無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業




戦中ライツの巨砲 ズマレックス summarex
「清麗」L2 60mm f1.5

2022.10.05

ベレクの集大成的大口径レンズ

 戦前の光学会社にとって大口径というのはかなり難しい挑戦でした。性能の良い大口径が作れる設計師は数える程しかおらず、ライツはシュナイダーの提供を受けていました。しかし自社でも努力を続け、ヘクトール 73mmではf1.9でしたが、さらにズマール Summar 90mmでf1.5に達しました。製造は戦中になりドイツ軍に納入できた数百本に限られました (英特許 GB481710、米特許 US2171641、仏特許 FR822807)。後にズミクロンで採用される空気レンズが入っているなどかなりの意欲作ですが、実際に確認するとf1.5では目視で明らかにギリギリ、実際の製造では若干暗くなっていた筈です(正確にはf1.6627)。戦後に製造されたズマレックス summarex 85mm f1.5は新種ガラスを使っているなどと言われていますが、しかしこの特許データですでに使われているし、レンズ構成も全く同じ、ガラスの直径も同じ、描写を見ると特許データと同じ、85mmは新設計ではなかったのではないかと思います。そのため、約f1.5であって、正確な数値を示していたわけではなかったのではないかと思います。昔のことなので、コーティングで明るくなったから大丈夫と思った可能性もあります。

ズマレックス 85mm ガラス配置図  まずは焦点距離85mmで出してみました。

ズマレックス 85mm 縦収差図 ズマレックス 85mm 横収差図  収差図を見るとベレクが本で説明しているような配置、ライカの特徴的な配置です。球面収差図がヘクトール 73mmに似ています。しかしヘクトールとはレンズ構成の違いで描写が変わってきそうです。この球面収差が波打つ感じからの反転は色彩がパステルとなり、特許データがないので推測ですがハッセルブラッドはこれをもっとアンダーにして反転も強めています。これを60mmに変更して画角も増し、製造面で妥当な口径に収めてみます。

ズマレックス 60mm ガラス配置図 ズマレックス 60mm 縦収差図 ズマレックス 60mm 横収差図  f1.6で焦点距離は60mmです。これ以上、短くするのは難しいように思います。85mmは肖像用に特化される傾向となるので、かといって標準レンズにしてしまうのも違う感があるので、60mmだとちょうど良いかもしれません。

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