無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

クック キノ・ペッツバール
「朦月」D1 75mm f1.8

2021.03.07

 映画用にどのレンズ構成を使うのかは難しい問題です。スチールであればガウスが最もバランスが良いようですが、映画でも同じなのかもしれず、英クックではスピード・パンクロでガウスを採用しています。しかしガウス以外でも良いものはあります。クックでは1929年にペッツバール型を映画用に設計しています (英特許 GB329144)。これはおそらく販売されていません。スチール用でも使えるとあります。このレンズ構成を見て俄にペッツバールとは思われませんが、特許にそう説明されています。

クック キノ・ペッツバールの光学図
クック キノ・ペッツバールの縦収差図

 口径はf1.8で指定されています。画角はわからないのですが、半画角は15度と思われ、焦点距離は75mmです。これを20度ぐらいまで広げるとキノ・プラズマートとそっくりです。以下にクック、プラズマートの順に並べています。しかしクックの設計で画角を広げると周辺があまりにもボケ過ぎて使い物になりそうにありません。収差図では同じでも違う設計です。しかしキノにおいて、ドイツ人、英国人共に同様の収差を採用するということは最終的な結論はこのあたりにありそうです。
クック キノ・ペッツバールの縦収差図 20度
キノ・プラズマートf2



 そもそも、キノにペッツバールという考えはどこから出てきたのでしょうか。英特許 GB258092では、同じ設計者 ウォーミシャムが1925年に申請したペッツバール型を使ってのプロジェクターレンズについての解説があります。ペッツバールにレンズを追加するパターンを図示しています。用途は写真その他にも可能とありますので確認することにします。データは2つあり、1つ目のペッツバール型に対し2つ目で1枚増やしています。いずれも100mm f1.5です。
クック・ペッツバール25年1 100mm f1.5の光学図
クック・ペッツバール25年1 100mm f1.5の縦収差図
クック・ペッツバール25年2 100mm f1.5の光学図
クック・ペッツバール25年2 100mm f1.5の縦収差図

 1929年にはさらなる改良型が英特許 GB333065で示されています。100mm f1.48でした。
クック・ペッツバール29年 100mm f1.48の光学図
クック・ペッツバール29年 100mm f1.48の縦収差図

 すぐに1930年にさらなる改良型が英特許 GB342889で申請されています。100mm f1.5。クックにおいてはペッツバール型とエルノスター型はあまり区別されていないように見えます。
クック・ペッツバール30年 100mm f1.5の光学図
クック・ペッツバール30年 100mm f1.5の縦収差図

 1938年には明るさを犠牲にしても枚数を減らした構成を英特許 GB517386で公開しています。100mm f2.0とf2.1です。同年に英特許 GB523218で高屈折率ガラスを使った新設計を3つ発表していますが、屈折率がどれも2.0を超えるものを使っているのでこれは検証しません。
クック・ペッツバール38年1 100mm f2.0の光学図
クック・ペッツバール38年1 100mm f2.0の縦収差図
クック・ペッツバール38年2 100mm f2.1の光学図
クック・ペッツバール38年2 100mm f2.1の縦収差図

 戦中の1940年には明るさを増した構成を英特許 GB542508で公開しています。どちらも100mm f1.4です。
クック・ペッツバール40年1 100mm f1.4の光学図
クック・ペッツバール40年1 100mm f1.4の縦収差図
クック・ペッツバール40年2 100mm f1.4の光学図
クック・ペッツバール40年2 100mm f1.4の縦収差図

 1942年の設計では暗くなって複雑になっていますが、これはプロジェクター用とは書かれていません。写真用とあります (英特許 GB556402)。50mmは実質無いように思いますが、少し破綻するまで50mmで出してみました。どちらもf2です。産業用という感じがします。戦争で使うものだったのでしょうか。
クック・ペッツバール42年1 50mm f2の光学図
クック・ペッツバール42年1 50mm f2の縦収差図
クック・ペッツバール40年2 50mm f2の光学図
クック・ペッツバール40年2 50mm f2の縦収差図

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