無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

写真の中に桃源郷は見いだせるか2

人は時に現実より美しいものを見る - 2012.10.23


シュナイダー クセノン 50mm f1.9
Schneider Xenon 50mm f1.9

 そしてクセノンですが、この牌はシュナイダー社のものですから、トロニエ移籍後も新レンズに採用されていました。多くの一眼レフカメラに供給されたクセノン Xenon 50mm f1.9は、トロニエ以外の人物によって見直しがなされ、当時も今でもトロニエのf2よりも評価されています。市場の価格も2、3倍違います。拘ったレンズの選定を行っていたことで知られるアルパレンズのラインナップにもリストされているのはf1.9の方です。しかもアンジェニューが標準レンズから外れ、スウィターが登場した後も供給し続けています。この一点だけでもどれだけ凄いかがわかります。

 トロニエが最初に設計したクセノンは1925年のもので、量産されるようになったのは1934年です。こうして長期間にわたって練り上げられたクセノンはガウス型の構成に手を加えたもので、前群の貼り合わせを分離したものでした。ガウス型から一歩進んだ先進的な設計でしたが、ガウス型のツァイス Zeiss ビオター Biotarより評価を得る事ができず、売り上げは散々なものだったようです。唯一、ドイツ・コダックが販売してヒットしたレチナ Retinaの成功に便乗する形で売られたものが多数出回ったにすぎなかったのです。60年代に販売された新型クセノン Xenon(本稿で見ていただくもの)は普通のガウス型に戻されたものでした。しかしトロニエはフォクトレンダー Voigtranderに移籍した後、失敗した筈だったクセノンをもう一度使い、ウルトロンと命名して販売しました。よほど自信があったのかもしれません。現代の評価はどうでしょうか。ウルトロン型は現行のニッコール Nikkor 50mm f1.8Dに採用されています。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 798芸術区
 クセノン Xenon 50mm f1.9は、北京・望京の東側、大山子にあります「798芸術区」で撮影してみたいと思います。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 ブックストア
 このレンズですぐに思ったのは、色彩がパステル調になることです。かといって色褪せるということはなくバランスよく表現します。この特徴はライカのズマリットに似ているような気がします。しかしズマリットはクセノンのコピーです。両者は味が少し異なりますが、共通するのものはあると思います。これはf1.9で戦後のレンズですが、それでも共通点を維持しています。大口径のボケ玉は魅力有りますが、そこを少し抑えたf1.9というのも品があって良いものです。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 踊り子
シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 湘菜館
 例えばこのように濃い赤もしっかり再現しますが、いささか淡い感じも残っているという不思議な効果です。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 淳安堂
 色彩感と有るか無いかという微妙なところで残されているフレアの調和が見事です。フレアの扱いはライツに通じるものがありますが、それとも少し違うような気がします。どちらも比較するのが無意味なほど優れているのは言うまでもありません。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 組体操
シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 人形2体
 変な人形の多いエリアです。社会風刺が含まれているものもあるようですが、説明を求めたいぐらい意味不明なものもあります。やはり色が秀逸で、青系でも本質が変わることはありません。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 鳥籠
 収差は映画用のレンズを参考にした足し方をしているようです。ポートレートでの用途でも十分に満足できそうです。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 5周年ポスター
シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 結婚撮影
 芸術区全体は撮影するにはちょうど良いところのようで、結婚記念撮影の業者が複数あります。実際に撮影しているところもそこら中で見かけられます。こういう用途でこのレンズは相性が良さそうです。まさに桃源郷的発色ですから。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 方湘
シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 テーブルと椅子
 合焦点の浮かび上がり方がとても良い感じです。全体的に主張を控えた上品な感じがあります。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 タトゥの広告
シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 京劇の広告
 背景のボケは距離と光の量によってキャラクターが変わります。遠くなるに従って、そして光量を増してくると硬さが目立ってきますがこれも良い印象があります。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 スローガン
 光が強く当たっても安定的なレンズは古いものには少ないですが、これは問題有りません。光のキツさを穏やかに吸収する特徴が素晴らしいと思います。立体感のあるボケも見事です。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 銅像
 右上の枝に注目したいのですが、山水画のような描かれ方をしています。このボケの作り方が画に品が漂う秘密なのかもしれません。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 金太郎
 背景に硬いチリチリした収差が見て取れます。しかし流れていないので、煩わしさはありません。これはでも、ポートレートには使いにくいボケ方です。人物がメインの時はこのボケが出ないように留意した方が良さそうです。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 ぶら下がる男
シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 本来
 一定の距離を空けると上品なフレアを纏うようになり、ボケも率直になっていくようです。前ボケは引き締まっています。これが合焦点を引き立てる効果は意外と大きいように思います。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 カフェ
 遠景、というほど遠くもないですが、遠距離を開放で撮影した場合は安定感があります。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 中国文化の店
 中景、というのもどこからどこまでかはっきりしませんが、やはりフレア気味になります。近いものと遠いものははっきりするようです。こういう設計はおもしろいと思います。1つの理想を示しているような気がします。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 パレス北京
 西日が壁に当たり、表面のディテールが潰れ気味になりながらも、はっきりしない部分とそうでない部分のなだらかな移ろいが一歩引いた身のこなしで表現されている感じがします。少々甘い描写の対象物に対して手前の石畳は強いコントラストを帯びて、画面全体の印象を引き締まったものにしています。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 注意書き
 硬いボケは背景に現れることもあるようです。少しチリチリしていますので、焦点を引付けるとこのボケが出るようです。こういう作画の場合は使えるボケです。焦点と背景の距離が空き過ぎるといささかしつこいかもしれません。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 足跡
 これは焦点も背景も先ほどよりも離した画です。これぐらいの方が自然な感じがします。ポートレートであれば、これぐらいがいいかもしれません。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 紅
 できるだけ寄って撮影してみた画です。背景のボケは相当乱れていますが、素材がシンプルゆえ、それもあまり目立っていません。この乱れ方にも色気があって良いと思います。

シュナイダー Schneider クセノン Xenon 50mm f1.9 ワイン
 クセノンにトロニエ的要素を見いだすなら、こういう画になるような気がします。まるで広告写真です。広告は文字を入れるので実際にはこういう構図にはなりませんが、写りから受ける印象は広告的です。一切画像に加工を加えていなくてもこうなるのは驚きです。色彩感とボケの取り方がいずれも微妙なところを突いていて関心させられます。フォクトレンダーは冷たく金属的でこれもまた良いのですが、シュナイダーは暖かみがあります。

 シュナイダーレンズから全体的に受ける印象は、紫が強そうだということです。全体的に落ち着いて品がありますが、紫を見ると色気を出す風な振る舞いを見せます。これが高貴な印象を与える理由だとされています。ツァイスは赤を重視して華麗に、シュタインハイルは藍色に対して反応して優雅な印象を残すとされています。ここに優劣はありませんが、ただ特定の色を強調したというに留まらず、そこには哲学の相違すら感じられます。デジタルに対して相性が良いのは紫だと言われています。

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