無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

ベルリン派によるトリプレットの最高峰
ハイパー「清麗」T4 50mm f3.0

2015.11.22


 ペッツバール Petzvalは前群貼り合わせ、後群は分割2枚という構成ですが、互いにかなりの間隔があります。やがてこの間隔が狭まっていき、逆テッサーのような形のレンズが出てきましたのでバリエーションも含めて見てみたいと思います。

ペッツバール型
 ペッツバールの発明が1840年で、シュタインハイル Steinheilのポートレート・アンチプラネット Antiplanet pour Portrait (米特許 US241438) が1881年頃という、デニス・テイラー Dennis Taylorがトリプレット Tripletを発明したのが1893年頃ですので、ポートレート・アンチプラネットはペッツバールからトリプレットが産み出される間の時期に発明された肖像用レンズとしてメモリアルなものの1つです。現物は全く残っていないらしいですが、シュタインハイル自身で後にクルミナー 85mm f2.8として製造されたので、これは現代でも入手して確認することはできます。

光学図
縦収差図
 特許のものはf3.2ですのでクルミナーとは同じものではありませんが、焦点距離は85mmで同じです。クルミナーは新種ガラスに変えたのだろうと思います。収差を見ると、微妙なソフトレンズであったことがわかります。
 
光学図
縦収差図
 これもポートレート・アンチプラネットと同時代のものでローデンシュトック Rodenstockのユリゴナール Eurygonalです。f4.3、画角は60度ありますので、当時としては相当な広角ですから収差はほとんどありません。レンズ構成は厚みを増しており、高級レンズとして提供されたものであろうことが推察されます。データはトラオレの設計書に載せられています。設計年代は不明です。

光学図
縦収差図
 1932年にシュナイダー Schneiderのトロニエ Tronnierが設計したものでクセナー Xenar Type Dというものです (独特許 DE544329)。肖像用に設計されており、やがてトリプレットに移行するまで、このレンズが使われていました。f3.5で画角は50度でした。焦点距離にして47mmにしてあります。この玉はかなり良いと思います。

光学図
縦収差図
 1926年、ゲルツ Goerzのロバート・リヒター Robert Richterが設計したものです (米特許 US1588612)。画角は50度でf3.0です。貼り合わせ3枚の部分がありますが、内1箇所が平面なので製造には問題ない筈です。これを復刻しようと思っています。理由はドイツ光学の指標 プリモプラン「醉墨」E4 50mm f1.9に書いてあります。量産されていないようですが、もしゲルツが命名するとすれば「ハイパー」系だと思います。ハイパーはゲルツのトリプレットですが、前玉を厳重に貼り合わせています。それなのにf3に留まり、何の進歩もないように見えます。トリプレットは肖像用であるとか映画用だったので収差を善用することができましたが、スタンダードな撮影レンズを作ろうと思った場合、なんらかの補正が必要ということでこのようになったのだろうと思います。アストロ・ベルリンはシンプルな3枚玉に戻ったので、ベルリン派におけるトリプレットに対する挑戦はこれを以て頂点だったと見ることができるかもしれません。

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