても右奥に見えるアルファベットの表記は読み取れます。そして肥えた感じがあります。この個性をうまく使った撮影シーンを見い出したいところです。
近所の家族が買い物をしています。最適な構図を得るために焦りがあったのか、焦点は奥のサングラスの紳士のあたりに逸れてしまっています。それでも光量がリッチだったため、それなりには写っています。
スナップ撮影において重要なのは何でしょうか。回答はここに書いてありました。しっかり鍛えておれば、ピントを外すこともなかったと思います。
提灯は明る過ぎました。周囲も暗過ぎました。それで何も責められません。ただ1つ、引き戸のディテールはこのレンズの味わいを端的に示していると思います。