無一居

空想のレンズを作ってしまう「むいちきょ」
紀元2012年1月創業

幾何学計算に基づいた世界初のレンズ2

人物撮影用レンズについて - 2012.10.29


ダルロー 5.5inch f3
Darlot 5.5inch F3

 おそらく今回のダルロー Darlotのブラスレンズは5.5inch(f3)ですから、R-D1使用で175~180mm相当になるということで、レンジファインダーカメラ使用者にはほとんど縁のない長さとなり、ほぼテリート級レンズとなります。こういう長玉をどうしたら良いのか、幾つか撮影場所を検討しましたが、寒くなってきたということもあるし温かい温室があるらしいという情報で北京植物園といたしました。

 このレンズがこれほどの長さに相当するのは、現代のセンサーが小さいからです。ブラスレンズを使っていた時代は乾板がもっと大きかったので、おそらく35mmぐらいに相当する焦点距離の筈です。そうであれば、実際に使うことが想定されている画の面積よりもかなり小さい範囲しか使わないことになり、これで描写を論じるのは難しく、中心の描写の良いあたりしかわからないという問題も出てきます。それでもある程度のことはわかると思いますので、とにかく使っていくことにします。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 胡蝶蘭1
ダルロー Darlot 5.5inch f3 胡蝶蘭2
ダルロー Darlot 5.5inch f3 胡蝶蘭3
ダルロー Darlot 5.5inch f3 胡蝶蘭4
 ライカビゾを使って、ラック&ピニオン方式の対焦機構を使った距離合わせでは、無限遠から50cmぐらいまで寄ることができます。近いところから花を撮るとしても、下がる必要があまりないので、図体の大きさの割に小回りが利くという意外さがあります。マクロのような撮影も可能です。それでもこれだけ長いもので撮るとなるとブレやすくなります。手持ちで近接はかなりやり直す必要があり、暗いところではほとんど無理です。三脚があった方が良かったと思います。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 サボテン 立ち入り禁止の標識
 「入らないで下さい」と書いてあります。書いてなくても誰も入らないと思いますがいかがでしょうか。サボテンより目立っています。サボテン見てかわいいという人もいるし、サボテンの子供(或いはミニチュアに改良したサボテンか?)は実際に売っているぐらいなので、入って戯れようという人がいても不思議はないのかもしれません。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 サボテン アップ
 柄にもなくナショナルジオグラフィックみたいな写真を撮ってしまいました。19世紀のレンズを使ってここまで普通に撮れると想像していなかったので、描写確認のため試験的に1枚押えたものですが、特に言うことはありませんでした。現代レンズのようです。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 赤いサボテン
 思うに本レンズで近接撮影というのは、想定されて作られてはいないと思います。プロジェクター用のレンズですが、レンズ構成はポートレートにも使われるものでしたので、人物撮影用と仮定すれば、やはりある程度の距離を空けての撮影が期待されていたと思います。この作例でもまだ近いかもしれませんが、白膜が出てきています。近接ではかなり鮮明ですが、それは本来ではなく、白膜が出るのが普通なのだろうと思います。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 固定されるサボテン
 人は成長すると自立しますが、こいつらは成長と共に支えが必要です。北京市当局より特注のリングをあてがわれています。距離を離したので白膜が濃厚になって参りました。白膜についてはフランスの品格が導き出した3つの表現のフランス系レンズの特徴も参照してみて下さい。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 蔓
 この例では、対象の輪郭が柔らかく感じられます。一方で細かい毛まで写る繊細さもあり、そこは現代レンズに勝るとも劣らないものが感じられます。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 蓮
 よくよく見ると描写が少し甘い気もしないでもありません。本レンズの実際の用途ではもっと大きなフィルム面に焼き付けるのでこれだけ限定的に見て甘ければ、画を大きくした時にはもっと甘くなると思います。そこまで見てみないとペッツバールレンズの本来の姿はわからないかもしれません。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 柵
 背景のボケは水彩画のようです。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 枯葉の落ちる道
 光の量によっては、白膜が出にくいようです。もっとも室内で使う筈の本レンズは、これも本来の使い方ではないと思います。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 実を拾う人
 公園に来て木の実を拾う人は結構います。輪郭が柔らかく滲みも出ています。これがポートレート撮影では効果的なのだろうと思います。しかしこの画角でもっと引付けて撮影した時にこの効果が活かせるかはわかりません。光の具合次第のように思います。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 自然を撮影する人
 もっと距離を空けて無限遠よりも少し手前といったあたりですが、さきほどよりももっと鮮明さを失っています。引付けて撮ると鮮明になりますが、少しは残りますので、その辺の匙加減がポイントなのだろうと思います。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 湖
 もうかなり暗くなってきているのですが、光が少ないと鮮明さが戻り、白膜も消えます。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 松
 松がシルエットになっています。綿を帯びたようなボケになるのが特徴のようです。いっそのこと、全部を焦点外にすればもっと幻想的だったかもしれません。

ダルロー Darlot 5.5inch f3 橋
ダルロー Darlot 5.5inch f3 遠景
 暗くなってきていますので、肉眼で確認してもあまりはっきりしていない景色なのですが、西日がまだもう少し残っていますので、それを拾って白膜を出しています。こういう撮影は本レンズの用途ではないので、参考になる画ではありません。ともかく散景はこういう感じです。

 まず本来の使い方としてポートレートでの用途を考えてみますが、天然光で人物の胸より上を撮ろうと思えば、白膜は出そうです。ここから焼きでどう持っていくかというところだろうと思います。もっとも、これはスタジオで使うべきレンズではありますが・・・。室内での霧膜型の使用は人物撮影には一番合うと思うので、良い雰囲気の画が得られるのではないかと思います。

 近接撮影は、マクロレンズを使う代わりに本レンズを使用することも可能だと思います。背景の状態がこれだけの望遠と一般的な広角から中望遠ぐらいまでのマクロでは違ってくると思うので、そこらへんの見方次第だろうと思います。遠景はこのレンズの用途ではないような気がします。しかし作画意図に適ったものであれば、使用できないことはありません。

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