無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

神の瞳 ホロゴン「古柳」R3 15mm f8

2014.04.02

 製造不可としていたホロゴンですが様々な方法を探った結果、いけるのではないかという方向になってきました。ガラスには原器というものがありますが、原器の製造法で作らせてそれを現物に投入するという荒技を思いついたためです。確認すると、高額にはなるが可能ということでした。原器そのものを組み込む感じになります。試作品を作るのでそれを見てから最終決定ですが、距離は固定、絞りは元より無しという仕様です。前に見えているものが全部写るわけですからファインダーは不要だと思います。カメラを握っている自分の手さえ写らないようにする必要があります。価格は8万以下でいけると思っています。目標は6万ですが、ガラスをマウントするだけで、しかもこれは中国生産で考えていますがそれでもこれぐらいになります。日本生産もまだ可能性があります。

超広角を歪みなく撮影できる驚異のレンズ

 本レンズは誰でも見るからに製造困難なものであることがすぐにわかります。出目金のようなほぼ球体のレンズが中央に据えられているからです。今どき何でも機械化されている現代に、ただ球体というだけで作れないのは不思議ですが、そもそもそういうレンズは必要性がありませんから、必要性のないものを作る機械もないということなのだろうと思います。球体にするぐらいであれば、レンズの枚数を増やすとか、そもそもそういうことではなくて、プラスチックレンズをプレスで作る方がはるかに多いと思います (無一居では絶対にプラスチックレンズは使えません。なぜならこれは大量に作るから安いのであって、少量生産はコストがかかり過ぎるからです。同じ理由でプラスチックを使うアスフェリカルは使えません)。

 ホロゴン Hologonは、1970年4月13日にツァイス Zeissのエアハルト・グラッツェル Erhard Glatzelによって特許が出願されています (米特許 US3661447)。この頃ツァイスによって、長野県のヤシカとコンタックス製造の提携について話し合われた時に、レンズを製造する富岡光学 (無一居のレンズは旧冨岡の方々に作っていただいており、当時コンタックスの鏡胴を作っていた方もおられます) にコンタックスレンズのラインナップが示され、その中にホロゴンも含められていたと言われています。しかし何らかの理由で、ホロゴンはドイツ生産となり、日本で作られることはありませんでした。今でも球体、或いはそれに近いものは製造を断られますので、製造可能な会社を見いだすのは難しいと思います。

 ツァイスの特許にはホロゴンの計算方法も解説されており、3通りのデータが載っていますので全部見ていきます。1つ目は12.5mm f8です。それを以下に確認してみることにします。

ホロゴン12.5mmの設計値
 注目点はグレーの欄で「3.8002」とあるところです。レンズ後面からセンサーまで(バックフォーカス)が3.8mmしかないという意味です。ライカのフランジバックは28.8mmです。センサーの前にはシャッター幕がありますので、レンズの側から見た場合に許容されるフランジバックはもっと小さくなります。ライカM3のシャッター幕を固定する上下の枠は23mmです。これはスレスレ、微妙に当らないギリギリのところです。もし許容できる数値を21.8mmと設定したとすれば、必要なバックフォーカスは7mm以上ということになります。それでこの設計はかなり無理があるということがわかります。

ホロゴン12.5mmの光学図
ホロゴン12.5mmの縦収差図
 歪曲が全くないのが特徴です。他は左に曲がっていますが、距離1mぐらいを曲がった先の方でカバーしますので、こういう風に作ったものと思います。優秀性はまさに「神の目」「神の瞳」と言われるだけのことはあります。人間の目の方が優秀ですが。

 次に2例目の15mm f5.6を見ていきます。

ホロゴン15mmの設計値
ホロゴン15mmの光学図
ホロゴン15mmの縦収差図
 これも12.5mmと同じ理由で使えません。これは15mmですので量産化されたものと同じスペックですが、出回っているものにはf5.6はありません。f8です。

 さらに3例目、21mm f8を確認します。

ホロゴン21mmの設計値
ホロゴン21mmの光学図
ホロゴン21mmの縦収差図
 これはバックフォーカスが11mm以上の余裕があるので及第点です。f値も8.0と商品化されたものと同じなので、この画角を広げて使えないかを考えます。

古柳R1の光学図
古柳R1の縦収差図
 15mm f8として見てみます。ガラスは現代のもので適用しますが、中央のガラスは生産中止になっています。そこで近い値からより色収差を無くすことができる組み合わせを探ります。なぜなら、このレンズを製造すると決まった時に知り合いらから「超広角でデジタルは色被りが強烈らしいな」などと虐められ続けているからです。予約の方からも指摘をいただいているぐらいです。色収差は極力なくして問題を減らしたいところです。「周辺減光が酷いのではないか?」とも言われているので、できるだけセンサーとは距離を置いて周辺に問題が出ないようにもしたいところです。しかし15mmにするとバックフォーカスは8.24mmと出ました。これに保護枠をつければいよいよギリギリで余裕はほとんどありません。おそらくツァイスから出たものも、色収差が少し多いだけでこれと同じものだと思います。ドイツ物は色収差に関しては少し足しますがアナログだったらこれで問題はなかったから過去はそれで良かったのだと思います。現代では日本のレンズのように収差は奇麗に消す方が無難だと思います。さらにこれをf5.6にして確認しましたが収差が許容できない、ツァイスならずとも許容は難しいということで、それでも設計値はf7.4にしてあります。f値は設計値だからf8としておいてロスでf8を実質的に下回っても問題はないのですが、しかしf8、これでも厳しいのにもっと暗いは勘弁して欲しいということで確実にf8は得られるようにしてあります。こういったレンズがデジタルでは厳しいということであれば、15mmは諦めてせめて16mmに譲歩するとか、21mmで行ったからといって特に問題はない、21mmでも十分に広角ですから無理をしなくても良いのではないかというのはあると思います。しかしホロゴンの21mm? なんじゃそりゃ? 何か、目に見えないものに負けたような感じがするのです。16mmよりやっぱり15mmというのが、周辺減光等の可能性、測光のエラーなど忍び難きを忍んでもやはりそこは15mmなのではないかと思う訳です。

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