無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

戦中ライツの巨砲 ズマール
「香箋」G1 90mm f1.6

2015.11.15

ベレクの集大成的大口径レンズ

 戦前のライツにとって、というよりどこの光学会社でも同じ筈ですが、大口径というのはかなり難しい挑戦でした。性能の良い大口径が作れる設計師は数える程しかおらず、ライツはシュナイダーの提供を受けていました。ライツの大口径に関する研究はf1.4で公開されていましたが (仏特許 FR822807)、これはヘクトール 73mmのような珍しい収差が出ており、また後にズミクロンで採用される空気レンズが入っているなどかなりの意欲作ですが、実際にはf1.7がせいぜいで、これでは収差は楽しめません。この特許は別のことを説明するために取得され、しかもフランスでしか申請されていないようですが、結局のところライツ社の開発が失敗して行き詰まっていたことを示すものにもなっています。しかし実際にそれでもベレクは73mmであればf1.9を達成していました。その後90mmでもようやくf1.5に達しましたが製造は戦中になりナチス・ドイツ軍に納入できた数百本に限られました (英特許 GB481710、米特許 US2171641)。50mmはf2.0止まりで、f1.5を達成するのは戦後のことでした。このf2を上回る大口径の3種はベレクの個性が感じられる、初期のライカを代表する傑作だと思います。

 戦中の90mm f1.5はズマールという名称で、その後新種のガラスに変えたズマレックス 85mm f1.5に変わりました。90mmと85mmというのは正確な値ではないのでほとんど同じ、f値も同じなのでガラスを変えた効果はどこにあるのかよくわかりませんが、おそらく性能を高めるのに効果があったのだと思います。そうするとズマールは性能が劣るということになり、ヘクトール 73mmのボケ具合を見るに、むしろ旧式の方が味があるのではないかと気になってきます。しかも特許データがあるので制作は可能です。

ズマールの光学図
 現代の規準からはぜんぜんなのだと思いますが、すでにかなり優秀なレンズです。問題はでかくて重いということでしょう。

ズマールの縦収差図
  収差図を見るとベレクが本で説明しているような配置、ライカの特徴的な配置なので、十分に期待を抱かせるだけのものはあります。特に球面収差図がヘクトール 73mmに似ています。

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