超広角を歪みなく撮影できる驚異のレンズ
本レンズは誰でも見るからに製造困難なものであることがすぐにわかります。出目金のようなほぼ球体のレンズが中央に据えられているからです。今どき何でも機械化されている現代に、ただ球体というだけで作れないのは不思議ですが、製造を打診すると「職人が手で磨く必要がある。当然個体差はある」と言われて驚きます。球体にするのであればプラスチックレンズをプレスで作る方がはるかに多いと思いますが、小店ではプラスチックレンズは使いたいと思いません。一応問い合わせますと、プラスチックは型が非常に高価なので大量生産でなければ合わないと言われました。同じ理由でプラスチックを使うアスフェリカルは使えません。アスフェリカルはガラスもあるらしいですが、いずれにしても小店では使いたいと思っていません。
ホロゴン Hologonは、1970年4月13日にツァイス Zeissのエアハルト・グラッツェル Erhard Glatzelによって特許が出願されています (米特許 US3661447)。この頃ツァイスによって、長野県のヤシカとコンタックス製造の提携について話し合われた時に、レンズを製造する富岡光学 (小店のレンズは旧冨岡の方々に作っていただいており、当時コンタックスの鏡胴を作っていた方もおられます) にコンタックスレンズのラインナップが示され、その中にホロゴンも含められていたと言われています。しかし何らかの理由で、ホロゴンはドイツ生産となり、日本で作られることはありませんでした。今でも球体、或いはそれに近いものは製造を断られますので、製造可能な会社を見いだすのは難しいと思います。
ツァイスの特許にはホロゴンの計算方法も解説されており、3通りのデータが載っていますので全部確認します。1つ目は12.5mm f8です。焦点距離は全て50mmに変更して出図します。優秀性はまさに「神の目」「神の瞳」と言われるだけのことはあります。人間の目の方が優秀ですが。
次に2例目の15mm f5.6です。
さらに3例目、21mm f8です。特性が若干劣っているとはいえ、バックフォーカスが長いので使いやすそうです。
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