無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

後代に大きな影響を与えた
ウルトラスチグマット「醉墨」E3

2015.11.17

ウルトラスチグマットはエルノスターの原形

 シカゴのチャールズ・マイナー Charles Minorという人物が発明した新型の4枚玉が開発されたのが1916年であったという (米特許 US1360667)、そして米国に光学会社を持っていたガンドラック Gundlachがそれを基に商品化したのがウルトラスチグマット Ultrastigmatであったという。そしてこれが後にエルノスターとして結実したのではないかというのが、今日の我々が知り得る歴史です。

 あまりに古過ぎるレンズに名玉は少ないし、特に大戦中の玉に味のあるものが少ない、どうしても軍関連になってしまうからだろうと思いますが、一応それでも歴史的に重要な玉なのでここで確認はしておこうと思います。マイナーの特許を見ると光学図は4つありますが、データは3つしかありません。とりあえず順番に確認します。

ウルトラスチグマット1の光学図
ウルトラスチグマット1の縦収差図
  特許には65mmと書いてありますが、実際には85mmです。そして盛大な収差まみれでこれでは使えません。ここでは50mmにスケールダウンしてご覧いただいています。画角は65度ということですがここでは45度でご覧頂いています。f2.4です。

 それでは2つ目に移ります。

ウルトラスチグマット2の光学図
ウルトラスチグマット2の縦収差図
  あまりにおかしいので最後の2つの曲率の±を逆にしますと記載通りの65mmになり、ついにウルトラスチグマットのf1.9にも到達しました。しかしそれでも収差まみれであることには変わりありません。それに記載の80度の画角は得られません。

 3つ目も2つ目とスペックは同じです。

ウルトラスチグマット3の光学図
ウルトラスチグマット3の縦収差図
 今度は最後の2つの曲率を入れ替えたら65mm f1.9になりました。これも80度の画角はありません。

ウルトラスチグマット修正後の縦収差図
 意図的に数値を誤魔化している疑いが強まりましたが、マイナーがガンドラックに伝達するのにあちこちを変えると複雑になり過ぎます。どこを隠ぺいしているのか、ネット上で見ることのできる撮影例などを見ながら無一居の方でポイントを特定して出した結論がこれです。第一面の曲率を少し変えました。ガンドラックが作ったのはこの収差配置のような気がします。周辺は流れるしまともなレンズではないですね。キノ・プラズマットはもっと酷いですが。そう考えると映画大国アメリカで作られたこのレンズは後に色んな意味でツァイス系に影響を与えたと言えるのかもしれません。レンズ構成はベルテレに、収差配置はルドルフによって参考にされたのだと思います。特許のデータをほとんど触っていませんが収差配置はキノ・プラズマットそのものです。エルノスター型プラズマットというところでしょう。しかしこれはどういうものか確認するに止めて製造はしないことにします。

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