世界で始めて設計された風景用レンズ
幾何学計算を用いて世界で初めてレンズを設計したのはペッツバール Petzvalでした。一般に「ペッツバール」というと肖像用レンズですが、それは彼が設計を完了した後にすぐ売り出されたのが肖像用だったからで、その時にもう一つ、風景用のオルソスコープ Orthoscopeも設計していました。これはだいぶん経ってから販売されましたが、何事も"最初の発明"というのは優れているものが多いし、ペッツバール肖像用もそうだったので、風景用があるならそれにも興味がそそられます。どんなものか、確認しておきたいと思います。
データは、エミール・トラオレ Emile Turriere著 Optique Industrielle No.77とロアー Rohr著 Theorie und Geschichte des Photographischen Objektivs 250頁に載せられており、どちらも同じものです。口径はf8.1です。焦点距離は50mmに変えています。
当時はかなり人気が出て売れたようです。売り出しはペッツバール自身だったようですが、この成功を見て設計を受取っていたことを思い出したフォクトレンダーも売り出し、一時期結構出たらしいですが、よく見ると歪曲が多いという理由で素早く消えていったとキングスレークの本に書いてあります。出た時と同じ速さで消えていったと書いてあります。
そんなに画角を欲張らなければ大丈夫だと思いますが、本質的な問題は歪曲ではなく、単に飽きたのではないかと思います。魅力的なレンズという雰囲気は収差図からは感じられません。実際に製造されたものは下図のように絞りを最後尾に配置していました。このようにすると歪曲が急増します。そのため歪曲の問題があったのも確かです。
戻る