無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

ロモへの憧憬「湖楼」X1 32mm f2.4

2012.01.30

ロモ LC-Aは対象を覘き見て四角に切り取るレンズを付けている

 ロモの名機 LC-Aのレンズ Minitar-1と同じような特性のレンズを作ります。主な特徴としては独特な湾曲のあるレンズです。

 ソ連・サンクトペテルブルグ(旧レニングラード)にある工業総合メーカーだったロモ LOMO社は国家的な政策によりコシナのカメラのコピー量産に着手し、ついに1983年にLC-Aを販売開始しました。やがて冷戦が終わり、1990年、ウィーンのある学生がロシアを旅行した時にLC-Aを持ち帰り撮影して写真展を開きました。これがロモ協会(ロモグラフィー)の設立経緯です。いまや伝説です。

ロモ LC-A
 ロモ LOMO LC-Aはアナログのカメラで、デジタル化はされていません。どうしてでしょうか? それはおそらくロモの特殊な現像方法と関係があります。ロモはポジフィルムを使います。これをネガフィルムに使う現像液で処理します。これを「クロスプロセス」と言います。このようにすることによってロモ独特の表現を作り出しています。しかし、現在ではどんなカメラで撮ってもパソコンのソフトを使って "ロモ風" の写真が作れます。下の写真は、アグファのネガフィルム(ここではポジを使っていない)を使ってロシア製の(現在では中国に生産が移っている)LC-Aを使って撮った例です。これをApple Apertureの「トイカメラ」タブを1クリックして作ったのが2枚目の写真です。クロスプロセスの手法で作った写真はこんな感じになるということです。(この種類のソフトでおそらく最も有名なのはROUNDRECT X RUSSIAです。)

LOMO LC-Aの子供の写真 LOMO LC-Aの子供の写真に加工を加えた例
 ロモのレンズだけを取り出してデジタルで写真を撮っても、所謂"ロモ"的な写真にはならないということです。デジタルでもアナログのように現像過程で手を加える必要があります。そういう理由で撮られた写真に何らかの加工を加えるソフトは必ず必要ということになります。しかしこれは結構数が出ています。1クリックでOKというものから、画像処理エンジンを使って自分で調整することができるものもあります。いずれのタイプも有料、フリーといろいろあります。最近のコンパクトカメラにはトイカメラ用のフィルターが内蔵されており、普通のレンズを使ってロモ風写真が撮れます。ロモ風写真は確かに撮れますが・・・ロモ LC-Aが作る作画を得ることは難しいです。最近はスマートフォンでもロモ風写真が作れます。

 ロモ LC-Aには、Minitar-1というレンズが付いています。広角の32mmでf2.8です。高性能レンズを量産化するという目的で製造され、プラスチックレンズではなく、ガラスが使われています。ソ連には第二次大戦後にドイツから接収した技術があるので、非常に優秀なレンズもあります。そういう伝統によって作られたレンズではありましたが、広い画角にするためにコンパクトカメラへ入れる32mmは限界だったらしく、周辺光量が落ちているのがわかります。それに、重要な点ですが平面を得ることもできませんでした。魚眼レンズのような効果が僅かに見られます。しかしレンズの状態が良いLC-Aの作画の中央は非常にシャープで繊細に写ります。(作例の写りはあまり良くありませんね。いずれも友人と四川省の古鎮へ行き友人がLOMOで撮ったものですが、彼が自分でスキャンしたものをいただいたものです。このスキャンで劣化したと思われます。こういうこともあるのでロモのデジタル化はできるならあった方が良いと思います)

 ロモ LC-Aは、トイカメラ、おもちゃカメラだと言われます。だけど、作った人たちは「おもちゃ」と思って作っていなかったのは間違いありません。レンズは広い範囲を撮るためにギリギリの努力を払っています。そしてシャープで美しく写ります。大衆高級コンパクトカメラとしてライカに似た発想で作っています。ただ、ソ連の物価だから安く販売されていて現代の基準からは"遅れた"技術と感じられるのは確かです (本当に遅れていたかは議論の余地はありますが)。設計者は周辺光量落ちと魚眼効果はわかっているけれど、許容範囲を考えて微妙なところで手を打ったのかもしれません。しかしある収差は意図的に加えているように見えます。消すより残した方が良いと判断したものや消すべきだが残ってしまったものもあるだろうと思います。この微妙なバランスが即ちLC-Aの価値だろうと思います。

ロモ LC-Aの川の写真 ロモ LC-Aの川の写真に加工を加えた例
 このレンズを何とかできる限り広角にしようと思いましたが、32mmの限界を越えられず、しょうがないのでLC-Aと同じ32mmで作りたいと思います。このレンズには周辺光量落ちは必ずしも要らないと思っています。パソコンソフトを使って加えることも可能だからです。微妙な魚眼効果と収差は絶対必要で、それがLC-A芸術に迫る鍵だと思っています。ソフトの使用は過去の現像に相当する作業であって、この作業とこのレンズでの撮影でロモの世界をデジタルで再現することを目指します。つまりソフトはカメラ内蔵のものを使っても構わないし、パソコンソフトでもいいですが、それでも足らない要素があるのでレンズを作ることでコンプリートにしようということです。

ロモ LC-A Minitar-1 32mmを模倣する上で重要な点

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