次にライツ Leitz エルマー Elmar 105mm f6.3を見てみます。コーティングはありません。
望遠はどうしても長くなるので荷物になりますが、エルマーの105mmは別名「マウントエルマー」と呼ばれ、外観が山のような円錐型ということと、登山の時にも手軽に持っていける小型レンズということでそのように名付けられています。望遠レンズとしては非常にコンパクトでその名の通りハイキング携行向きです。f値がかなり暗いですが、屋外で撮影する分には全く問題ありませんし、開放でもinfから25mぐらいまで測距の必要がないので、すぐにシャッターが切れる、動物など動くものでも逃さない、しかも開放絞りの味が楽しめると、かなり良いところを突いたスペックだろうと思います。それでも世間からは評価されなかったのか、製造個数の少ないレンズで4,000本にも達しませんでした。最短距離が3mですし、使用範囲が限定されているように思えます。自然、体育関係の用途を想定した専用設計になっているようです。そこで百鳥園に行ってみることにします。
百鳥園は大きな公園の一角にあります。大きいと言ってもすごく細長い公園です。1000年程昔の元王朝時代の城壁と堀がまだ残っていて、そこは今では全域が公園になっています。「元大都城垣遺址公園」と呼ばれています。無料ですが、よく整備されています。この一部にある筈ですが・・・幾ら探しても見つかりません。近所の人に聞いても「知らない」と言います。鳥は鳩と雀ぐらいしかいません。しょうがないのでこの公園内で撮影することにしました。
開放値がf6.3なのに、パースペクティブが狭いです。近いものを撮る時には結構神経を使います。それで3m以上というスペックになっているのかもしれません。135mmの方が条件が厳しい筈ですが、それより撮りにくい感じがあります。
花を撮ったらピントを外しました。かなり手前になってしまいました。後ボケの特徴が確認できます。
鳩が冷たい石の上で休憩中です。背景はチリチリした葉ですが、あまり奇麗には見えません。もしコーティング有りのレンズであれば、もう少し見栄えが良かった筈です。太陽の光の影響を受けるこのような場所では微妙なフレアを伴いますので、複雑な構成要素を含んだ画は苦手です。
日陰であれば、発色、コントラスト共に申し分ありません。
撮影する立ち位置でうまく木陰に入ると、レンズ内で太陽光の回折が発生しませんから、写りは安定します。気を遣いますがしかし、この写真よりも若干のフレアを伴った方がライカらしい柔らかさはあるかもしれません。
同じ対象を写していますが、印象がずいぶん違います。上はエルマー105mm専用フードを付けています。下は外しています。斜め前方から太陽を受ける条件の悪い環境ですが、105mmであれば、それも専用フードであれば幾らか長いので、かなりの効果があります。フードがなければ色まで褪せてしまいます。しかしこういう効果が欲しいこともあるかもしれません。この例はトリミングしていますので、効果はいささかデフォルメ気味です。実際には、もう少し目立たない差です。
フードを付けている限りは非常に優秀なレンズです。たいへん端正な写りです。一歩控えた品もあります。またノンコートでなければ、こういう質感が出にくいので、ノンコート派がデメリットを省みずに使うのはこれが理由です。しかし非常に微妙な相違です。この微妙な差が大きかったりもするのですが。
もっと遠いところを撮ってみます。テッサー型レンズの特徴的な部分がよく出た画です。クセが全くありません。水面の様子、枝垂れる樹木の柔らかな感じもよく出ています。