続いてまたスチール用レンズですが、パリのルヴァロワ光学精機社(OPL)によって戦後すぐに作られたフォカ FOCAというカメラに付いていたオプラー Oplar 50mm f3.5をご覧いただきます。フォカに付ける交換レンズはすべてオプラーと呼ばれ、50mmにも幾つか明るさが異なるものがありますがf3.5はライカではエルマーに相当するものになります。テッサー型です。フォカはレンジファインダーカメラではありますが、ライカマウントと互換性がないのでマウントは改造する必要があります。比較的簡単な改造を経て使えるようになりましたので、早速、時代劇の撮影で使うために作られたという旧北京城南端の「大観園」に赴き撮影してみます。
背景のボケは決して奇麗とは言えませんが、格子とその隙間から垣間見える遠景の調和が良い感じです。
割と距離の近いもの、そして赤いものを撮っています。赤い部分を見るとフレアのような白い、フランスレンズ独特の膜があります。
光の強度が異なりますが、衣服の雰囲気の出方を見てみます。フランスレンズらしい繊細な捉え方です。
フランスレンズはこういう硬いもののトーンが秀逸です。柔らかく繊細に穏やかに写っていますが、これはドイツのどのレンズとも違う特徴です。
中距離で人物を交えた画を撮ってみます。対象は特に際立つわけでもなく、全体に溶け込んでいます。
細かいものが多い画ですが、奇麗に撮れています。とりわけ、竹林の中に廻っている複雑に反射した光を繊細に写し取っています。
中国の庭園はどこに行っても蓮があります。目立つ植物はほとんど蓮しかないと言っていいぐらいです。風景や建物によく合いますので欠かすことのできないパーツと認識されているようです。他のレンズとの比較のために1枚押さえておきます。
遠景も良い感じで撮れます。オプラーを見る前はベルチオを見てきましたが、同じベルチオでも個性が幾つもありました。それで"ベルチオ"と一言で言ってもどんな個性を指すのか的が絞れませんが、その中で複合的に見てこのオプラーも同系統と見なして良いのかもしれません。ルヴァロワとベルチオは後に合併しましたので、以前より何らかの関係があった可能性もあり、そうであればオプラーはベルチオのOEMという可能性もあります。それぐらい近いものを感じます。少なくとも技術者の交流はあったのかもしれません。しかしそれでも収差のチューニングはルヴァロワの考えが折り込まれているようです。