無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

エプソン R-D1 の機能を分析する

ライカのレンズを使う為に開発された世界最初のデジカメ - 2012.06.02


 もう発売からおそらく8年ぐらいになりますが今でも製造が続けられているという、デジタル機器としては驚くべき長寿を誇る本機についていろいろ言ってみたいと思います。

エプソンR-D1の全面
 おもしろい機構が結構あります。これは日本人だから作れたのかもしれません。欧米の感覚だとLeica,Appleなどの製品を見ると、シンプルさを追求していることが多いです。日本の文化は機能てんこ盛りです。どちらも一長一短ですが、R-D1のように練り上げられていると厭きがきません。デザインは今一つかもしれません。軍艦部がフラットに近いと格好良かったように思います。ニコンの古いレンジファインダー機のようなデザインだったら申し分なかったと思います。コストの問題もあるので、余りあれこれと言わないことにします。

エプソンR-D1の軍艦部
 デジカメなのにフィルムチャージレバーが付いています。これはアナログの感覚を保存するためのようで、電池の消耗を防ぐ効果もあるようです。確かにあった方がテンポ感を保ちやすいような気がします。ただSDカードへの書き込み速度が遅いのでもう少し速い方がいいかもしれません。カードは安いものから高速のものまでいろいろ変えてみましたが、ほとんど変化なしだったので、カメラ側の問題と思います。jpgで撮影する分にはストレスを感じることはないと思います。
 オールドレンズを使う場合は、f2のような明るいものも多用されます。それでシャッタースピードは1/4000は欲しかったところです。それか、ISO100のどちらかです。露出補正はゼロで固定されていて、ボタンを押しながら廻すと変更できます。ゼロの位置でロックがかかりますが、他の場所ではロックはありません。露出補正は夜間にも使うので、ロック機能は暗くて見えないところで役にたちます。位置がわからなくなると適当に廻して固定されたらゼロに戻ったことがわかります。
 計器類も付いています。これはセイコーが腕時計用のパーツを供給したもののようなので、かなりしっかりしています。中央が残りフィルム枚数で500を切るとカウントダウンが始まります。右はRAW,jpeg大,jpeg小の3種で記録方法を選びます。左のメーターは晴天、曇り、蛍光灯とか、そういうのを切り替えるところです。普通はオートで使います。右と左のメーターは後ろのレバーで素早く切り替えられます。メーターの下は電池の残量です。液晶を点灯しなくても残量がわかるというのは大きく、計器類でこれが一番役にたちます。
 アクセサリーシューは個人的に外してあります。レンジファインダーは距離計がずれやすいので、すぐに調整できるように空けてあります。中にネジが3つあり、真ん中で調整します。左は2重像の濃度で、右は縦ずれです。この調整機能は真ん中のネジだけでも外へ露出してもらいたいところです。(後でホットシュー、電気接点部を外しましたので、現在はアクセサリーシューが使える状態で尚且つ距離も調整可能の状態になっています。)距離がずれやすい点について重要な注意点は、ずれを確認した時に性急にドライバーで調整せず、ヘリコイドを回して馴染ませると直ることがあるということです。それとファインダーを正面から見ないと正確な測距ができません。この2点の注意でほとんどの場合は問題はありません。ずれは振動によって発生しますが、レンズを外してカバーを填めるか、レンズの距離を3m以下にするとかなり振動を加えてもずれません。無限の位置の方がレンズが引っ込みますので気持ち良いのは確かですが、伸ばした状態で移動する方が好ましいと思います。これはライカでも同じです。頻繁に使っている個体はかなりの振動を加えてもずれません。使っていないとずれやすくなります。
 その左にファインダー枠切り替えレバーがあります。レバーのデザインが戦中のドイツのようです。R-D1はライカ判に対する公称倍率は1.55倍です。それでこのファインダー枠も1.55倍に合わせてあるようです。しかしR-D1は実際には1.3倍です。だから全然合いません。40mmのレンズを付けたら35mm枠に合うということで、40mmを愛用しているユーザーが多いようです。おそらくR-D1は、この倍率ゆえにいまだに存在感を失っていません。現状フルサイズはライカM9しかなく、Mono,M10が出ても高額です。M8よりもR-D1の方が安く、1.5倍仕様のデジカメとなると一気に価格は下がるものの、レンジファインダーが付いていません。暗角の出やすいシネ用のレンズを使う用途の場合もあるので、フルサイズより有利な点もあり、かといって1.3倍であれば小さ過ぎることもありません。50mmのレンズを65mm相当で撮ることに慣れてくれば、意外と不満な点は無くなります。ズームファインダー搭載で、枠有りで、枠外も見える仕様であれば、文句なかったと思います。

エプソンR-D1の後ろ側
 後ろはボタンが5つあります。ファインダー覗き穴の左にアナログ時代のフィルム巻き上げスクリューがあります。この2つを使って画面を操作します。スクリューは回転させてメニューを選択したり、拡大画像を動かしたりします。ひっぱって引き出してから廻すという機能もあります。写真を一枚一枚確認する時もこれを廻します。人から「写真を見せてください」と言われ「これを廻して下さい」というと驚いて声を失います。フィルム時代のカメラは撮影可能にスタンバイしたカメラのここを回すと怒られますからね。「廻して下さい」と言われると「本当にいいのですか?」ということになるのだろうと思います。
 三脚穴ですが、できれば古いライカと同じ位置が良かったと思います。常識的には現状の位置で当然なのですが、アクセサリーの転用の問題もあるし、なにより三脚に立てた時の見た目のバランスがドイツの感覚の方が優れています。単にレンズの中央に据えただけでは洒落っ気が感じられません。計測器のように見えてしまいます。たいしたことがない、細かいことを言っているようですが、ポートレートを撮る時にはこの要素は非常に重要です。しかし最近の新しいライカもR-D1と同じ中央配置に変わってしまったようです。

エプソンR-D1のSDカード差し込み口
 カードを抜き差ししなくてもデータをパソコンに転送できる無線カードを挿しています。写真を撮る為にフタを開けていますが、開けなくても転送できます。R-D1はサポート外で、使える保証はメーカーの方からはありませんが実際には使えます。電波のパワーが小さく、3m程離れると届きません。これは電池の消耗が激しいので、使い方次第です。一日撮りに出掛ける時は無線無しの普通のカードに変えればOKです。無線を切るスイッチが付いていたら良かったかもしれません。
 カードの上に四角い赤のランプが見えます。書き込み中はこれが点灯します。位置はベストで非常に見やすいし、明るさも申し分ありません。

 セルフタイマーと動画もあれば完璧と・・反省会みたいになってしまいましたが、全体的に手放そうという気にはなれないぐらい魅力ある仕上がりです。エプソンではフルサイズR-D2も社内で検討されたと聞きます。没になったらしいので、R-D1の売り上げが思わしくなかったからかもしれません。外観のデザイン変更の上、モーターワインダーのようなバッテリーパックの搭載を可能にして動画もOK、そしてフルサイズとなると確実にM9を凌駕できただろうし、おもしろかったと思います。気になるのは、倍率について1.3倍ぐらいの筈なのに、いつまでも1.5倍と言い続けている奇妙な点です。ファインダーも合わないまま長年放置しているのも奇妙です。ライカよりスペックを下に見せて遠慮するような配慮なのでしょうか。R-D2が出なかった背景には技術的な問題よりもそちらの裏事情の方が関係あるような気がします。「公正な競争」とか言っていればライカまでコダックみたいに滅ぼされますからね。ドイツは日本には勝てないでしょう。だけど必ずしも算盤重視でない欧州の方法は日本にはない製品作りをもたらすので、日本にやられないように保護はきっちりして欲しいというのもあります。日本側の方で話し合ってドイツが潰れないように調整を量っているのかもしれません。東アジア、欧州、米国との経済バランスの問題もあってバランスを失うと全体が悪化するので、そういう方面からの思慮も関係しているかもしれません。エプソンとしてはR-D2を出したいけれど、それができないことに対する無言の反発をファインダーを調整しないことで示しているのかもしれません。そうだとすれば、気持ちはわかりますが、難しい問題です。全体を考えれば、R-D2が出ないことに不満を持っているユーザー諸兄も堪え所と言えるでしょう。

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