無一居

写真レンズの復刻「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

写真・映画レンズの歴史的名玉の再生産

当初は中国で作ることで進めていたのですが、最終的に東京で製造しております。

基本的にライカL39マウント距離計連動で作ります。

 予定では現在販売のものを完売してから次ですが、次回もキノ・プラズマートで今度はf1.5で考えています。それでもf1.9の方の需要もあります。

 小店が以前より一貫して50mmはf1.9あるいはf2だと申し上げておりますが、標準プラズマートのf2は極めてレアで作例も不十分、謎に包まれている一方、f1.5はある程度作られているので、プラズマートはf1.5なんだと、f2は要らないのだという見解が主流です。ですが、プラズマートが評価されるようになったのは中国経済発展以降で、それまでは安価な玉でした。なぜでしょう? f1.5だったからではないですか? f2ならもっと評価されていたはずです。f2がどんな玉なのか復刻したものの作例が多数あるので見て下さい。これほど高貴なマシュマロ・ソフトは他に無し。ここまで言っているのに、それでも「f1.5をお願いします」と言ってくる方々が多い。だったら同じ50mmでf1.5を出し、比較したら良いと、そのような話になっております。すると真面目に考えたのか「f2はもしかしたら傑作かもしれない」という人まで出たので(実際の製造はf1.9)「だからこれがいいんだと申し上げてるでしょうが」と言うわけです。ですが、このような話は小店顧客の間のみで世間では行われておりません。販売数を見ていただいたらお分かりのように、世界で数十人です。そのため、必要数だけ製造という方向で考えています。

 引き続き東京・木下光学で製造します。中国などからのオファーは全て拒否しております。現代中国製のレンズが結構市場に出ていますが、光学設計は日本の退職者がほとんどと聞いています。ですがどういうわけか描写に大陸の薫りがします。製造地の影響は小さくありません。小店ではこれを評価していません。顧客の皆様からもこれまでのレンズを見て、東京から移すなと言われておりますので、今後もこの方針です。

 ボケ玉というのは飽きます。面白いのは最初だけ、大多数は不良品なのだから当然です。

 50mmであれば自然の摂理とも言える限界がf2付近です。それ以上明るくすると破綻を来します。それを安易に持ち上げてはいけない。飽きてしまう。だけど大口径は用途によって必要だから作られたものです。大体業務なのです。飽きる飽きないといったこととは無関係に、単に必要性があって設計されたものです。もっと暗いボケ玉もありますが、芸術性が高いものはそんなにありません。

 取り巻くこのような状況を考えると、最高のボケ玉、史上傑作とされているものは、如何に凄いのかということなのです。その頂点がキノ・プラズマートとスピード・パンクロです。アンジェニューSやスーパー・シックスもあります。

 小店の考えではソフト・フォーカスで歴史的傑作はありません。キノ・タンバールが最高です。ですがキノ・プラズマートの設計概念はソフト・フォーカスで、スーパー・シックスも同様、結局これぐらいに抑えているのが傑作の条件なのでしょう。

 小店としてはアストロ・ベルリンも復刻させて欲しいのですが、製造数から明らかなように不人気のため、というよりボケ玉を使える人がほとんどいないため販売が伸びず、作りたいものを作るのは無理と思っています。そのため、飽きない玉、最後まで残る玉、感動する玉、限られた玉のみを必要とされる分、製造する方針です。パン・タッカーも十分傑作ですが、なかなかここまでは手が出せないのではないかと。



戦前キノ・ガウスの標準 スピード・パンクロ
「香箋」G1 50mm f2

詳細  小店での作例 お寄せ頂いた作品  2022.09.25

 100年以上長期に改良されながら今でも本家の英クックが製造している名作です。古くは戦前のハリウッドで圧倒的なシェアを持っていたキノ(映画)玉ですが、傑作とされているリーによる31年設計はモノクロ時代のものです。オリジナルは映画用の画角に絞っているので、ガラスの直径を大きくしているところのみ変更しています。光学設計は変えていません。

 ボケ玉と言ってもいろいろありますが、英国人がボケ玉を規定するとこうなるという見本のような玉です。大英帝国時代に世界のセンスを取り入れ、さらに洗練してきた伝統がありますので独特の絶妙なバランス感覚があります。全くの普通、普遍美の究極というのは英国人ならではです。ボケ玉を絶妙なバランスで普通に落とし込んでいます。そう考えると、これをf1.9に変更は違うのではないかと。f2のままで製造いたしました。

香箋 G1 50mm f2
無一居 院落P1で香箋G1をライカM9にて撮影

香箋 G1 50mm f2 195,000円
製造数:50

香箋G1 帝国劇場
銀座の古いビル 帝国劇場 f2 ライカM9

香箋G1 舞台
新宿・初台 舞台 f2 ライカM9

香箋G1 渋谷横丁のネオン
渋谷 渋谷横丁のネオン f2 ライカM9

クック スピード・パンクロの復刻
2023年秋、クック社がミラーレス用にクラシックなスピード・パンクロを復刻しました。



タンバールへのオマージュ
「花影」S1 60mm f2.2

経緯と詳細 小店での作例 お寄せ頂いた作品 2014.07.13完成

 ライカ・タンバールと同じような特性のレンズを60mm(厳密には58mm)に変えて作りたいということで開発しました。キノ(映画)用の収差が入っていますので扱いやすい玉ではありません。発色がこれだけ艶やかに表現するものは他にないでしょう。国産のミラーレスでは艶やかな色はなかなか出せないのですが(進歩もしてくるとは思いますが)、デジタル処理で色を加えるのと、元からあるものを引き出すのでは違うので、デジタルで調整した時に着色とは違う良さが感じられると思います。

花影S1 花影S1a
 ライカ L39距離計連動です。ゴールド(Nr.70-99)は真鍮剥出しのもので酸化が進むと色が濃くなってきます(既に濃い黄色になっております)。ブラック焼き付け(Nr.20-69)は弱く、角が剥がれやすい仕様でオーダーしていますので、角を磨いて真鍮地を出すなどして使うこともできます。ブラックのみガラスコーティング無しのモデル(Nr.01-19)もあります(モノクロ撮影はコート無しが良いと思います)売切。製造は100本のみで追加生産はありません。重量は360gです。

花影 S1 60mm f2.2 125,000円

製造数:100 真鍮剥出(金)のみ在庫有り
 本レンズは評価が賛否大きく別れています。傑作といっていただき複数本収蔵する方もおられれば、使えない駄作だと言われる方もいます。作例は多数掲載していますのでしっかり見てからご選択いただきますようお願いします。光学の歴史上、最もゴージャスで貴族的な玉ですが、使いこなしは容易ではない、ビューファインダーで撮るから難しいのかもしれません。ライカであれば枠しかわからない、その方が撮りやすい、これは全てのレンズに言えると思います。

花影S1 モノクロフィルム 二胡を拉くShibaten
北京新街口界隈 Shibatenさん f2.5 ライカM3 ネオパン ガラスコーティング無(北京のプロラボでスキャン)

花影S1 花
東京麻布十番界隈 花 f2.5 ライカM9 ガラスコーティング無

花影S1 街灯
東京麻布十番界隈 街灯 f2.5 ライカM9 ガラスコーティング無

花影S1 友達と雑談する女学生
アンコールワット エプソンR-D1 ガラスコーティング無

花影S1 壊れた石組
アンコールワット エプソンR-D1 ガラスコーティング無


ライカ タンバールの復刻
2016年、ライカ社がズマロン28mmf5.6を復刻しましたが、2017年はタンバールでした。



富岡光学レンズの復刻
小店が製造をお願いしている東京の木下光学研究所さんも旧・富岡光学時代の古い設計のレンズを復刻しています。




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