ベレクの集大成的大口径レンズ
戦前の光学会社にとって大口径というのはかなり難しい挑戦でした。性能の良い大口径が作れる設計師は数える程しかおらず、ライツはシュナイダーの提供を受けていました。しかし自社でも努力を続け、ヘクトール 73mmではf1.9でしたが、さらにズマール Summar 90mmでf1.5に達しました。製造は戦中になりドイツ軍に納入できた数百本に限られました (英特許 GB481710、米特許 US2171641、仏特許 FR822807)。後にズミクロンで採用される空気レンズが入っているなどかなりの意欲作ですが、実際に確認するとf1.5では目視で明らかにギリギリ、実際の製造では若干暗くなっていた筈です(正確にはf1.6627)。戦後に製造されたズマレックス summarex 85mm f1.5は新種ガラスを使っているなどと言われていますが、しかしこの特許データですでに使われているし、レンズ構成も全く同じ、ガラスの直径も同じ、描写を見ると特許データと同じ、85mmは新設計ではなかったのではないかと思います。そのため、約f1.5であって、正確な数値を示していたわけではなかったのではないかと思います。コーティングして明るくなったから大丈夫と思った可能性もあります。
まずは焦点距離85mmで出してみました。
収差図を見るとベレクが本で説明しているような配置、ライカの特徴的な配置です。球面収差図がヘクトール 73mmに似ています。しかしヘクトールとはレンズ構成の違いで描写が変わってきそうです。この球面収差が波打つ感じからの反転は色彩がパステルとなり、特許データがないので推測ですがハッセルブラッドはこれをもっとアンダーにして反転も強めています。これを50mmに変更して画角も増し、製造面で妥当な口径に収めてみます。
十分イケる、魅力的と思うのですが、これで50mmにすると口径をアバウトにしにくいし、玉も小型になってくるので曲率も極端になる、そこでこの重量級の構成なので高価になり過ぎるのが1つと、ここまで手厚く作っているのは肖像用だから、当時はまだ写真館も全盛だったし、大判との比較にもなるので、それなりに対抗できる質も求められていたところで作られたものなのではないかと思います。しかし現代の感覚だと、この描写で50mmは魅力があります。
戻る